みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

23年目に木をたたく:The Young Gods:『Knock on Wood - The Acoustic Session』

仕事のあと、昨年の夏の『ホープ県』からお会いしていなかったIさんと、梅田で待ち合わせて、『ムジカ・ジャポニカ』で夕食兼ねた呑み。ムジカにライブ以外でいくのは初めてだった。
年始のたたみこむような研修ラッシュで、資料読み込み×スピーチ疲れ(+ではなく、×としておきたい気分:但し、だるいのではなくてハイな方)の後、アタマ大丈夫か、と危惧していたのだけれど、久し振りにお会いするIさんと、濃ゆい音楽バナシに花が咲き、やはり愉しく、あっという間に帰りを気にしないといけない時間。けだし上々な気分で帰宅。
すると、アマゾンで取り寄せ待ちになっていたスイスのインダストリアル・バンドYoung Godsの結成23年目で初の「アコースティック・アルバム」である『Knocn on Wood - The Acoustic Session』が届いていた。

Knock on Wood

Knock on Wood

さっそくプレイヤーに呑みこませて聴いてみる。
昨年YouTubeで、彼らのモントリオール・ジャズでのアコースティック+オーケストラでの名曲『Skin Flowers』の映像を見つけて深い納得と音楽的感興を得ていたのとほぼ同時に、彼らが初の「アコースティック・アルバム」を準備している、というニュースをHPで知って、「ついに、出るべきものが出るのか」と独り静かに盛り上がってはいたのですが、リリースまでチェックはしていなかった。
期待を裏切らない出来であることは、予想はついていたけれど、やはり安堵と興奮が混じり合ってえらいことである。
要は、「アコースティック」でやる、という事に、現状最大限の意味を付与でき得るキャリアを持ったバンドが、満を持してリリースした作品なので、外す心配というよりは、批評的なことばが紡ぎ難いという事態に陥っています。昔、ポーティスヘッド(Portishead)がオーケストラと演った映像をリリースした時の音楽的歓びに通じるものがもちろんあるが、あのヤングゴッズの、結成23年を経て遂に、という記号性は、音の強靭さと柔軟性によって、最大限に担保されている。かねてから、いや、そもそもの始まりからヤングゴッズは、クルト・ワイルやプレスリー〜ジム・モリソン〜イギー・ポップイアン・カーティス〜ジム・フィータス〜マイケル・ジラ系列の変節対応性も含有した男くさくダンディーに爛れた「唄心」を核に据えて、それがスワンズのロリ・モシマンがプロデュースするような(たしかYoung godもSwansの曲名だったかと)インダストリアルでヘヴィーなサウンドの上でも十分機能する、ということを証明してきたバンドだった。それがアコースティックになって核に影響を与えるわけがなく、むしろ、音楽の突進性と歌は、より明確に、際立って、そして「若干」安心して対面できる包容力まで兼ね備えたものになっている。個人的に一番気になっていた『Skin Flowers』の出来(まえにオーケストラとの演奏を聴いていただけに)のほうも、ざっくりと潔い感じと滋味があい混じり合ったヘヴィーローテーション仕様で、アルバムのラストを締めくくっている。
しかもおまけに、スーサイドの『Ghost Rider』をやって存外ソフト・サイケ/人力ミニマル・テクノな逸品に仕上がっている、といった「のりしろ」まで。もちろん、アラン・ヴェガとヤングゴッズの「相性」など、良いに決まっているのである。いや、違う。NYとスイスに若干の位相のズレを持って生まれてしまった同じ現象といってしまっても良いでしょう(暴言)。と、書いた後でなんですが、このアルバムで、Young Godsに関しては「インダストリアル」って形容詞は、無用のものになりそうな予感は十二分。

このアルバムは何度も聴けるね。使い捨てなんかにはならないね。とりあえずそんな安心が嬉しい週末なわけで。

「爛れて侠気のある声が好きだ、男ですから。」

Skin Flowers

Skin Flowers

Suspicious Minds

Suspicious Minds

Strange Days

Strange Days

Cop / Greed / Holy Money

Cop / Greed / Holy Money

Suicide (First Album)

Suicide (First Album)

ガッシュ

ガッシュ

Angels of Light Sing Other People

Angels of Light Sing Other People

Touching from a Distance: Ian Curtis and Joy Division

Touching from a Distance: Ian Curtis and Joy Division

American Recordings (Reis)

American Recordings (Reis)

案外コレ↓なんかも、相乗効果が望めます。
Dust Sucker +7

Dust Sucker +7