みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

もっとも嬉しいお蔵出し:ノンバンド『NonBandin' Live』、『NON baNd+5Tracks』

さすがに「ロックバンド」というものに幻想がなくなってしまい同時代のものになかなか不感症(というか食わず嫌い)になってきて数年経つのですが、あらためて聴いて、そのオリジナリティの屹立が生々しく感じられるときが若干、あります。もちろんそれは自分の経験に合わせて数少ないものではありますけれど。

ノン・バンドのことになると、もうとても冷静には聴けないし、論理的なことは書けないのですが・・・。
82年リリースの唯一のオリジナルアルバムもついに同時復刻ですが、持ってないこちらだけ購入。
2枚組みでDisc1はソノシートで出ていたらしい最初期の編成でライブ音源。『Vibration Army』などパンク然として勢いが新鮮。
Disc2は82年のアルバムリリース後の仙台でのライブをまるごと収録。これもたたみかけるような勢いですが、ライナーによると実はこの時期すでにバンドの消滅が決定していたのだそう。
かなり以前にWAXからリイシューされたアルバムのボーナストラックとして収録されていた『Vibration Army』など数曲はこのライブからのものだった様子。『Dance song』などはアルバムの妖しい雰囲気ではなく明るくラテン風味になっているのが興味深いです。最終曲『インデプップ』はボーナストラックのものとは違う音源の様子。
今回、ライブ盤用に歌詞カードがついており、正しい歌詞をはじめて知ったものが多いです。聴き取りにくいところは自分なりに想像で埋めていたのですが、これでようやくかなりの霧が晴れました(笑)。
未発表曲の『Silent-high speed』などは、フリクションにも通じる東京ロッカーズ流の未来派風味。初期音源の当時らしいパンク然とした演奏から、Violinが加わりドラムが変わったことで独特のサウンドが出来上がっていった過程が想像できます。
やはりVo.Bass×Violin×Drという編成がノンバンドの完成形で、『あわのうた〜BAPPANG』や『Wild Child Can't Stand It』といった曲がやはり完成度が高い、かと。
編成ゆえに、和製ヴェルヴェッツとの認識もあるかも、ですがこのライブで聴けるような稚気あふれる「加速されたお囃子ビート」はかなりユニークかと。
当時としては、いきなりの解散でその後の大成が惜しまれるとされてきて、後追いながら僕もそう思ってきましたが、このライブを聴いて何かすっきりした。
それに、この後十数年の歳月が必要になったとはいえ、『いえ』という素晴らしい成果があるわけですし。

追記的にこちらも。
ボーナストラックを見てつい・・・。
これも、「ついに決定盤」という感慨が深い。

上の方で、「『あわのうた〜BAPPANG』や『Wild Child Can't Stand It』といった曲がやはり完成度が高い」と書いてしまいましたが、もうちょっと正確に書くと、『Duncan Dancin’』*1とか『Ghetto』、『あわのうた〜Bap Pang』といった曲はDisc1の初期音源には含まれていないので、「ノンバンド」の三人になってから作られた曲ではないか、とあくまで「個人的な憶測」で思うわけですが、こういった曲はこの編成での可能性を踏まえたうえで作られている「と思われる」ので、弾力のあるアンサンブルが曲の血肉にもなっているし、聴いていて想像力が刺激されてしょうがないです、と書くべきだったかと。

オリジナル25cmLP収録の01〜05は当然何度聴いても良いわけですが、06『Vibration Army』の完全に「ノンバンド」として脱臼アレンジされた仕上がりもとても興味深いものです。すでにライブ〆のスピードナンバーとしての印象が定着していたため収録されなかったのだろうか。


70年代から80年代初頭にかけて、ロックのパラダイムは激しく転換した、ということになっています。正直、何度も裏返った地層のまた底にあるようなこの転換点を、おそらく僕自身も含めて体験していない人間は想像するのも難しいのですが、その中で、もっとも実りのある答えを出したバンド、というのが「ノンバンド」に対する僕の評価なのでした。

以上、2枚ともに寄せられた地引雄一氏の冷静なライナーノーツが、逆に感無量でもあります。


↑唯一見つけた動画。『Silent−High−Speed』か。人力テクノパンク。


他のバラエティーに富んだ試行を聴きたければ、
とりあえずコレ↓を、と言いたい。

REBEL STREET(紙ジャケット仕様)

REBEL STREET(紙ジャケット仕様)

ヒゴヒロシのチャンス・オペレーションのひんやりユーモラスなダブ、アイデア一発のような趣が逆に怖いP−MODEL、突然段ボールの脱力諧謔、寄せ書きのようになった奇想がトータルで今聴いてもおもしろい空気。ノンバンドの『あわのうた』はしっかりとコンピの世界を広げている。この中の、町田町蔵『ボリス・ヴィアンの憤り』という曲を聴いて衝撃を受けた中学生の僕は、数年後の同じタイトルで妙なコラージュを作った、というのはまったくの余談でした。


*1:ノンバンドへのイントロとしてこれほど的確な曲はない。Duncanとは「イサドラ・ダンカン」の事らしいです、ライナーによると