『青きドナウの乱痴気―ウィーン1848年』良知 力
読了。
数年前、京都の「砂の書」店長の寺井さんから、「あとがきだけでも読んだほうがいいよ」と薦められて購入して積読していた書。平凡社ライブラリーになっているのは知っているがこれは単行本。
だいぶ良くなってきた右足とはいえまだまだ瀧道歩きなどはやめておいたほうがよさそうで、朝から本を読む週末が続いたのと、積読の表層から本をごっそりと貸倉庫に預けたことで、積読古層に埋もれていた本書を発見できたので読んでみた。
猫も杓子も(「シャリバリ」は猫の音楽という意味。Michael Rotherに“katzenmusik”という作品があるが関係はないんだろうな)デモ・暴動のウィーン1848年、革命するもの弾圧するものがひっくり返って挟み撃ち、あっという間に溶解していった革命の年を、膨大な史料からそれぞれの場面から立ち上げていて、都市の葉脈が透けてくるような本だった。
あとがきのアトアジは言うまでもないこと。
ジョディ・フォスター『それでも、愛してる(The BEAVER)』
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ジョディ・フォスター監督・助演、メル・ギブソン主演の『それでも、愛してる』(原題「The BEAVER」…なんだこの邦題)を観た。
粉川哲夫と三田格の対談集『無縁のメディア』で触れられていて観てみたいと思っていたのだった。
ジョディ・フォスターの監督作品は、本作含めて3本あるようで、最初の監督作『リトルマンテイト』は劇場公開時になぜか池袋で観た記憶がある。天才少年とその母という筋で、天才子役でキャリアをはじめたジョディ・フォスターが描くべき映画、という感じがした。
ジョディ・フォスターの撮る映画は、なかなか一言でいえないが、ユーモラスな面もありながら必ずシリアスなテーマを真正面から取り扱っている、要は珍しいほどストレートなヒューマン・ドラマということなのかもしれない(ちがうかもしれない)。
本作では、メル・ギブソンが重症の鬱になった玩具メーカーの社長を演じて、鬱の恢復し難さを表現し切っている。
ジョディ・フォースターはその妻。夫の鬱に戸惑いながらももういちど向き合いたいと思っている。メル夫の鬱は極まって、ついに、右手にかぶせた腹話術用のビーバーのぬいぐるみに別人格がもたらされて、生活のあらゆる局面においてこのビーバーが語り、メル夫はそれに従うという形をとって、状況を突破しようとする。
映画の原題はわかりやすく、このビーバーからきている(小説の原作もあるみたいだ)。
このビーバーによる采配はメル夫の人生をうまくコントロールし始めるように見えるが、もちろんこのビーバーを使った腹話術もどきの行動は、「治ろう」としているのではなく、決して「治る」ことはないと自分を規定したメル夫が周囲にしかけた一種の戦争状況だといえると思う。恢復を期待するジョディ妻の期待にメル夫が応えることはできるはずもない。軋轢が表面化すると同時に、ビーバーがメル夫の人格を支配しようとし始める。そこに息子の成長物語が併走する、というのが大まかな本作の筋になっている。
この映画の中盤に、メル夫が、ビーバーをつけたままテレビのトークショーに生出演するシーンがある。この前に観た『アルゴ』のどんなに生々しく暴力的なシーンも、この場面の居心地の悪さにはかなわない。恐怖すら感じた場面だった。「治ろう」としない人間は周囲に不安を与える。観る者もその中の一人として社会がいきなり客体化されてしまうという恐怖感。
本厄耳瞬日乗⑦「アルゴ」
近所のアジサイは皆、ちから尽きて暑さのなかでしぼみしおれつつある。梅雨は終わりじゃないのか?
