みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

文化の日の過ごし方

nomrakenta2011-11-03


休日(文化の日)の木曜。
I佐さん宅にお呼ばれで、この日は夕方から、参加者それぞれが「思い入れのある音盤について語る会」(ちょっと主旨違うかも・・・)。
適当に選らぶ/選べるつもりで昼過ぎから積んであるCDを掘り返し・積んでは崩ししはじめる。これって結構重労働で、夏の暑いうちはやりたくないことのひとつ。

「ハイ・フィデリティ」というニック・ホーンビイの小説があって、これ読んでる人ならわかるはなしなのですが、主人公のレコード店主はプライベートに何かあると必ずレコード棚の整理をやり始める。小説の冒頭から彼女に振られて落ち込むところから始まる(映画版では13フロアーエレヴェイターズの「You Gonna Miss Me, Baby」で幕があくという笑うにわらえない演出)ので案の定、店員との会話でレコードの整理をしているという話しが出てくる。「ABC順?それともジャンル別?」みたいな。で、店員も上司の傷心はさておき、コレクションに興味が抑えられなくなって「手伝いにいこうか?」とか言ってしまうやりとりが描かれている。
どうしてそんなエピソードをここに書いたかというと、こういうやりとりにおもわずニヤッとしてしまう人種には、このレコード(CD)の整理というのはある程度時間が確保されていないと、決してやってはいけない作業であるということが書きたかったからで、この日も、やはり取り出す1枚1枚に手をとめてこれ最近聴いてないんで確保、とかコレに関連したアレはいったいどこへいったのか?とか、まてよ思い入れという意味ならあの7インチとか…というようにキリがなくなってしまった、ということが書きたいわけでした。

ハイ・フィデリティ (新潮文庫)

ハイ・フィデリティ (新潮文庫)


まるごと映画が一本観れてしまうのか…。しかし、こう書いてはなんですが、この映画はホーンビイ原作でのもっとも乙なシーン「買い取りにいったさきで、夫のコレクション(ゴッド・セイブ・ザ・クイーンの初回シングル等コレクター垂涎)を二束三文で主人公にたたき売ろうとする女に、コレクションの価値を諭す」を本編からカットしてしまったので、こういう扱いでも良いのであろう。

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本筋に戻りますと、「聴く会」はI佐さんS上さんと大学生のI井くん(はじめて会ったとき高校生だった/ソルマニアのライブで会った)と僕の4人で開催。お酒飲みながらワヤワヤと楽しい夜でした。S上さん持参の出たばかりのビーチボーイズ『Smile』には聴き惚れました。


家から持っていったのは以下のとおり。
Tom Waits --- Bad As Me

Bad As Me

Bad As Me

これは、前日にタワレコで購入したもの。全部聴いているわけではないけど「ボーンマシーン」くらいに戻った感じがいいのではないでしょう・・・か?

Power Station --- Power Station

Power Station

Power Station

生まれてはじめて自分で買ったCDとして、エイジアの「アストラ」を持っていこうと思ったが、いつ手放したのか見あたらなかった。ので、たぶん2枚目か3枚目にあたるこれを持っていった。バンド名が能天気すぎてアレですが…。


Public Image Limited --- Happy?

Happy

Happy

で、中学生の2年くらいにパンクロックに出会う。しかし、ジョニー・ロットンに接する前にジョン・ライドンに接してしまった。本作収録曲「Body」のあと、ピストルズのアルバム収録の「Bodies」を聴き、なんと堕胎ネタが好きな歌手かと思った。あと、このジャケ絵の似非フンデルトワッサーを中学の美術の模写をして教師とクラスメイトにドン引きされた楽しい思い出もあります。

Dinosaur Jr. --- Bug

Bug

Bug

世代的なものも混ぜておこうと思ってソニック・ユースではなしにこれを。「フリーク・シーン」と「Don't」だけかけてもらう。
最近クロスビートが出した『US Alternative Rock』というまんまな本のなかに2001年のJマスキスとサーストンの対談(というか放談)が採録されていたのを読んで、Jのハードコア好きに感銘を受けてしまいました(ブラックフラッグの80年代ライブ映像を観たばかりだっただけに)。この頃は雑誌は「クロスビート」か「ミュージックマガジン」だった。それでは満足できなくなって英『WIRE』誌に手を出すのはもう何年か後。

Latin Playboys --- Latin Playboys

Latin Playboys

Latin Playboys

ミシェル・フルームとチャド・ブレイクの時代というのが、ありましたよね、あれありませんでした?という話がしたくて持参した1枚。「Crayon Sun」だけかけてもらいました。

Robyn Hitchcock --- Moss Elixir

Moss Elixir

Moss Elixir

ロビン・ヒッチコックでは一番好きなアルバム。曲が粒ぞろいである点と、モリス・テッパーが怪しいギターを数曲で披露していることが、自分にとって大きいのです。

青山陽一 --- Blues For Tomato

ブルーズ・フォー・トマト

ブルーズ・フォー・トマト

一番以外なリアクションを頂いた青山陽一さんの新譜。この前の『ギター+オルガン+ドラム』の年の夏に、東京まで出張っていって、マンダラ2でサカナとのジョイントを観てファンになってしまった(浅くてすいませんですが)。S上さんはもっと詳しかった。グランドファーザーズは知っていたけどなあ。


