みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

WEBを捨てよ町へ出よう、とまでは言わないまでも。:宮脇睦 『Web2.0が殺すもの』

勢いで読んでみました。
基本的な論調は「都合よさげな商標に便乗して、あんまり騒ぎすぎると恥かくどころじゃ済みませんよ」というものなのかと。タイトルや文章の調子など多分に「お騒がせ」な要素や、名指しの批判めいた文章などがどうしても癇に障る人はいそうな感じですが、ところどころで鋭く有益な示唆があるのでは。ネット社会のタコツボ化や既存メディアがそうそうWEB2.0で取って変わられるようなものではないことなど、ちょっと考えればわかりそうなものなのに、言葉にできていない部分をちゃんと押さえてある。「集合知」を絶対視するな、という警鐘は、著者がプログラマー出身だけに説得力があるように思える。少なくとも流行語に多少の違和感を覚える向きには、わが意を得たりと共感を呼ぶかも。Web接続可能時間が優劣を決めるのなら、Web2.0社会で最強のプレイヤーになれるのはニートという逆説的な示唆は、文脈とは無関係にヒットしそうな気も。
セレンディピティが減少していくことで、Google検索結果によって腑分けされたような世界ができあがるんでわ?みたいな危惧が無いわけではないけれど、それだってセンチメンタルでナーバスなバックラッシュに過ぎないかもしれないわけで、本当にユーザーや市場はそんなに御しやすいものなんだろうか?この本の著者はどうもその辺りの「現実感」を確実な足場としている様子。
読み終わると最終頁により詳細なPDFファイルをHPでプレゼント、と。本書を全部読んでキーワードを探さないと送信されないようになっている様子。なるほど、WEBは本来このように使えと?
リアルの感覚がなくて、どうしてWEBが進化したら正確な情報を見分けられるというのか?個人的にずっと気になっているのはどうもその辺りのようです。

書を捨てよ町へ出よう [DVD]

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