7月6日(土)
朝。
病院でレントゲンを撮ってもらうと、骨のヒビの黒い亀裂はなんとか見えなくなっていた。しかし、2か月以上この状態だったため骨が委縮して庇う癖が出来ている、と。
はっきりヒビはなくなったと分かったので、固定具は付けずに、右足を骨折前に日常に慣らしていく事に。
昼。
梅田まで出て、ACTⅢのレコード市をのぞく。
ハン・ベニンクHan Bennink1982年のソロ「Tempo Comodo」、ブッチ・モリスButch Morris1985年の最初のコンダクション作「Current Trends In Racism In Modern America」、デヴィット・モスDavid Mossの1984年「Full House」と1985年の「Dense Band」の2枚、ロスコー・ミッチェルRoscoe Mitchell(クレジットを見てとロスコ―がラップしてる曲がある!未聴く)の1984年「And The Sound And Space Ensembles」、パンク・バンドのトイ・ドールズの1st(懐かしい。彼らではこれだけが好きだ)アナルコ・パンクのCRASSと仲が良かったというポイズン・ガールズPoison Girls1980年の「Chappaquiddick Bridge」(これは安いしピカピカなのでリイシューものだと思います)、、スネークフィンガーSnakefingerのLPに、ジェイムス・ブラウンJames Brown、キャンド・ヒートCanned Heat、ロバート・ワイアットRobert Wyattの、そして東京ロッカーズPASSから出ていたBOYSBOYSのEPなどを見つけたが、なかでも副島輝人『世界フリージャズ記』で読んで知ったばかりのオランダの「ノードバンド」noodband のおそらくは唯一のアルバム「shiver」を見つけたのが大きかった。『世界フリージャズ記』では、リップ・リグ&パニックに触れた直後にメールスに出演したこのノードバンドのことが興奮気味に書いてある。
400円だったミュージックマガジン1982年3月号の内容が素晴らしかった。今のマガジンにはない何か。情報がほとんどここにしかないという熱気、なのか。
蒸し暑さがこたえる。
7月7日(日)
昨日に引き続きの猛暑。
レンタルしてきたDVD映画『アルゴ』を観る。
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イランでは、この『アルゴ』の事件の描き方が適切な見方を欠いているとして、イラン側からの視点で同事件をとりあげた映画「The General Staff」を製作するというが、アメリカ映画が一方的なのは大昔からだ。この『アルゴ』でもラスト近く空港での離陸までシーンのドタバタの描き方はハリウッド映画のパターンに嵌っていた。
しかしむしろ、ジョージ・クルーニーとベン・アフレックがこの映画を作りたかったのは、実話に基づいた政治サスペンスでありながら、ハリウッドの自己言及ができるまたとない題材だったから、その辺なのではないかと感じた。
しかし、たった120分でこの密度とは!
本厄耳瞬日乗⑥
なんか淡々としてきましたが…。
6月25日(火)
お昼に中華レストランから出るときに、めくれたドアマットに怪我している右足の先をひっかけて、さらにぐねってしまう。涙出る。
山森さん著書のガタリ論文、付箋を貼りながら読み終わりかけ。面白い。ガタリにおける「リトルネロ」の考え方がやっとつかめてきた。むしろ、その前提であるスキゾ分析の考え方のほうが「使える」気がしてくる。
6月26日(水)
朝起きても、前日の右足のぐねりの痛みがひどくなっている。なんだろう逆戻りだ。冷やさなかったのがいけなかったのか。これ以上ひどくなるようなら再度病院だ。ロキソニンを飲むのは嫌なんだが。足の痛みかむかつく胃か、二択。
明け方から、強い雨脚なので、家人に車で千里中央まで送ってもらう。
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6月27日(木)
