夕闇の瀧道に猿。そして、外山滋比古:『異本論』、タージ・マハール:『The Real Thing』
高気圧が飽きもせずくりかえし日本をとおり過ぎているらしく、10月も中旬というのに日中かなり暑いと感じたので、それが収まるまで本を読んでいよう、と居直った。
4時半くらいに陽が勢いを失くしたのでそのまま瀧道へと。
行楽客がいそいそと退散し始めているところを逆行して登っていくと、谷間はもう夕闇が深く降りてきていて、と同時に山奥の猿たちも、谷に沿って瀧道まで降りてきていた。
猿たちに構うのはいろんな意味でよくない。
猿をみたこともない子供が怯えて声をあげるのは仕方ないにしても、勘違いしてお菓子やバナナをあげては逆にまとわりつかれて災難だ。そういうことをする人に限って引き際がよくわかってはいないし、怯えが前面に出てむしろ猿の警戒を誘う。
とはいえ人の反応を見ているのは結構おもしろく、怯えるのと反対に興奮してちょっかいをだす子供もいて、それはそれで納得がいく。でも、やり過ぎると反撃にあうので、そこはどの程度が潮時なのか、これは親に言われたってわかることではあるまい。自分で恐怖を感じるところまでやってみるしかない。
帰り道は多分5時半だったがもうすでに闇といっていい下り道で、上のほうでは騒いでいる子供と猿たちの声が聴こえる。それにおびえまくった女の子3人くらいを連れた親御さんがもう登りたくないといわれて難儀していた。瀧の上の大日の駐車場に車を停めていたのであろう。これも納得がいくというか、子どもの怯えもよくわかる。瀧道には頼りない電灯が数十Mくらいの間隔であるのみ、だし、姿の見えない猿たちの奇声(別に怒ったり興奮しているわけではなくて、仲間同士呼び合うだけの普通の声だが)と子供(ガキ)の興奮した声が醸す雰囲気はどう考えても異様だったろう。
夕方だったが途中、走りも何回か入れたりしたので、結構を汗をかけた。
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昼間、読んでいた本は外山滋比古の『異本論』。
1978年にみすず書房から出た本で、ブックオフで買った外山滋比古の『思考の整理学』の文庫本を読んでいると自著の『異本論』に言及しているところがあって、興味がふいと湧いて『日本の古本屋』で探して取り寄せたもの。今探してみたらアマゾンにも数冊ある。asin:B000J8KUBM
古本屋で永らく死蔵されていたらしく、栞の跡がくっきりと数ページにわたってついていた。
内容は、ひとつの表現にひとつの解釈しか認めない原典主義的な読書文化に対する異議申し立て、ということで、ロラン・バルトの読者を主役に盛りたてたエクリチュール論までは振り切れてはいないのだけれど*1、それに幾分準じた姿勢で、原典が異本を経て古典に至ることや、翻訳や推敲など、読者側に偏ることなく、終わることのない編集作業としての「書物」論になっているし、コミュニケーション論にもなっている点が、古びていない点だと思う。
先ず、濁りない原典への純然たる理解や「作品をあるがままに読む」ことなど、ありえる筈もない、と何度もわかりやすい言葉で断言しているところが、好い。
およそ人間が表現を理解するのも異本をつくることである。他人の考えたものを自分の頭へ入れるのは移植であるが、必ずしもこちらのコンテクストに初めから調和するとは限らない。
〜(中略)〜
われわれは頭の中で自分だけの「雑誌」をこしらえている。そこにはいろいろなものが混然と収められている。その中へ新しい表現を入れることが理解であるが、たまたま隣り合わせになったものとの相性が悪ければ、わからない、おもしろくない、といった印象になる。
逆に、そのときの頭の「雑誌」に適合すると、本来はさほどではないものに、ほかの人はそうは考えないような意味を感じる。これは編集によって生じた臨時の意味である。それが公認されれれば定説となるが、臨時的である性格はすこしも変わらない。その意味で、われわれは意識しないで、つねに目に見えない編集に従事していることになる。
――外山滋比古『異本論』自然の編集
今話題の「フォーカス・リーディング」なども、ちらりと書店で斜め読みした限り、『異本論』が何度も繰り返して述べる見えない「雑誌」を「編集」している自分を維持することにある意味では立脚した論旨ではないのかと思う(コスト・パフォーマンス面を強調し過ぎだとも思うが)。
フォーカス・リーディング 「1冊10分」のスピードで、10倍の効果を出す いいとこどり読書術
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ブログはもちろん後者である。
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終日流しっぱなしにしていたのがこのアルバム。
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何がいいかというと、このライブの編成にチューバが3本も!あるのであって、低音好きには堪らないそのサウンドはというと、3本のチューバによる野太く、もうフカフカのお布団が部屋中床が見えないくらい敷き詰められたようなうえを、ベースはブンブン、ギターは軽々、ヴォーカルは意気揚揚自由自在なさまなのである。これほど聴くだけで与えられて良いのだろうか、という罪悪感すら感ずる楽園アルバムなのである。