みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ルー・ハリソンの『IN RETROSPEST』

nomrakenta2007-06-16


9時に起きてしまったので、瀧道を登るともう日差しが強い。帽子を買わねば、と思っていたのを忘れていた。
大瀧の前の売店が軒を連ねはじめるあたりから、上のドライブウェーへ、大日の駐車場の方へ4回ほど折り返しながら登っていく坂道の脇には、高い木立の陰に護られた羊歯の群生があって、4月くらいには瑞々しいエメラルドグリーンになってピンと伸びて大きな掌をいっせいにかざす様な風に道に向かって伸びていたんですが、最近はどうも張りがなく、色も瑞々しさがなくなって陽に灼けてきたみたいだ。
(写真はもちろん羊歯ではありません。瀧道にはデジカメはおろか携帯さえ持っていきません。iPodを首からさげてるだけ。)

汗が吹き出るのを感じながら帰ってシャワー。
炊飯器を開けると3人分はありそうだし、昨日の残りの豚の生姜焼きが残っていたので、フライパンから生姜焼きを移して細切れにする。フライパンに残った油で卵焼きを焼いてまたばらばらに崩してご飯を炒め、生姜焼き投入。中華ペーストとネギをいれて、焼き飯というのかジャンク飯を作る。味はふつう。ふつうですよ。


ここ数年、心斎橋アメリカ村タワーレコードの現代音楽コーナーがなくなってからというもの、梅田・難波のタワーレコードで現代音楽の新作CDの入荷にとてもばらつきがあって、手に入らないものが多くなってきた。MODEは結構入るほうだがNEWWORLDなんかは入らないみたいだ。
これもそうだった。回転率の低い商品には当然店頭スペースを避けないだろうから、こちらはネットで買う(今回はForced Exposure)わけですが、本当は店頭でジャケットなんかを眺め、情報を読みながら、トータルの「気配」みたいなものを感じたものを買いたいのだ(で、失敗することもあるわけですが)。

In Retrospect

In Retrospect

今回はフルートが大活躍。ギター作品集も好きだったが、これもいいです。
おなじみWilliam Wynantの訥々として凛としたパーカッションの上をフルートが澄み切った音色で踊っている。ルー・ハリソン弱冠21〜3歳(1935年!)で作曲の『Firtst Concerto For Flute&Percussion』が既にこれか。当時大学を2年でやめてヘンリー・カウエルのもとで勉強しながらモダンダンスのために作曲し、ミルズカレッジのダンス学科のために伴奏をしていたとのこと。
『Strict Song』も合唱の大きな呼吸を器楽部分がまた引き取り、うねりを返してまた寄せる。そんな波が気持ちよい。第一楽章「Here is Holiness」でメロディアスに鳴らされるのは木琴なのか鉄琴なのか?ハリソンだけにガムランのような持続性を一瞬感じさせるけれど、楽曲全体の構成の中で、たとえば腕の肉の奥の筋肉のような一部として聴こえてくる。
かなり昔、ハリソンのギター作品集が出たとき、なにかの雑誌んぽレビューで柿沼敏江さんだったと思うが、ケージの伴送者でありながら、ときとして取り付くしまのない風貌の作品を書くケージと異なり、ハリソンにはいつも洋の東西を問わず、豊富な旋律があった。旋律と調性、パーカッションそれらを分解して環太平洋的なイメージの中で再構成したのがルー・ハリソンだった、というような文章を読んでから、ハリソンを聞き始めたのだった。
「Ariadone」は古代風な旋律をフルートが歌う。
「Solstice」は、ダンスのために作曲された曲のようで、フルート、オーボエ、トランペットに、チェロ2、ストリングベース、セレスタとタック・ピアノが入る。タック・ピアノというのは、通常のピアノのハンマーフェルトに鋲を差込んでより金属的でパーカッシブな音が出るようにしたもので、一種のプリペアド・ピアノである様子(グレン・グールドも使用したことあるみたいです)。ハリソンはこのタック・ピアノをハープシコードの代用としても用いた、とのこと。スピード感のある楽章もあって、ガムランの響きを大切にしながら、フルートもよく歌っている、複雑な構成なのに透明感がある曲。