夜は、梅田阪急屋上のビアガーデンでI田さんたちと飲み。梅田は長いが阪急屋上に初めて来た。梅雨の晴れ間の薄曇りだが、満員。遅れて行ったので飲み足りない。そのあとDDハウス前の焼鳥屋で二次会。楽しい夜で足の痛み忘れる。
6月28日(金)
二日酔いと寝不足。なんとか乗り切る。
帰りに、カセットテープとコード類を買いに、ヨドバシに寄ると、母が以前から欲しがっていたヴィデオテープをDVDにダビングできるデッキ(チューナー?)が限定安売りで出ていた。電話して買うかどうか訊くが、この足では持って帰れないと指摘されて、発送してもらうことなど思いもつかずあっさりと断念し帰宅。
6月29日(土)
クリーニング出し、図書館で借りていた本の返却をしてから、借りている倉庫へ。
山森さんの論文を読んでから、ガタリ『機械上無意識』をちゃんと読みたくなったので、段ボール箱をガサゴソして持って帰る。汗、かく。
夕方まで、テープデッキでPCから音を録音し、カセットデンスケで再生してみる、というのを繰り返す。カセットデンスケのコンプ感、半端ではない。
6月30日(日)
父が梅田に車出すとのことで、便乗してヨドバシカメラに寄ってもらい、金曜のヴィデオ→DVDダビング用デッキを買ってくる。
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外でお昼を食べ、帰ってからデッキを設置・動作確認。マニュアルの関係するページだけ付箋して母に操作の説明。ダビングするのにVTRを通常速度で再生しておかなければいけないが、買い物に行くときセットして出かけてきたらちょうど良いのではと思う。VTRのライブラリーのスペースをこれで減らせるだろう。
20時よりNHKで『八重の桜』。会津は城に攻め込まれ、白虎隊は自刃、八重も銃をとっている。折り返し地点か。
本厄耳瞬日乗⑤野ざらし骨釣りスローなカセット
6月18日(火)
松葉杖をやめてステッキにして一週間ほど経過。だんだんステッキなしで室内なら歩けるようになってきている。少しずつ復調しつつあることを実感。
早く普通に歩きたい。千里の丘陵を歩いて越えていきたいんです。
6月19日(水)
山森さんから著書『ジル・ドゥルーズの哲学』(人文書院)asin:4409030809をお送りいただいたのが届いていたことを、出勤前に知らされる。
あわてて、そのまま鞄に入れて会社に持っていきながら読み始める。
ガタリ論文、後半に補論として掲載されている。以前からの『ガタリ・トレーニング』の成果のようで嬉しい。
『ミル・プラトー』の重要概念「リトルネロ」は音楽形式を元にした反復の概念だと思っていたが、少なくともガタリの『機械状無意識』においてはそれに留まらないようだ。もったいなくて通勤時に少しずつ読み進めている。
会社で、月間MVPとやらで表彰される。Windows8対応用の画面をこさえて準備したからという理由だが、なんだかなあ。よっぽど他がなかったのだろうなあ。
就寝前に『倍音』を読み耽る。
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6月20日(木)
雨。
帰りタクる。
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柳屋小三冶の『野ざらし』と桂米朝の『骨釣り』。
『野ざらし』も『骨釣り』も、基本は同じ話で、江戸前が上方から派生して、上方はいったんネタ自体が廃れたのを桂米朝が復活させた、と色んなところに書いてある。両者に共通した噺の骨格は、最初に骨を見つけて回向し若い美女の幽霊の訪問を受ける成功者Aと、次に隣の部屋に住む、それを知って二匹目のドジョウを狙って果たせない失敗者Bがいる、という事だろう。そして、単なる諺の教訓話ではなくて、失敗者Bの憎めなさをどう表現するかが落語として面白みになっているのだと思う。
先ず、自分と同じく独り者のAの部屋から女の声が聴こえてくるので、Bが覗いてみたら若い女が来ている。翌日BがAを問い詰めると、来ていた女は、前日回向してやった髑髏の幽霊だという。その話をきいてBも骨釣りに出かける…とこのあたりも同じ運びをしている。
