みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

トイ・ピアノの芸術

ちょっと前に買ってたんですが、一気に聴くのがもったいなくて延び延びになっていました。
おもちゃピアノで*1ビートルズからサティ、グラス、ベートーヴェン、ガイ・クルセヴェクまでを弾き倒してます*2が、現代音楽を弾かせたら誰も文句がいえないレン・タンにかかると、「トイ・ピアノで弾いてみたら案外イケました」で終わる筈もないことは、やはり保証済みのことでしょう。
トイ・ピアノの音は、サステインがあんまりなくて、打楽器みたい、つまりガムランぽいともいえるような音がして、その少し調子はずれで、確かにケージのピアノ曲の世界にはマッチしそうな印象はあったんですが、この全編トイ・ピアノのアルバムで、演奏者が違えば、相当独特の響きの楽器へと変貌することがわかります。
ライナーでレン・タンは、トイ・ピアノの音を「眠気を誘うような魅力」「小さく、つつましやか」と表現していますが、ここでの音世界は、ただ単に、かわいらしいという言葉でコーティングできるものではなく、一音一音は確かに壊れてしまいそうな音なんですが、かなりハードにドライブする部分もあったりで、豊穣な世界をつくりあげて、キラキラとした音のシャワーとなって降りそそいでいます。
特に、デヴィッド・ラング、ジュリア・ウォルフのBang On A Can組の曲での響きは面白くて、ラングの「魔法の耳」は、逆に、ピン、ピキン、といった打楽器的な特徴の中心にいこうとしているし、ウォルフの「イースト・ブロードウェイ」では、本当に何の音か不明なノイジーな異音にトイピアノが並走するほとんどテクノのような様相。
最後の「ジムノペディ」はお約束的ですね。

*1:とはいえ、レン・タン特注のトイ・『グランド』・ピアノらしいですが

*2:意外にケージは避けてます