みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

いやむしろ、だからこそ、食えないおっさんは素敵なのだ。Palestine, Misha & Stone

急に、今週の水曜、茨木の本社での集合研修にオブザーブで参加することが決定。内容を全く知らされていなかったので、オペレーターの手上げを捌きつつ、急ぎ資料を揃えて読み始める。今後の問い合わせの動向がかなり左右されそうなので気が抜けない予感。上司からは、要求がかなり集中するだろうから、墓穴を掘らないように(大意)との示唆。

From Etudes to Cataclysms

From Etudes to Cataclysms

ラ・モンテ・ヤングやテリー・ライリーと並ぶ位置にありつつ、「ミニマル」というだけで整理できないパルスを発振しつづけるシャルルマーニュ・パレスティンがSubRosaから出した2枚組。これは鍵盤を2つ有し(しかも片方は足で弾く!)特殊なピアノ「ドッピオ・ボルガード」の噂をききつけたパレスティンが、イタリアまですっ飛んでいって現地の教会で録音した「ブツ」です。
冒頭7分の「超高音」のパルス的打鍵など、はじめの数分可聴音域から外れているんではないの?と思わせるが…次第に、束になったパルスの波が、打ち寄せてくる、身体の中でアジサイの花がゆっくりと咲きはじめる…音のどんな「弾け」も「弾み」も逃さずに、パレスティンはゆったりしたうねりを、手繰り寄せてくる。
ジャケ内掲載の、日差しの入った室内でまどろむようなパレスティン愛蔵のヌイグルミたちの写真を見ていると(マイク・ケリーのヌイグルミに近い印象を受けるのは何故)、このようにシンプルかつ形容しがたい音楽を発しつづけるこの人は、やはり稀有であるのかと。
パレスティンの音楽のわかりやすい部分が表出しているし、これは代表作のひとつになりそうな気がする。
でも、代表作といえばやはりこれなんでしょうね。
Strumming Music

Strumming Music

大昔、この「Strumming Music」を手に入れたときは、よく真夜中の池田〜加西間を地道でドライブしていくときに(週末毎に、そんな狂った生活をしていたのです)、車の中で聴いていた。そのときはまだ、ラ・モンテ・ヤングも、トニー・コンラッドすらも聴いておらず、「ミニマル」といえば失礼な話、スティーブ・ライヒかフィリッピ・グラスのものでお茶を濁して(失礼だな)いたので、ああ…ほんとうにやっちゃった人がいるんだなあという感慨と、どことなくストイックな甘美さすら、その音のパルスがモアレしてくることに頭が心地よく麻痺していくのに嵌っていた。


今夜は、もう一人、おっさんである。
これは、ミシャ・メンゲルベルクの1996年のピアノ・トリオ(2作目)です。

ノー・アイディア

ノー・アイディア

ミシャといえば、エリック・ドルフィーの最期の音源「ラストデイト」に参画し、ICPを立ち上げてその後のヨーロッパ・フリー・ミュージックを牽引した、あのミシャさんである。
「なーんも考えてません」というタイトル曲がアルバム唯一のミシャによるオリジナルで、あとはコール・ポーター、ハービー・ニコルス、エリントン、クルト・ワイル、ガーシュウィンのカバーで固められていることに話題性があるのはわかる。ドルフィーと「ラストデイト」でやった「You Don't Know What Love Is」をやっているのもかなり意図的なものかもしれない。しかも、唯一のオリジナル曲が一番オーソドックな曲に聴こえるのもおもしろいし、それでこそ「なんも意図ないよ」とヒラリと逃げていく感じがなんとも食えないミシャさんなのかとも思う。「You Don't Know What Love Is」について言えば、「ラストデイト」のそれを聴くと、ドルフィーのフルートがふわーっと吹き上がってくる度になんだか心がすっからかんになって、僕はいつも泣きそうになってしまうのですが、ミシャさんのノーアイディアな「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」を聴いていると、これは何故だか「ユー・ドントコ・ノウ」なので、そんな困った感じはしない。むしろ困った感・やられた感は、手練れのミシャさんのほうを対象とするので、気が楽になるし、落ち着くのだと思う。セロニアス・モンクのようなタッチとも思えるけれど、もっとミシャさんは海綿体のようにくにゃっとしている、良く言えば、柔らかい。そして歯ごたえも実はコリッとある感じなので、いやむしろ、だからこそ、おふたりとも、素敵に食えないおっさんたちだなあと思う。
Last Date

Last Date

数年前、最期のFBIで観たカール・ストーンさんも、ふてぶてしくチャーミングで、しかも美しすぎる音楽をラップトップから紡ぎだしていたことを思い出します。

Mom's

Mom's


「ドッピオ・ボルガード」のサイトがあった!⇒みてくださいこの雄姿を。
パレスティンではないけれど、動画もあった。