みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

PHILIP SAMARTZIS × HACO /w オオルタイチ × 半野田拓@中崎町コモンカフェ

nomrakenta2011-10-30

26日(水)
勤務先の部のセンターの歓送迎会。1年少しでC長がまた替わる。新C長が阪急神戸線にお住まいとのことで、この会社に勤務して初めて梅田で飲むことになったので私生活に会社が侵入してきたような妙な気分(いつもは難波)。
32番街の27階の飲み屋で会が終わったあと、同じセンターのSVおふたりと3人で飲みに行く(これも初めて)。ビール飲みたいねということだったのでキリンケラーヤマトに行こうとしたら谷町線地続きのところが閉まっていたので近くのバーに。終電近くまで飲む。
いろいろと本音の話しができてよかった。


27日(木)
会社からあがってライブまで時間があったので、昨夜のヤマトがどうなっていたのか確認。同じ地下の谷町線の通路を一番奥までいったところに移転したふうに書いてある(しかしあとでI佐さんにきくと以前からある店舗とのこと)。行ってみると、旭屋書店地下の店舗のカウンターはそのままにしてテーブル席を広くとったような店内で、時間も早めだったからカウンターには自分ひとり。黒ビールを2杯とカニサラダ、激辛ウインナーなどで時間をつぶす。

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毎回楽しみにしているコモンカフェでの「音波舎」さん主催ライブ。この日は、HACOさんとオーストラリアのサウンドアーティストフィリップ・サマーティスのデュオと、オオルタイチ× 半野田拓のデュオ。
オオルタイチさんは少し前に難波ベアーズでYTAMOさんとのデュオを観ていた(し、11月にはafuでトミ・リブレロと共演予定)、 半野田拓さんは久しぶりでした。ギターとサンプラー両方良かったが、今回はサンプラーの演奏により細やかさを感じた。
はじめて観るフィリップ・サマーティスさんがやはり一番おもしろく、フィールドレコーディングを主軸に世界各国を飛び回っているかたらしい。HACOさんとはフィリップ・サマーティスさんの「Insect Woman」という作品をきっかけに交流が生まれたとのこと。「Insect Woman」は、フィールドレコーディングした虫の鳴き声に女性のヴォイスで別のヴェクトルを与えるという作品で、これにHACOさんにヴォイス素材の提供を依頼したことがはじまりとのことだった。
1セットもこの「Insect Woman」のパフォーマンスでした。フィリップさんのラップトップ操作でまず虫の声環境音がスペースを満たしていって、十分に空間と時間に浸み入ってきたところでHACOさんの、吐息と発声の間にあるようなVoiceが入ってきてはじめ有機的なイメージで聴いていた虫の声がHACOさんVoiceによって、今度はコントラストがついて感じられ、地と図は絶え間なく反転しているようだった。
「Insect Woman」は、要素を決めたうえでの即興演奏だったけれど、2セット目は完全に即興のようでした。フィリップさんは、磁石でコンタクトマイクを、低いドローン音で唸っていた店の空調と冷蔵庫につけて音を拾ったり、コップの水にハイドロフォンを突っ込んでそれを揺さぶったりして作った音、それらを増幅しながら、ラップトップの音素材をリアルタイムでミックスしていった。HACOさんもVoiceとサンプラー類で手作りなエレクトロで二人の音が織りあげられていった。素晴らしい演奏。
最後はオオルタイチさん半野田さんも加えてのセッション。4人の音が適度に浸透しあってこれも良い塩梅。もっと長い時間聴いていたかったです。

「Magnetic Traces: A Survey of French and Australian Sound Art」(2009/Metamkine)
終演後、フィリップさんに「Insect Woman」はCDになっていませんか?とお尋ねしたところ、「全部じゃなくて5分だけのExcerptだけどこれに入ってるよ」と勧めてもらったコンピレーション。オーストラリアとフランスのサウンドアート作家を集めた2009年のイベントの記録みたいで、キュレーターはフィリップさんと、あのEric La Casa。帰宅後聴いてみると、どれも聴きごたえのある作品で隙がないのに下世話な圧迫感も皆無というサウンドアートの最高の部類にはいるコンピ(だとおもいます)。長く何度も聴くことになりそう。

これはYoutubeで拾ったフィリップさん映像。

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27日(金)
会社あがりにI佐さんと、新世界の田中屋に飲みに行くことに。魚の天婦羅をたべながらぬる燗、土瓶蒸し。勢いづいて梅田に戻ってキリンケラーヤマトのほんとの新店舗。スタッフ若い。黒ビール2杯。

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28日(土)
昼まで寝てしまった。『モールス』の下巻を買おうと思って、瀧道とは反対の方向の千里まで歩く。船場の丘に辿りついたあたりで、福知山から蕎麦の実を取り寄せていると看板に書いてある蕎麦屋さんにはじめて入る。50代後半らしい元気そうなオヤジさんと奥さんが二人できりまわしているカウンターにテーブル席が少し、という以前はバーだったんだろうなという店内。もう今は新蕎麦なんですか?とお尋ねすると、新蕎麦は11月にならないと入ってこないらしい。それでもお蕎麦の香りと食感はそのあとしばらく水しか口に入れたくなくなるほど心地よかったので、11月が楽しみ。

Clandestino

Clandestino

MUSIC FROM BIG PINK

MUSIC FROM BIG PINK

この二枚を交互に聴く。ロビー・ロバートソンがかつて1969年に発表された3枚の奇妙なアルバムとして、自分のThe Bandの『Music From Big Pink』とヴァン・モリソンの『アストラル・ウィーク』そしてドクター・ジョンの『グリ・グリ』を挙げていると知って納得する。今年この3枚の感覚にいくらかでも通じると思ったのはビス・マーキーの『ゴーイング・オフ』だった。
ゴーイン・オフ

ゴーイン・オフ

『Music From Big Pink』を自分はなんども聴いているはずなんだけれども、今回耳に残ってしまって何度もリピートしてしまったのは『Tear of Rage』でも『The Weight』でもなく、『Chest Fever』。ガース凄すぎるわ…。

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少し前に出た『フィルムメーカーズ』という本に、鈴木志郎康さんのインタビューが掲載されていたので読む。

フィルムメーカーズ―個人映画のつくり方

フィルムメーカーズ―個人映画のつくり方

1970年代はじめ、鈴木志郎康さんは『凶区』の同人として現代詩を発表していたと同時にNHKのカメラマンとしても働いていて、そのころ観たジョナス・メカスの『リトアニアの旅への追憶』は、個人の表現としての映画に取り組むきっかけになっていたようだ。そして、75年の白黒16ミリ作品『日没の印象』と撮ることにもつながったようだ。

すべて自分の家のなかで撮影、録音、編集まで出来るようにしました。映写機で上映しながら、マイクを持って磁気テープにナレーションを録音しています。映像は自分の日常生活を対象にして、ナレーションは自分の声で自分の考えを語るという、ぼくの個人映画の基本はこうして構築されました。マスメディアとは違った映像表現の領域を拓き、そこで個人と個人との触れ合いによって、互いに生きていることを共有するという考え方を実践しようとした。
――『フィルムメーカーズ』p.196