ジョン・ゾーン
John Zorn - Book of Angels - Marciac 2012 (Full Show)
寝不足がかなりきていたのだけれど、晩飯のあと、約一時間のこの映像を見始めると、最後までまったく飽きがこなかった。
ジョン・ゾーンが最近どんなリリースをしているのかつぶさに追っているわけではないので、マサダの後に続いているこの「Book of Angels」シリーズが、天使の書といいながらアルバムタイトルが全部悪魔さんの名前であるとか、「Masada Book Two」という位置づけになっている事とか、最新作(20作目!)がパット・メセニー(!)によるゾーン作の演奏である事など、諸々今日初めて知った。
この映像は去年の夏のフランスでの、「Book of Angels」からの複数のユニットの演奏のようだが、最初のグループでのShanir Blumenkranzのsintirの演奏から引き込まれてしまった。
続くゾーンを加えたトリオで、ドラムとコントラバスに乗ってサックスを吹き始めたゾーンが自分の膝を使って絶妙なミュートをかましてくれる。あらためてゾーンのサックスの音色が、やはり得難いものだなと再確認。どういう風にかというと、自分にとってサックス奏者としてのゾーンは、オーネットの一番良質な部分を引き継いだ人だとひそかに思っている(んです)。この夏一番興奮したジョン・ブッチャーの凄さとはまた全然違うのだけれども。
トリオの呼吸をコントロールする絶妙さ。加えて、最後のフル・メンバーによる即興を組み立てて指揮していく姿の堂々たるもの。ゾーンの仕草に応えてそのミュージシャンがそのとき一番の音を即座に投げ返えす。優れた音楽家たちの快感の連鎖がそこにあるのだろうな、という気がしてくる。即興とアンサンブルが往来しながら、メンバーが実に楽しそうに指揮するゾーンを信頼しきって「音楽」を委ねている。
膨大で多岐にわたるディスコグラフィーをいちから追っていくのはもはや常人リスナーには不可能なのではなんじゃないかとも思うけれど、飛び石的に聴いている自分のような怠けリスナーの耳にも、不思議とゾーンはぶれていない。量が質と、ちゃんと共鳴している。レーベル「TZADIK」が存在し続けてくれていることで、いったいどれだけ多くの優れた音楽家を知ることができたろうか。
ジョン・ゾーンは、いろんな意味や角度から、今からはじめる後世で評価されていく音楽家だと思う。
そして、当然のように今年の夏も、凄い。
John Zorn - Zorn@60 / Warsaw Summer Jazz Days 2013 SONG PROJECT
いきなりマイク・パットン、マーク・リーボウ、ジョーイ・バロン従えて…かっこええ。最強の60歳やな。