みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ベルカ、ほえないのか?

ぞくぞくする傑作。 ひさびさに小説を読んで途中で休むことができなくなってしまいました(「半島を出よ」でも中休みしたのに)。
20世紀を軍用犬の世紀として串刺しにして読み替えていくのですが、その密度とスピードが並ではなく、文字通り「犬死」していく犬たちの姿が、まるで早送りボタンを押し続けているかのように矢継ぎ早に語られます。ニヒルで挑発的な語り口が巧妙で、終盤近くではもう中毒になっています。
読後まず思ったのは、語り部は誰か?ということで、もちろん誰でもありうるわけで、深読み以上のものではないんですが、最後のあたりで語り部が主人公の少女に呼びかけるようなメタな部分が少しあって、このあたりに結構書かずにおいた意図があるような気がします。「ロックンロール7部作」という作品も続けて読みまして、こちらは冒頭に「物語はどこからでも始めることができる」と宣言されるんですが、それならこちらは「誰でも語り部でありうる」という感じでしょうか。
世界史の復習にもなるかも。