みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ポメラ、購入。ジョー・ジャクソンの切っ先鈍らない『Look Sharp!』

nomrakenta2008-12-27


29日には、代休をもらったので、今日から既に年末休みに入らせていただいています。

一年のご褒美というわけでもないのですが、今日は、梅田まで出て、ヨドバシカメラで、キングジムのデジタル・メモ「ポメラ」を購入しました。このエントリーは初「ポメラ書き」です。

PC雑誌の記事で知ってコンセプトのシンプル具合に痺れて「欲しい!」と思ったら、時すでに遅く、どの電気屋さんでも売り切れていて(「急の出ちゃったんですよね〜」)、キングジムのHPをみると「全国的品薄のお詫び」が書いてあったので、これは年内には入手できないかと思っていたら、今日別の用事で行ってみて、どうせ駄目だろうなと思ってふらりと電子辞書売場を覗いてみたら、さすがヨドバシさん。かき集めてきたであろうものが、数点、しかも色は黒だけ、あったので即購入、でした。

機能を『「メモ帳」を携帯する』という目的にのみ絞り切っただけあって、使い心地はかなりいい。PC接続中はファイル編集できないとか、ファイル編集中はファイル名を変更できないとか、ちょっとした不便さにはすぐに気がつきますが、それを補って余りある携帯性だと思う(厚めの「ちくま文庫」くらいの重さ)。単4電池でのみ稼働というのも思い切ってる(と、書いてしまうほど、気持ちが加担してしまっています…)。
液晶も小さいのに見やすいし、キーボードは狭いスペースを折りたたみ形式で解決して、小ささからくるストレスをかなりの部分吸収していると思う。キーの「ストロークが浅い」という評価を読んだけれども、指に伝わるカクカクとした感触は、自分の身体回路的にはサクサク感につながるものなので、かなりストライクな好み。キーボードの感触が悪いと、「書く」気が萎える気分屋なので、このキーボードだけで懸念される問題の4分の3はクリアされていると思います。

今年は、職責が変わって、自分なりに変化のある年だったのですが、そのぶん、ブログの方は頻繁な更新ができなかったことが悔いといえば、悔い。電車の中で、本を読んだり、ぼっと同乗の人々の表情を眺めているとき、突然文章のモチーフというか、書き出しのフレーズというか、そんな始まりなのか蝶番なのか、その時はよくわかっていない言葉の断片が湧いてくる時がありますが、今まではノートパッドなんかに書き留めたりもしてきたけれど、PCに向き合って文字起こしとなると、それまでに注意が散逸してしまっているケースが結構ある。そんな、ただただどこでも書きたい、という思いを、ポメラはきちんとフォローしてくれそうに感じています。
来年は、とはいわず明日から、このポメラくんを連れまわして、あーだこーだ書いていきたい。

Look Sharp

Look Sharp

先述のキーボードの「サクサク感」に似た感触をもたらす音楽があるかと考えてみると、あった。
ジョージャクソンのパンク(パワーポップ)時代のファースト『Look Sharp!』。憂鬱な餓鬼の頃から一体何回聴いたかわからない、と書いてしまうと典型的なクリシェですが、ほんとうにそういうアルバムを、あなたは何枚知ってますか、持ってますか。
もう十何年も前、才能もないのに絵を描くという奇特な青春を選択していた頃、のらない気分を作業に向かわせてくれたのはこのアルバムで、作業中ずっとエンドレスでかけ続けてなお飽きず、たとえば名曲「Look Sharp」にいたるまでのA面の流れを数回聴いてやっと、B面曲へいき(LookSharpは繰り返し3回くらい聴き)、ラストの「Got theTime」も5回くらい続けて聴いて、作業のテンションを維持するというしつこい聴き方をしながら、今聴いても演奏のブレイクのたびにドキドキする。

冷静に考えてみると、このアルバムの後、ジャイブ、ジャズ、クラシックへと表現の幅を広げていく(拡げていくっていうよりも本来の自分に戻っていくっていう過程のように見えるのがおもしろい)ジョー・ジャクソンが、当時のシーンを席巻していた音楽的ど素人(というより先天的ノン・ミュージシャンたち)と比すならば、余りあった音楽的教養と修練を、馬鹿らしいとも思わずに、「今(当時)、伝わること」に焦点を絞り切って作り上げたデビュー作が本作だったわけですが。
どこかオールドタイムな残り香のする一発で覚えてしまうフレーズ満載、そして、何百回の聴取に耐えるフックの効いた演奏の鋭さ。「Sharp Music for a Dull World」という、リリース当時の惹句は控え目でもなんでもない。それは極私的にいって十数年の聴取が保証する公共的な真実である。

↑これは「I'm The Man」。「Look Sharp」の曲ではないけれど、これもいい曲。元気になるなあ…。
別に上のクリップでもいいんですけど、インチキくさい感じがうけつけない方には、91年のライブを。



またしてもここ30年くらいのポップミュージックの変遷がなかったようなチョイスをしてしまったので、ついでにこれも。「サクサク感」というわけではないけれど、最近懐かしい映像を見つけて、懐かしさ以上に、感慨深いものがあったのがローリー・アンダーソンの「オー・スーパーマン」でした。

今見ると幼稚にしかみえない部分もあるけれど、たとえば、か細いローリー・アンダーソンの腕が力瘤つくってみせる仕草の影絵の映像は、ユーモアに包むのを忘れない繊細さを含んだ「力(Mighty)」のすぐれた表現だと、自分でも意外に強く思いました(いってみれば、この曲での「スーパーマン」とはこの影絵でしか、ない)。この人がルー・リードと結婚したときは吃驚した(でもすぐ別れたんだっけ?)。
音楽もミニマル・ミュージック(チープなスティーブ・ライヒ?)と思って聴くとかなりおもしろい。現代美術作家とポップミュージックの聴衆がはじめて出会ったのがこの時代だったのかもしれない。