Kanaga De Mopti :L'Orchestre Kanaga De Mopti

KANAGA DE MOPTI

KANAGA DE MOPTI

これも最初のトム・ウェイツと同様、主旨的には反則系で、前日にアマゾンから届いたCD。選盤しているあいだかけっぱなしにしていてとても楽しかった。マリの民族音楽スタジオミュージシャンが音をかぶせたレアグルーブ再発。5月のafuで、DJ・I田さんがかけていたので探していたのでした。音楽も良いが、ドゴンでマルセル・グリオールなジャケがたまらない。
Conversations With Ogotemmeli: An Introduction to Dogon Religious Ideas

Conversations With Ogotemmeli: An Introduction to Dogon Religious Ideas

Robert Ashley --- Automatic Writing

Automatic Writing

Automatic Writing

ある種の現代音楽が存在することが自分にとってはひどく切実な問題であるように思えますが、そういったものは、大抵「現代音楽であるから」大事なのではなくて、かけがえのない音を湛えているのがたまらなく愛しく感じてしまうからです。
Mom's

Mom's

カール・ストーンの『Mom's』は、そういう音楽のオールタイムベストでしたが、この日はなぜかCDが見当たらない。替わりというわけではないのだけれど、『Mag for Ears』の『あいまいな音楽』にもレビューを書いたロバート・アシュレイの『自動筆記』を。抑制されたアナログシンセの演奏に、不随意な独り言―トゥレット症候群的なつぶやきが、延々とのせられていくという「臨床的」と呼んでも良い作品。これを聴いたときの心の震えは、衝撃ではなくて、眠れない夜にやけくそでコーヒーを淹れて得られるような類の、沈潜する恍惚だった。これを人と一緒に聴くのは初めての体験で、ドキドキしてしまいました。

Steve Reich --- Diffent Trains / Electric Counterpoint

ライヒ/ディファレント・トレインズ

ライヒ/ディファレント・トレインズ

S上さんがスティーブ・ライヒの『テヒリーム』を持ってきておられたので、その直前にかけてもらいました。パット・メセニーがギターを弾く「Electirc Counterpoint」のほう。みんな好きだったことがわかって嬉しかった。ライヒもメセニーもクロノスも、このアルバムから聴きはじめたという人は割といるんじゃないかと思いますが、僕もそうでした。いつもこのアルバムに戻ってくる。「Different Trains」の過去から現在に向かって疾駆してくるようなスピードと映像感も捨てがたいものかと。



ここからは、持っていったけれど、皆で聴く時間がなかったCDたち。

Space Negros ---- Do Generic Ethnic Muzak Versio

Do Generic Ethnic Muzak Versio

Do Generic Ethnic Muzak Versio

今はなきミュージックストア「人類レコード」の思い出のために持参。このアルバムはネグロスがサイケ・ガレージパンクのクラシックを演奏したもの。ストゥージズの「We Will Fall」がひそかなアクセントである。

Filed Recording --- The Songs and Sounds of the Humpback Whale

これは自分が持っているCDとジャケ絵が違う。でもシリーズ名とタイトルは同じなのでたぶんコレだと思う。岩合光昭さんの写真集『クジラの海』なんかを買ってバブルネットフィーディングってかっこいいなあと感心していた頃に買って聴いたのだと思う。ポール・ウィンターみたいな演出は一切無く、ザトウクジラの「歌」や生態音をいっさい演出なしで録音した、ほとんど学術的な資料といっていいようなCD。「人間の音楽」以外のCDを聴いたのは多分これがはじめてで、このときのドキドキに比べると、今の物音系ノイズのミュージシャンの作品などに接するときの感じはまだまだ「人工的」なものだと言える。

Kurt Schwitters --- Ursonate

Ursonate

Ursonate

自分が多少商業音楽と異なったものでも抵抗がないほうなのだとしたら、上のクジラの歌と同様このCDの中の記録的な録音に因るものが多きいだろうとおもう。ハノーヴァー出身のダダイスト(メルツ芸術家)クルト・シュヴィッタースが自作の音声詩「原音ソナタ」を朗読したの録音。はじめて劇場で上演されたとき、観客の拒絶と嘲笑が次第に許容と喝采に変わっていったというエピソードが真実とわかるくらい、なんの伴奏も必要としないこのパフォーマンスは表情豊か。ブライアン・イーノがサンプリングして使っていたけれどなぜあんなにわかりづらくしてしまったのか不満だった。イーノが詩人とコラボした最近の作品はまだ聴いていません。

SAKANA ---- Le Rayon(光線)

光線

光線

『ロッキングチェアー』が収録されているアルバムです。それだけで聴き返す価値が自分のなかで消えない、そういうアルバム。1994年。