みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

猫のまにまに:My Cat Is An Alien『Through the reflex of the rain』、その他

nomrakenta2006-10-20

Through the Reflex of the Rain

Through the Reflex of the Rain

猫に好かれないようなのだ。ただネコ族全般が人をあまり寄せ付けないのか、個人的に猫から避けられる人間なのか、そもそも接触自体があまりないので、わからない。従順そうな表情が見て取れるのがまことに好ましいイヌと違って、子猫などは愛らしいが、成長したものの、時に容赦のなさそうな表情などを目にすると、体のサイズさえ逆転すれば、いぢめられるのはきっとこちらだ、場合によっては狩られてしまうかもしれないぢゃないか、などという鼠歳らしい不信感があるのであって、それが、ネコとわたしの間に見えない障壁となっている立ちふさがっているのではないのかと。しかし猫好きの人はどうも猫に好かれているように見える。不思議だ。

「MY CAT IS AN ALIEN(ぼくの猫はエイリアン)」 (以下MCIAA)は、イタリアはトリノのマウリツィオとロベルトのオパリオ兄弟によるアストロ即興ポストロック・デュオで、ロベルトは画家でもある。彼らのバイオhttp://www.mycatisanalien.com/によると、なぜに愛猫がエイリアンなのかは不明だが、1997年に自身のレーベルをたちあげ、CDRなどをリリースし始めるが、そのうち最初のものがソニック・ユース(以下SY)の目に留まり1998年のSYイタリアツアーをサポートする形でデビュー。以降、スプリットCDの体裁でサーストン・ムーアThurston Moore,ジム・オルークJim O'Rourke, Jackie-O Motherfucker, Thuja, クリスチャン・マークレイChristian Marclay・・・といったその筋・あの筋の重鎮との共演を重ねている。
本作は2004年製作。ハンドメイドらしい厚紙を折り曲げたジャケットには、シルクで2色刷りされた絵がぶっ飛んでいながらも、ちょっととぼけた味わいがある。
自宅スタジオ「スペース・ルーム」(楽器の名前もelectric alien guitar,cosmic effects,electrogalactic guitar,astrotoy keyboardなどとにかく「宇宙」が好きらしい)の窓から35フィートのケーブルでマイクロフォンを野外に向かって吊り下げ、降りしきる雨や路上の車の音などの環境音をフィールド・レコーディングしながら、即興で「共演」し、一発録りしてしまったという変わった内容。
全1曲35分。No Overdub,No Outtakesと自慢げに書いてある。
はじめはシトシトとした雨音からはじまって、次第に鳥の鳴き声のような電子音がひんやりした空気に寄り添うように始まっていき、11分を過ぎたあたりで、とてつもなくリリカルなギターのタッチがあらわれるところなどは、初期SYのノイズ・ジャムのヴェールの中からメロディーが芽吹いてくるあの感じを彷彿と。SYはあの当時、ハードコア・パンクとインディーロック、そしてネオサイケなど、同時代複数のシーンを視野に入れていたと思うが、このMCIAAの場合は、そのように参照して自己を決定していくような外部のシーンというのが希薄に思える。引きずられる要素が無い分、自分達の表現欲求のままに活動をできるが、その分、集合したシーンを形成することがなくユニークな存在であり続けるところが、当世のバンドらしい、のか?
もしかしたら現在はファウストやカンのようなバンド(例えばCul De SacやPeltのような)が普通にごろごろしているのに誰ももはや驚くことのない時代なのかもしれない。

京都猫町さがし (中公文庫―てのひら絵本)

京都猫町さがし (中公文庫―てのひら絵本)

これはブックオフで見つけたおもしろい本。京都市上京区の喫茶店「ほんやら堂」ご主人撮影の写真集。ベタすぎる感想だが、構図の切り取りかたにいちいち「うおぅ」とうなってしまう。そしてその力点には必ずネコがすっぽりと。昭和の薫香も強烈なモノクロ写真の中で、様々な表情をつくるネコたちを見ていると、京都という町はほんとうは猫族のためにあるのかもしれない、と思えてしまう。猫町感覚のオリジンはもちろんこちら→萩原朔太郎猫町

河童の三平 (ちくま文庫)

河童の三平 (ちくま文庫)

この名作の最終章「猫の町」は、そんな妄想の果てまで突き進み、そしてあっけなく三平は去っていく。タヌキの友情に涙腺がゆるむ。なんというか、大人なのである。このペーソス、このドライなユーモア。おれにはやっぱり、鬼太郎よりも河童の三平だ・・・。
猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)

猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)

『ファンタジーの文法』ISBN:4480024816表的な短編集。『ファンタジーの文法』でもネタとして披露していた猫になってしまう老駅員の話が表題作。読み口は軽いが、知的な仕掛けと上品な人情味の分厚い層に気付くべし。