みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ニューヨーク・ジャンクというジャンルがあった頃

フィリップ・グラスメレディス・モンク、スティーブ・ライヒだけでなく、ゴードン・ムンマやポーリン・オリヴィロスの1979年当時のライブも収めた第一弾の次はライヒの77年のライブだったが、今度のフロム・ザ・キッチン・アーカイブは、当然1981-1986年、アヴァンギャルドな音楽と異種交配したNYアングラロックの恐竜たちの音源。憧れてやまなかった時代の音だけに、ほんとに弱いです。
ソニック・ユースは、「Confusion is Sex」当時のハードコアな演奏。メンバーも流動的で、「World Looks Red」には、マイケル・ジラも参加してるじゃないですか。声も嗄れよとがなるサーストンなんて、今は想像できません。
プリミティヴなスワンズは、このシーンを代表する音。この時代の凶悪さがあるから、今のYoung God Recordの「歌」が映えるのでもある。
ビルズ・フレンズというバンドは初めて知りましたが、アーサー・ラッセルがチェロで参加している。
ここ数年再評価著しいアーサー・ラッセルは、恥ずかしながらはじめて接する音源なんですが、ほんとにライブなの?ていうほど整った演奏で(と思ってクレジットみたら、やっぱりキッチンでのライブではなくてアンリリースドな音源みたいです)、6曲目「Hiding Your Present From You」もいいけど、長尺の7曲目「All Boy All Girl」は、声自体がジェンダーを無効にする存在感のジェントルでミニマルな音楽。
クリスチャン・マークレイは、ターンテーブルを駆使したカットアップで、ノイズの洪水ようで映像的な音像を作り出してます。
ライス・チャタムのギタートリオには、ソニック・ユースも目指していたが(ロックバンドとしての自覚ゆえに)そこから逸れてしまった、純粋なスピードの感覚があります。
最後のエリオット・シャープのバンドによる10分に及ぶ即興は、インテリが集団発狂しているかのような強烈なもの。
今回のタイトルは「アンプリファイド:ニューミュージック・ミーツ・ロック」。
キッチンというシーンがロックを取り込んだのか、異形のロックバンドがシーンを侵食したのか、今となってはどちらでもいいし、どちらでもあったんだろう。音楽自体を自分自身で再創造しようとした人たちが、この時代、この場所に密集していたという、確かな記録がここにある。