艶あり湯加減ブルース:長見順『クーチークー』
もちろん、ちょっと前に出てたんですが、今日二回目のリスニング。
- アーティスト: マダム・ギター長見順
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あそこに込められていた音楽の入念な諧謔とそれを抱擁してしまうおおらかさの総量は、逆にいえばブルース系のアーティストが日本の音楽産業の中でインパクトを持つことに要する賭金の高さを表しているように思えたりもした。あのアルバムで長見順を知った僕のような者なら誰もがその次のアルバムの焦点をどうするのかと心配した、というよりは想像すらしなかったんじゃないだろうか。顰蹙覚悟で書けば、『超スローブルース』は、それくらい「この一枚でオーケー」といわれかねない危険すらあるアルバムだったのだと思うし、どうしてもあの作品が必要でもあったのだ。
で、本作『クーチークー』。
『超スローブルース』のいってみればトリッキーなキャッチーさから上手くライブの雰囲気(といっても前作のツアー時の梅田レインドックスのライブしか観ていませんが)にスライドして、「本来」といっていいのかわかりませんが、これは、マダムギター長見順の音楽が、今度は仕掛け抜きで楽しめる出来。『超スローブルース』的な白昼夢のようなシュール風味の曲もあるが、シアトリカルな聴かせ方よりも、演奏のうねりを優先させているように思える。
実は前半はなかなかピントが合わなかったのだけれど(バランスもあんまりいいようには思えなかった)、8曲目の、大銭湯をライブハウスにして演奏されているかのような『真昼の平日の衝撃的巨大クアハウス』あたりから、音楽が急速に身体に馴染んできた。(4曲目『小指のオモヒデ』などは、ローザ・ルクセンブルグ時代のどんとの世界を感じたりもするんですが・・・当然マダムギター節。)
次第にライブ体験時の記憶が蘇ってきて、順さんの「唄」(歌よりも唄だよなあ)もギターのカッティングもくだけた湯加減で、最後の夫婦デュオの掛け合いには思わず顔がゆるむ。
参加している梅津和時、仙波清彦、片山広明、なんていう名前をちらつかせなくとも、ローランド・カークのカーニバル具合が芯からブルースだという意味で、壊れたおもちゃのような艶もありつつ、貪欲当然で柔軟上等、下品が上品なブルースの世界を味わえる。これは呆れて聴くしかない、かと。
また、大阪来てくれるのかなあ・・・。
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ところで、この4月11日。
カート・ヴォネガットが死去したとのこと。享年84歳。ロイターの記事http://www.reuters.com/article/newsOne/idUSN1126991620070412
次にまとめて書くつもりですが、今日知ったので触れないのも不誠実に思えたので書いておきます。