江戸前の『野ざらし』では、Aが侍で、骸骨を見つけて回向するのはA自身によるBに向けた「語り」になるが、上方の『骨釣り』ではAは侍ではなく幇間で旦那につきあって釣りに行き骸骨を見つけるまで落語としてAの視点で「語られる」。Aが家に帰って寺に骸骨を収めた後幽霊の訪問を受けるが、その後、視点は隣から覗いていたBに受け継がれるという形。『野ざらし』ではBが骸骨を釣りに行って果たせないままサゲとなるが、『骨釣り』ではBも骸骨を見つけて回向し、部屋で待った結果、石川五右衛門の幽霊の訪問を受けることになる。という風に、『骨釣り』のほうが、米朝のアレンジがかなり効いているのかもしれないが、濃厚な、というか痛烈なクドさをもった構成になっている。
『落語心中』は江戸前落語の話なので、出てくる噺は『野ざらし』。『野ざらし』の沸かせどころの一つはおそらくBが釣りに行くときの上機嫌ぶりだが、漫画の中でも上手く表現されている(と思います)。
6月21日(金)
雨。
帰りに2ヶ月ぶりに堀江の中古レコード店『○か×』に寄ると、ずっと探していたCDを発見。
伝説的な1981年のフレッド・フリス初来日の時のロフトでの、突然段ボールとのセッション。セッション2(12分)とセッション3(20分)が収録されている。なぜセッション1が収録されていないのかとても残念だが、蔦木栄一氏がオルガンを弾くセッション2が特に好きだ。即興演奏に限らず良い音楽を聴くと自分もエア楽器で参加したくなってしまうものですが、このセッションもそういう空気があふれている。
しかし、20%引きという『○か×』さんの会員サービスはとても有難いです。
- アーティスト: H. Wolf
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昨年ロンドンのロイヤルアルバートホールでのJohn Cageフェスでご本人に会えてしまったChristian Wolff作品の新録音『8 DUOS』。女性パーカッショニスト、Robyn Schulkowskyが、フレデリッゥ・ジェフスキのピアノ、ジョーイ・バロンのパーカッション、そしてヴァイオリン、トランペット、チェロ、最後にはウォルフ自身のメロディカなどと8つデュオを組んでウォルフ作品に取り組んでいる。
どんな小さな音の気配も逃さずに、しかしどこかユーモラスでもあるジョーイ・バロンとのデュオ2つが先ず良いし、ジェフスキのピアノとの絡みも秀逸。ウォルフのメロディカとの間歇的でありつつ、「音楽」が漲ったデュオも聴きどころだと思う。
2000年代初めのMODEからのウォルフ作品集リリースラッシュから割と継続してウォルフ作品は良い演奏・録音に恵まれていうイメージがある。おそらく録音のたびにウォルフが演奏者と音楽を立ち上げることに真摯に向き合っているからだと思うし、演奏者の自発的な創意を促す、というよりはそれが無ければ成り立たない楽曲をウォルフ自身が書いてきたからだろうと思う。ウォルフの音楽が政治的なのだとすれば、まずそれは作曲家と演奏者、そして聴衆との間に、民主的な関係を音楽が奏される間架橋するためにあるのだ、とも思う。
6月22日(土)
LAFMSの紹介者であるT坂口さんとソルマニアの大野さんによる『スローなカセット魂』が複眼ギャラリーであったので覗きにいく。
一部は坂口さん持参のカセットから
・竹田賢一のピナコテカから出ていたカセット。大正琴のソロ。デレク・ベイリーの如き大正琴を初めて聴く。
・トム・レッシオンのクルト・シュヴィッタースの『原音ソナタ』を素材にしたコンクレート作品。
・トム・レッシオンの10ミニッツ・インプロ・フェスに送付参加したテープ。シンバルにギター弦を張ったもの、そしてそれを再生スピードをスローに変えたもの。
・ピナコテカ・レコードのカセット。五十嵐えりこ 三曲 早川義男のカバーあり。
ここでゲストに階下のJOJO広重さんが参加
二部 大野さんのカセット
・ハナタラシtake back your penis?
