ホープ県で扇風機の火花でチルアウト@梅田シャングリラ
ライブ日照りを解消しようといってHOPKEN presents 「ホープ県」という三日のイベントに行ってまいりました。といっても実際観にゆけたのは16と17のみ。
出演者の面子からいって「FBI」もしくはブリッジ勢を引き継いでいるような印象の16日が、僕にとってはメインな日でした。
▽16日(M=マンボカフェ)
1.和田シンジsolo
途中から入場。爆風のようなドラムソロ。しかし、最近音を圧殺するよな傾向にあんまり食指が動かないのですよね…。個人的な耳の好みは明らかに抑制の中のアナーキーさ、のようなものに向かっているのです。
2.足立智美solo (M)
2階の『マンボカフェ』でのパフォーマンス。カフェスペースの座席を取っ払って設えた空間で、ブリッジ的な空気がとても和む。
足立智美氏のCDは初めて聴いたのがTZADIKからリリースされたもので、「マサコ」だか「ミツコ」だか女性の名前を爆連呼しつつ変形を加えてしまう頓知の効いた音声詩パフォーマンスに、シュヴィッタースの正統を感じてしまい、ずっと生で観たい人の一人でしたが、ついに。冒頭の詩の朗読も面白くて、結構若い人が多くて「足立智美…誰?」みたいな空気を一瞬で引きつけていました。そのあとは、金属の音具+おもちゃ?にラップトップを使った音響で、増幅器なのか変調器なのかよくわからない小さな装置をそこかしこに装着した長袖シャツを身にまとって、自らの音声をムニュムニュと電気的変調をかけてみせる奇天烈なパフォーマンス…なのですが、どこか知的。子供にも受けていた。
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3.かきつばた
やさしさが緩やかに覚醒していくよな、一曲目から素晴らしかった。
4.OORUTAICHI×町田良夫×森山ふとし(M)
オーガニックな演奏が飛びぬけた印象でした。ほとんどの音楽の演奏は記号というかサインを放出持続するものだけれど、このトリオは、それ以前のもの(あるいは観客や場所の空気かもしれないが)を深く吸い込んで、静かに大きく吐く動作が、音になっているかのよう。町田良夫のスティールパンの音色に酔い痴れる。
5.Suspiria
人気があるのか、すごい盛り上がりだった。ボーカルはほとんど歌詞らしいものを歌わないが、凄いパフォーマンス。ブラジルの稲田誠氏がベースを搔き毟っていた。
6.Won Jiksoo×BUN666×植野隆司×酋長 (M)
うーん。この即興だけはいただけませんでした。どうもみなさんのノリがよくないように感じてしまって。事前の打ち合わせがないのはない、でいいのだけど。不完全燃焼のWon Jiksoo氏はあんまし観たくないっす。
7.倉地久美夫×ふちがみとふなと(写真・上)
この日の個人的ハイライトでした。去年恐れ多くも初めてその歌に接した倉地久美夫氏と「ふちふな」の合体です。渕上さんのほうが倉地氏より先輩なのか、MCでの「倉地くん。曲順リストを、忘れてきたんだね…」など、音楽とは対照的に息の合っているんだかなんだかよくわかんない間がおもしろい。
一曲目から、僕の好きな「ヘヴン」(名盤「HappySet」に収録)。サビでコーラスに入る倉地氏の声。渕上さんの声と相性最高ではないですか!この「ヘブン」以降、両者の素材を交互に演奏しつつ、それぞれのフォーマットに倉地調あるいは「ふちふな」超が差し込まれて、(違いはそのままに無理やり縫合しようとはしないのが、いい。大人である)それぞれの歌の時間を伸縮させてました。控え目なギターも良し。最後に外山明氏もゲスト参加。すべてを繋ぐのは、やはり船戸氏のコントラバス。
ここでお世話になっているIさんにお会いできました。また美味いビールを呑みましょうね(年内に是非)。
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8.POPO (M)
