みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ジェルジ・リゲティ:自動演奏楽器のための音楽

ジャケ写真は同シリーズのものです
リゲティ・エディション3 ピアノのための作品集
2006年6月12日、ジェルジ・リゲティが83歳で亡くなった。
これは1940年代から90年代までのリゲティの音楽を、バレル・オルガン、メトロノーム、プレイヤー・ピアノのために編曲しなおしている作品集です。
いうまでもなく、単に人の手によるバイアスを排するのが目的ではなく、ベタな表現ですが、演奏機械独自の可能性を追求しています。
機械による人間ではありえないピッチでアクロバティックに演奏される音楽は、むしろ変化に富んだ曲想を浮き彫りにする快感が多く、非人間的で無表情という浅い印象を与えたりはしません。
バレル・オルガンによる「ムジカ・リチェルカータ」などは踊りだしたくなります。
そして、コンロン・ナンカロウのプレイヤー・ピアノ曲がそうであったように、たしかにミニマル音楽やテクノにも通じるポリリズムを生んでいて、「ハンガリアン・ロック」などは、若い人に是非普段聴いているクラブミュージックの合間に挟みこんで聴いて欲しいもの。
唯一オリジナルの形で収録されている100台のメトロノームによる「ポエム・サンフォニック」は、ライヒの「振り子の音楽」などを聴いた耳にはおなじみのプロセス音楽として響くかもしれません。
エントロピーがどうのこうの、というやつです。
冒頭100台が一斉に時を刻むサウンドスケープはなにか磁気嵐のようですが、それが8分を過ぎるあたりから一台一台動きが止まっていき、むしろ静寂を意識させるようになるさまは、なんとなく物悲しいというより、諧謔を感じさせます。
個人的には、100台のメトロノームが並んでいるのを想像するだけでうれしくなってしまうんですが、ライナーのリゲティのコメントによると、1962年当時、リゲティフルクサスのメンバーだったらしい(マチューナスからの強制指名で)!この曲というかハプニングの初演のテレビ放送は、オランダの上院の要請でキャンセルされたらしいです。