AMM of PUNKROCK:The Dead C 『Future Artists』
そういえば、この人たちもニュージーランド。

- アーティスト: Dead C
- 出版社/メーカー: Ba Da Bing
- 発売日: 2007/05/29
- メディア: CD
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The Dead Cは、1987年にニュージーランドで結成されたBruce RussellとMichael Morleyのギタリスト二人とドラマーRobbie Yeatsのトリオ。
一曲目のタイトルがふるってます。
「AMM of Punk Rock」。
そのまんま。これは本気だなあ、それとも自嘲か?ともかく気合の気配は感じる。→AMMhttp://www.efi.group.shef.ac.uk/mamm.html
それこそAMMライクな接触不良的ドローン即興が続きますが、一応ロック的なカタルシスを経て終了。続く2曲目「Magicians」は、あっさり3分で終わりますが、唯一「うた」付き。これがまた、ささくれだってうな垂れている様が壮絶で、唯一無二な感じ。後の 3. Macoute 、4. Eternity 、5. Garage は、それぞれ10分〜20分の長尺のトラック。円熟・妥協一切なしのDead Cサウンド。
4年ぶりの新作とのことですが、一つ前の「Damned」はなんか辛気臭そうで手にとらず、2枚組ベスト『Vain Erudite and Stupid: Selected Works 1987-2005』の方を聴いていました。

Vain Erudite & Stupid: Selected Works 1987-2005
- アーティスト: Dead C
- 出版社/メーカー: Ba Da Bing
- 発売日: 2006/08/01
- メディア: CD
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アヴァンロックの系統樹でいえば、多分「Sonic Death」〜「EVOL」あたりのソニック・ユースから派生するのだろうことは、音だけでなく、初期の自主カセットレーベル名が「Expressway」(SYの名曲「Expressway to yr Skull」から採った)だったことからも想定できますが、ハードコアな意味では、いつの間にか主客が転倒、逆にSYから熱いリスペクトを送られてしまう。
90年代はじめのツアーでは、DeadCを前座に起用にしたSYのリー・ラナルドが興奮して一曲目が終わるなり、SYの演奏そっちのけで聴衆にこう問いかけたそう。
「Dead Cはどうだった?すごいやつらだったろ?すごい音だよな!」
はじめてDead Cのアルバムを聴いたのも確かこの頃で、『DR503c』と『Tusk』を同時にフォーエヴァーレコードで買って聴いたと思う。『DR503c』は彼らのファーストカセットをCD化したもので、「MaxHarris」のささくれだった不機嫌な音像には正直びびった。不穏なだけのノイズなら一杯あったが、Dead Cの場合は、その裏にサーストンムーアに通じる「うたごころ」の破片のようなものがあった。『Tusk』はギターノイズがかなり完成された出来だったかと。有名な『Harsh 70’s Reality』は手に入らなかった。
The Dead Cの場合、「ノイズミュージック」ではなくてあくまで「ノイズロック」なんだと思う。シスターレイの系譜ということが、思いのほか重要な点ではないかと。それはこの「スカイ」という曲のパフォーマンスを音楽番組で演奏したYOUTUBE画像でもよくわかる(リンク切れの場合はご容赦ください)。
http://www.youtube.com/watch?v=lbyYzyUPGs8
7分のクリップですが、演奏自体は前半4分くらい。
後半はインタビューで、なんかスーサイドのレアトラック集について話をして終わっている・・・が、演奏そのものはぶっちぎりです。Bruce Russellはギターをアンプの上に置いてスティックで乱打。観念的なところなど微塵もない。
彼らの音源がいつもロウファイな音なのは、スピーカーの軋みやハウリングがこだまする、音の発生現場の雰囲気をできるだけ正確に伝えたいからだろう。
スタイルやハイブリッドな処世術からではなく、あくまで「音」で語れるロックがなんと少ないことか。好き嫌いを度外視してみれば、すでに商品化されるだけならまだしも、減数分裂の様相も甚だしい「ロックの初期衝動」というものが、もしまだあるのだとしたら、The Dead Cこそ、その中核に居座り続けるバンドなのかも。
少なくともその限りにおいて『Future Artists』は、シニシズムではない。