日本が誇るチャンバー・スカ・ユニット(なにかのフライヤーから頂きました、成程なあと思って)。観る都度、飽きさせないこの三人の丁寧な演奏が好きなのです。
9.Optrum×gulpEpsh
観ズ。マンボでチルアウトしていました(次の内橋和久×半野田拓待ちで)。
10.内橋和久×半野田拓(M)
個人的に昨年からファンなのが、レフティの日本のマーク・リボー(と勝手に呼ばせてもらっている)半野田拓氏。内橋和久御大との当意即妙なギターでの会話。
11.中林キララ×ナスノミツル×山本達久×小島剛
観ズ。このあたり順番が怪しいです。
12.千野秀一×Won Jiksoo×足立智美
今度は浴衣姿で全開のWon Jiksoo氏。自在のボイスパフォーマンスが、千野氏のピアノと足立氏の電気変調長袖シャツの挟間で炸裂していました。
13.オシリペンペンズ
観ズ。
14.梅田哲也 (M)(写真・中段)
この人の音楽パフォーマンスも、機会があればぜひ観てほしいものです。といっても、ここ数年かなり多忙な様子なので、観る機会はアンテナを張っていれば必ずある筈。
今回は、ショートするモーター音と扇風機や風船を使ったパフォーマンス。まず、この人の場合は存在自体が現代美術なので、道具(楽器)のセッティングをしている様子からして興味深い。道具(楽器)も深読みのし過ぎなのでしょうが、繊細な表情を持っていて、それは例えばジャン・ティンゲリーの自壊する機械よりも、今村 源の作品に近い表情を持っている一定の間隔で電線がショートする音と光が、マンボカフェの空間まるごとを柔らかく包み込んで「作品」として提案してみせていた。こちらのほうがなんぼも「アンビエント」だと思うんですよ、僕は。
後半、マンボが定員オーバー状態になってきて、前の客数人はステージに上がり込むように勧められてノコノコあがって座り込んで鑑賞。目の前での扇風機がゆっくり旋回しはじめて、それが加工してわざと扇風機の羽がステンレスの「骨」当たるようになっていることに気付いた。驚いたことに羽と骨が接触して火花が散っているのである。とても可愛くミクロな線香花火のような火花で、時間を忘れて魅入ってしまっているうちに、パフォーマンス終了。
ところで、『ホープ県』のHOPKENの出所はやはりカール・ストーンの曲とのこと。「FBI」の精神を引き継いで、是非次回はカース・ストーン氏自身の招聘を!
▽17日
は、neco眠るのアルバムリリースパーティーだったのですが、最後までおれなかったし、不完全燃焼で帰りました。
アウトドアホームレスという大所帯バンドも初めて観ましたが、最初「うへえ」と思ったけど、徹頭徹尾「AHO」という崇高な形容しか相応しくないパフォーマンスに、最後はスカッとして楽しくなっていた。新世界から「世界」への返答(…?)。
ただ、一番の発見は、マンボカフェでの最初のパフォーマンスで「PARARIRA」という二人組(写真・下)で、ドラムデュオだったんですが、これが凄い演奏だった。延々とポリリズム寸前とポリリズムの中間状態でヒートアップするというよりも、妙に抜けのあるミニマルなループ状態になっていて、連打状態なのに、聴いていて静かな気分で張り詰めていくような感覚でした。まわりのお客の反応も最後凄かったと思う。
やはり、良かったのが、「町田良夫×元山ツトム×山本達久」のトリオ。インプロの出だしをジャンケンで決めるような砕けた雰囲気でしたが、鳴る音は極上のチルアウト・インプロヴィゼーション。ブリッジで数度、山本達久氏のドラム・パーカッション演奏を観たと思いますが、今回一番良かった。
オーロラ(川端稔,稲田誠)×半野田拓も良かった。川端稔氏の歌は、特濃なニッポンの香りなんですが、それがフリーなスウィングの中でじんわりとしみ込んできた。こんな音楽聴いたことないなあ…。
またもや音楽に元気付けられたお盆でした。