・当時、山塚アイが会いたいといっても会ってくれなかったという編集人による一本6000円だったという伝説のオムニバステープ Beast 666 Tapes 85年に完全限定で出たカセットからソルマニアやその直後にポンチャック?らしき怪しい音。ボアダムスの初期、トランスのオムニバスに収録されたもの、金沢のアジェンスメントの金属的かつ植物的なドローン(これは完全に現在でも有効な音)。と、ここまでBeast 666 Tapesから。
・すべてを人骨で演奏したという怪しいテープ。
このあたりから第三部になって大野さん坂口さんが交互にカセットをチョイス
・第五列のDEKU氏による「ビニール解体工場」
・クランプスのカセットシングル
・ギター用アタッチメント「e-Bow」の取説カセット(!)。通常ギタープレイヤーが再現不可能な「e-Bow」プレイ(大野さん談)が怒涛のように繰り広げられてました…。
・マタギ 84年 ・イディオットオクロック89年エッグプラントでのLIVE
・最近復活してるらしき、Camper Van Beethoven絡みのバンド、Box O' Laffs
・アマリリス88年
・ドゥドゥエッツのメンバーとノイバウテンのアレクサンダー・ハッケの「フレンドシップパゴダ」
・阿部怪異 ・メルツバウ初期 ・John Duncanとメルツバウ
・フォークテイルズ ・ハフラートリオ
・・・と、メモできたのは以上のような感じでした。
大野さんが仰っていたのは、物によってはカセットテープの耐久性は、CDよりも良い場合があるというのは、チューバ奏者の高岡大祐さんも同じ事を仰っていたのでやはりそうなのかと思った。あと、これもテープによるだろうけれども、テープ独特のコンプ感と高音と低音の分離再現具合への言及は流石だなあと。カセットレコーダーの録音モードを空押ししてステージでコンプレッサーとして使っていた人もいた。
あと、音源を聴くというのは、その中のその人の音楽(演奏)を聴くということでもあるけど、前提としてその人が聴いたものを聴くという事、という当たり前のことに気づかされた。もうちょと掘り下げて考えてみたいことではあるが。
6月23日(日)
シトシト雨が降ったりやんだりの一日。
昨日届いていた、WカセットデッキをPCにセットアップし、もうひとつ、この日にヤマト便で届いた「カセットデンスケ」TC-D5M の具合をみることに決めていた。充実の一日。
高嶋進『ジァンジァン狂宴』
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自分が立ち上げた聖域に、自らの手でトドメを刺すこと。実際に店舗の取り壊しに向けて高ぶっていく描写は、淡々としながら鬼気迫るものがある。
もちろんジァンジァンに去来する名だたる文化人、芸術家たちの、特に小劇場でも特異だったジァンジァンのスペースでパフォームすることの手応えを軸に読んでいけることについて興味が尽きない。
しかし、読み終わって今猛烈に印象づけられているのは、マイナー文化の最後の城とまでいわれた小劇場を自らの手で無に帰すことへのこだわりと熱狂。
自伝小説の語り口で、良作という三人称に仮託して語られているのがなぜなのか、過去との距離の取り方として適当だったのか、それはちょっとわからない。
個人的な話をすると、渋谷ジァンジァンには行ったことがない。
2000年の初めから年末にかけて1年近く東京に住んだことがあった、本書によると、その年の4月にジァンジァンは閉店している。たしか、渋谷を歩きながらジァンジァンの看板だけ見かけて、ああここがあの、と思った記憶があるから、伝説の小劇場を体験しようと思えばぎりぎり間に合ってはいたのだ。特に後悔はないけれど。
その後、「谷川俊太郎の33の質問」を文庫本で楽しんで会場がジァンジァンだったと知った。
- 作者: 谷川俊太郎
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- 作者: 高橋竹山
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ドーナツ日乗③RITA CHAO凌雲『Shake,Shake,Shake』
RITA CHAO凌雲 / Shake,Shake,Shake
c/w 爱人你变了、Happy Happy Birthday 、想起他(As Tears Goes By)
リタ・チャオという人は、60年代70年代シンガポールの有名な歌手らしいんですが、このジャケットがプランテーションさんで並んでいるのを見て一目惚れでした。1966年の4曲入り7インチ。
The Questsというバックバンドもかなりアジアのガレージ界では有名らしく(店長情報)、A1「Shake,Shake,Shake」では歯切れの良いガレージ・ロック調。A2、B1のスローテンポな曲もいい感じ。B2はジャガー/リチャードの「As Tears Go By」をやってますが、やるせなくも可愛い感じは捨て難い。
こういうアジアのガレージものというのは熱心なファンが根強く存在するらしいのですが、僕はふと立ち止まってしまってこの一枚だけ出会ってしまった、という感じです。
A1。
シングルには入ってませんが、この曲良いです。
The Questsも。