みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

アルジェリアのラジオのように:アラン・ビショップのコラージュ&ミックス『Radio Algeria』

鈴木志郎康さんに送っていただいた映像作品DVDの中に、詩人・伊藤比呂美さん(現住カリフォルニア)の姿をとらえた「比呂美-毛を抜く話」があった。名前は知っていたが、不勉強なので子育て等のエッセイストとしてしか認知していなかった(←これは滅茶苦茶失礼です)ので、観る前の予備知識として色々ネットで調べたり図書館を覗いたりして本を数冊借りることができました。

家に帰ると京都の「メディテーションズ」から注文していたCDが届いていた。
これはその中の一枚。

Radio Algeria

Radio Algeria

アラン・ビショップという人が、2005年から2006年にかけて、アルジェリアの多文化にわたる音楽をコラージュしまくったCDで、その雑多さに目が(イヤ、耳が)くらむほどの音楽文化絵巻になっています。レーベルのSublime Frequenciesは、各国の「ラジオ」シリーズを制作していて、その中の一枚である様子。
アルジェリア、もちろん行ったことない。たしか、カミュの『異邦人』の舞台だったかと。
アッサンブラージュされている音楽ジャンルを、ライナーの列記から引用しますと、ベルベル民族音楽から始まり、モダーン・アラビック・ポップ、伝統的イスラム宗教音楽、アンダルシア音楽、ライ・ミュージックのオリジナルである「Guesba」、初期のライ、「Khabyle」「Tuareg」「Saharaui」(このあたりになると、日本の音楽雑誌でみたことのある単語なのかどうかもわからない)、ヨーロッパ音楽やサハラ以北のアフリカ音楽に影響されたミクスチャー音楽などなど・・・
アルジェリアでの音楽生活をコラージュ&ミックス手法による架空の「ラジオ・アルジェリア」によって体験できるという趣向。
こういった趣向の場合、編集者が平凡な異文化憧憬の中にあると、聴く者の側においては無難で印象に残らないものに終わるケースが多いと思っていますが、これは編集者の意識を「方法」自体に同化して消し去ることに、割と成功していて、「素朴な憧れ」は、聴く者の方にちゃんと残しておいてくれているのがミソ。
素直に耳が入り込むは、現在の音楽状態が、そもそもダブやサンプリングされた感覚が基底材になっているので、手法自体にはまったく違和感がないからなのかもしれない。
雑多な音楽の混淆が、「異物感」もそのままにザワザワと伝わってくる様には、ちょっと陶酔感があります。と、同時に非現実的なまどろみの中にいるような錯覚も。
科学と詩の哲学者ガストンバシュラールの『夢想とラジオ』(「夢みる権利 (ちくま学芸文庫)」に所収)というエッセイの感触を想い出したりしてしまった。