みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

秋の日のウドロウドロ:「1000人で音楽をする日。」ホセ・マセダを万博公園で。

nomrakenta2010-10-23


午前中に梅田にコンタクトレンズを買いに行って、最近眼がずーんと疲れるんですー、とかわいい看護士さんに泣きついて相談に乗ってもらい両眼2度落としたレンズでも支障がないことを確認して診察を待っている間にTwitteをみていると、なにやら万博公園で『1000人で音楽をする日。』というイベントをお昼から開催するみたいだ。
自由参加で見てるだけでも可らしい。
しかも「ホセ・マセダ」の曲、という文言も目に飛び込んできたのでこれは眺めるだけでもいってこよう、万博公園久し振りだし、と思ってモノレールに乗って行ってみた。

公園に入って、のどかな空気にすっかり武装解除されており、売店の焼きそばを缶ビールで喉に流しこんでいると、若い女の人がこちらに歩いてきて、お祭り広場でみんなで音楽をやるので一緒にやりませんか、とまさに「1000人で音楽をする日。」のチラシを渡してくれた。
「まさにそれを覗きにいこうかと」という言葉すら言えずに焼きそばに喉を詰まらせる振りをしてしまったのだけれど、少々義理を感じてしまい、やっぱり参加しとこうと思いなおして広場に足を向けた。
受付で署名をすると、「声」と「ミスクトサウンド」それから「ドローン(拍子木)」の3つパートを自由に選んでよいと言われた。しかし、竹の大きな筒と笛からなる「ミクストサウンド」はすでに渡し切っていたようで、拍子木の伐採した木片2本を選んでギャラリーで待機することに。ギャラリーにはすでに家族連れのひとたちをメインに結構な人が集まっていたけれど、1000人までには届かないなあという感じではあった。それでも、ほのぼのと現代音楽の演奏をしにひとびとが集まってめいめいが勝手に自分の「楽器」を試し鳴らししている場にいるのは、とても和む。
演奏開始まで1時間くらいかけて、ホセ・マセダの集団演奏曲「ウドロ・ウドロ(UDLOT-UDLOT)」のレクチャーと、予行演習があった。パート毎に分かれて練習、ということになって、拍子木で40分間三拍子を打ち続けることになることを知る。しかし、単調であるだけでなく、全体の音を一番良く聴けるパートでもある、とのこと。
あの『平安京音の宇宙 サウンドスケープへの旅』や『サウンドアートのトポス アートマネジメントの記録から』の著者でもある中川真が、ドローンパートのみんなに拍子木の鳴らしかたのコツを教えてくださる(これだけでも来てよかった感が)。それは真面目くさった顔で鳴らした音と顔の筋肉から力を抜き去ってポカーンとふ抜けた顔で鳴らした音を聴き比べてみよ、ということで、やってみたらみんな驚いていたけれど、明らかに弛緩した顔で鳴らした音のほうがよく「響く」のである。無駄な力がどれだけ入って、音霊を阻害しているか、ということの証左であるでしょう。とにかく40分、脱力でいくことに決定。


単調な繰り返しって大好物だし、こりゃ最適なパートを選んだわ、と思っていたんですが、本番はじまってみると、単純な3拍子をずっと同じペースで撃ち続けることの難しさを痛感。自分でもすぐに拍子が性急になっていくのがわかるし、大体ドローンパートのみんなも同じようで、どんどん拍子が早くなっていく。気付いたら自分のペースを守ってうちづづけてもいい、という指示もあったけれど、そこは難しい。やっぱり合わせなきゃと思ってしまうのがひとのさが。


ドローンパートが40分間3拍子を打ち続ける間に、ミクストサウンドと声のパートが、散発的に演奏を入れてくる、それが「演奏」のすべてなのだが、広いお祭り広場でやってると、なんだかのどかな空気が心地よい。
周囲をぐるぐる歩く自由がドローンパートにはあったので、いろんな場所で、音が違った響きかたをするのを楽しみつつ、自分の拍子を気にしていたら、あっという間に40分は過ぎてしまいました。
[http://www.ustream.tv/channel/%E4%BA%BA%E3%81%A7%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E6%97%A5:title=当日の「演奏」の様子はUstに上がっています。【中継】「1000人で音楽をする日。」 from 吹田万博記念公園 ]
ご覧のとおり(といっても40分以上ありますが)のどかな雰囲気でした。おつかれさまー!と終わったあとの帰り道、40分うち続けた3拍子が耳だけではなく身体に残ったままになっていて、千里中央に着いてからも身体の中で鳴り続けていたので、そのまま体内3拍子と一緒に箕面まで歩いて帰った。

家帰ってもらったパンフを広げてみると、『ウドロ・ウドロ』の総譜が!とてもこんな複雑なことはやりませんでしたが!!いや、しかし、これは毎年でも参加したいなー。もっと人数が集まって、ほんとに「烏合の衆」の波打つような音楽になればいいねー。

Drone & Melody

Drone & Melody

Ugnayan

Ugnayan

この2枚、貼り付けてみたけれど自分で持っているわけではありません。マセダは高橋悠治さんもCDがあるけれど、印象に残るほど聴いてこなかった作曲家でした。巨きな大きな音楽をつくったひとなのだ、ということだけはわかったから、これを機会にちゃんと聴いてみようと誓いをたてる。
全部Tzadik。やっぱりJohn Zornは凄い。
平安京 音の宇宙―サウンドスケープへの旅 (平凡社ライブラリー (508))

平安京 音の宇宙―サウンドスケープへの旅 (平凡社ライブラリー (508))

中川真さんの著作では、「小さな音楽」を提唱するRolf Juliusの展示/パフォーマンスの模様を克明に触れた本書が一番好きです。
Music for Ears

Music for Ears