みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

リュック・フェラーリ・フェスティバル 世界のざわめき 音の記憶 2

nomrakenta2006-07-23


写真は演奏準備をするDowserのお二人です。

3日目です。本日のメインはなんといってもDowserのミニライブ。
二回目上映はダブルものがあったので、今日は一回目上映とミニライブのみ観て退散しました。

■「大いなるリハーサル パリのセシル・テイラー
 「大いなるリハーサル」唯一のカラー作品。「コンキスタドール」当時のメンバー(セシル・テイラー(p)、アラン・シルバ(b)、ジミー・ライオンズ(Sax)、アンドリュー・シリル(Dr)、によるパリでのリハーサルとテイラーへのインタヴューです。
のっけから、「シュトックハウゼン、バッハ、ジョン・ケージ、みんな俺のコミュニティには属していない。俺の音楽はNYの『線路の向う』で生まれるもんだ」という意味のことを言って、クールに切って捨て、自分の音楽のアイデンティティは黒人コミュニティにある点を宣言してました。60年代も後半に向かう時期、ジャズを革新し続けてきたセシル・テイラーとしては当然すぎる立場であったのでしょう。広々としたアパルトメントを自由に使ってのリハーサルは、本当に興奮するものでした。一応楽譜もありますが、テイラーの弾くフレーズに各々が次第に応えていくところは、まさに音楽の生成現場を見ている気分でした。おもむろにテイラーが、ピアノの内部奏法や、弦の上に金属製の灰皿に木材のようなものを置き初めて即興的なプレパレーションをやりだす局面もあって、それがまた効果的に演奏に組み込まれていきます。テイラーの鍵盤の乱打はそれこそ神がかっていて、トランス状態です。音源のみでしか接してきていなかった一人のクリエイティブなジャズのオリジナルの姿は強烈でした。インプロヴィゼーション躁状態が過ぎ去ったあと、一瞬静まり返った美しいフレーズを弾いて演奏は終了し、本編も終わるのですが、この時のテイラーの表情には皆さん感銘を受けたのではないでしょうか。

コンキスタドール

コンキスタドール

Unit Structures

Unit Structures

■「大いなるリハーサル シュトックハウゼンの『モメンテ(瞬間)』」
昨日も観た作品でしたが、今回も興味深く観ることができました。ここでの「モメンテ」は、楽器のみならず、拍手や笑い声、マイクを通してのうなり声などの具体音が乱舞するのですが、シュットックハウゼンのカリスマめいた指揮により、それはまったくスコアどおり完璧に統制されていくのが見所(聴きどころ)です。特に、ゴングの裏で叫び声をあげているのが、特殊な反響を狙ってのことでしょうが、何度みても笑いそうになってしまいました。
ちょっと思ったのは、仮に音楽自体がどうであれ、そしてそれが、シュトックハウゼンという破格な才能だとしても、テレビ番組という枠で、作曲家は視聴者に、まっすぐ向かい合って、何の妥協もなしに、自分のアイディア、芸術を語り、実践しているという、この時代がとても豊饒に思えて、うらやましく思えてしまいました。


Dowser ミニライブ
Dowser(長嶌寛幸+寺井昌輝)によるヴィンテージ・シンセ(ブックラとEMS)の生演奏で、実際ヴィンテージシンセの演奏を聴くのは初めてだったので、これもすごい経験でした。
30分くらいの即興演奏でしたが、開始後一分くらいの、音量はあるのに、とても「遠い」感じの音が素晴らしいと思いました。多分ブックラから出ていたと思います。その後は時折ハーシュノイズのような音響も飛び出しつつ、終盤にかかり、巨大な心臓の鼓動のような反復する低音をEMSが出し始めたとき、「あ、きたきた」という感じになってきて、今まで無秩序に鳴っていたような2台が大きな放物線を描いて演奏をコーダの持っていこうとしているのが感じられました。そのうねりはフリージャズの演奏を聴いたときにも感じるものと似ていました。スペーシーな過ぎ去った未来的音空間が、実は新鮮なんだよ、という驚きに満ちた時間だったと思います。


それにしても大充実な二日間でした。船場アートカフェさんとイベント関係者様、本当にありがとうございました!