みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

本厄耳瞬日乗①


この1月〜5月までに行ったライブや日記の書き漏らしの、IphoneカレンダーやTwitterの呟きを掘り起こしつつの、思い起こし、接ぎ木、になります。ずいぶんたまったものです。
最近、体験が書き言葉になるのに時間が少しかかるようになっているなあとは実感があります。1週間前くらいの出来事ならまだまだ自分の中で言葉に(月並みな言葉に)固定されたくないといって、暴れてる感じです。

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1月17日(木)『金管即興会』@蒼月書房
 有本羅人(tp)江崎將史(tp) 山本信記(tp)高岡大祐(tuba)
チューバ奏者・高岡大祐さんが企画した金管奏者4人によるライブ。Bright Momentsからのお二人とPOPOからのお二人。自分にとって大阪の至宝的なバンドふたつから金管奏者がよくも出そろったなという感がありました。
4人ひとりずつソロで即興が一部で、二部は揃って、だったと記憶します。山本さんの即興ははじめて聴いたかもしれない。4人それぞれのタッチが全然異なるのは当たりまえですが、蒼月書房の空間に融け合って消尽していく音を堪能してしまうと、この夜は家に帰っても音楽を必要としなかったです。素晴らしかった。
高岡さんは、金管奏者というのは最近ほんとうに少ない、という事をしきりにおっしゃっていた。そうなのかもしれない。
ライブで一緒になったI田さんから、個人的にとても嬉しい依頼があった。

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1月18日(金)
 仕事帰りにふらりと寄ってみたプランテーション・レコードで、70年代のスーダンのポピュラー音楽のカセットを七本まとめ買い。
ちょっと聴かせてもらったら内容が素晴らしかった。現地でももう売ってない、という店長コメントにも追い込みかけられた。


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1月20日(日)ライブハウス磔磔でお手伝い 「さかな」
 I田さんに頼まれたのは磔磔でのライブの録音のお手伝いでした。
I田さんの知り合いのY田さんがこの日の磔磔でライブするバンド数組の映像を撮るが、音声をとる手が足りない。いつもI田さんが行くが都合が悪いので、とお鉢が回ってきた格好でしたが、出演バンドに「さかな」がいたので、僕が「さかな」の大ファンであることをI田さんもご存じで、作業自体は録音ボタンを押してレベルを見ておくだけなのだし、野村で用が足りるだろうということで勧めてくれたというのが本当のところでした。Y田さんは、以前、心斎橋で僕が高岡大祐さんの「Plays Standard」ライブを企画したときに映像を撮ってくださった方。
昼のリハから入らせていただいて、サウンドチェック。ラインから音がもらえたので、私としてはほんとうに何の心配もなく、リハからライブまで、「さかな」のお二人が音を紡いで曲を織るのを幸福に満ち足りて観聴きさせていただきました。
 共演は「ゆーきゃん」さんと「キツネの嫁入り」。どちらも初めて見ました。新鮮。
終演後、「さかな」の西脇さんに駆け寄り、ライブの感動と長年のファンであることをもつれた舌でまくしたててしまいました。それで長年愛聴してきたアルバム『光線』(何枚かある「さかな」のベストな作品の一枚だと思います)にサインを頂いたらこんな丁寧にイラスト入りで頂けてしまいました(感涙)。

POCOPENさんとも少しお話しできて、最後に握手までしていただきました。
Y田さんによると、この日の僕は終始幸せそうな顔をしていたそうです。それはしょうがない…。
この日の「さかな」のリハからライブ映像がVimeoにあがっています。

http://vimeo.com/58319480
sakana_01/20/2013
SAKANA   THE BRIGHT ROOM-COMMEMORATIVE LIVE
SHOT IN KYOTO, AT TAKU-TAKU 01/20/2013
Lupinus POCOPEN vocal and guitar  NISHIWAKI guitar 
IMAGES, MIX and EDIT by MASAKI YANAGIDA SOUNDS by KENTA NOMURA

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イーハトーヴ交響曲

イーハトーヴ交響曲

 富田勲イーハトーヴ交響曲を聴く。
冒頭、原体剣舞連(dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah)、こうくるか!と思ったが、最後まで聴くにつれてもちろん僕なんかがどうこういうまでもなく良く出来ている筈なのだが、新鮮味というとどうなんだろうと思うようになった。
女の娘のか細く甘い歌声とフルオーケストラを並列して聴きたい、という欲望はそれほど新しいわけではないし、フィル・スペクターがとても魅力的な形で提示したことではなかったのか?という…。

ちなみに、僕は原体剣舞連をインダストリアル・ノイズ調に脳内再生してきました。勅使河原三郎のダンス作品をNHKで観たとき、インダストリアル!と思ったのだった。

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1月26日(土)円盤のレコード寄席『万国博覧会のレコード(RE)』@蒼月書房
 17時頃から、I佐さんと動物園前で待ち合わせ、時間まで居酒屋『田中屋』さんで呑み。ジャンジャン横丁の『田中屋』さんはI佐さんに教えてもらった飲み屋さんで、何食べても美味しい。⇒縄のれん田中屋
 19時過ぎから、徒歩で蒼月書房まで。円盤の田口史人さんによるレコード寄席を拝聴。

「万博関連のレコード」を特集したもので、この日は実は二回目だったらしいのだけれど僕ははじめてだった。万博の音楽、というと、僕はクセナキスか「世界の国からこんにちは」になってしまいますが、「世界の国からこんにちは」を各レコード会社がいろんな歌手に歌わせていたのだということを初めて知った。富田勲の70年代のレコードで凄いクールな響きのものがあった(タイトル忘れてしまった)。万博以外にも、博覧会(海洋博やポートピア、つくば博など)関連のレコードがいろいろと聴くことができた。

物販で、半野田拓さんの新しいカセットがあるのを発見して即購入。

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1月27日(日)江崎將史(trunpet)小島剛(banjo)半野田拓(denki)@FUTURO

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1月31日(目)ロマンギャルド中崎町モンカフェ
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2月2日(土)BOILERZ(高岡大祐(tuba)ワタンベ(ds))ゲスト 有本羅人(tp)@FUTURO
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2月3日(日)
 I田さん宅で高岡さん、Bright Momentsのドラマー橋本さんなどと音楽聴きつつの飲み会。
おそらく大阪で一番濃ゆかったであろう音楽の夜。僕もレコード何枚か持参してかけさせてもらいましたが何をかけたっけか。ジョン・チカイのアテネライブがあったと思う。最初回転数間違えてかけてジョン・ゾーンばりやなと思ったのだった(弩恥)。

橋本さんの自家焙煎コーヒー美味しすぎでした。

各自持ち寄ったのが恵方巻きばかりだったのには笑えた。節分だったのでデパ地下はとりあえず恵方巻きで溢れていたのだった。


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2月5日(月)映画鑑賞『カリフォリニア・ドールズ』@十三第七藝術劇場
 もう13年くらい前になるけど、1年だけ東京で働いていた。最初の勤め先の印刷会社の東京営業所にいたのだけれど、会社以外で東京での知り合いは、兄と大阪から東京に出てきていた大学時代の知り合い夫婦(のような二人)だけだった。一年の間にその二人のお宅(何処だったか忘れたけれど都営大江戸線沿いの何処かだったように思う)に二回お邪魔させていただいたのだったけれど、そのどちらかの夜に亭主のTさんに「けんちゃん(←僕)この映画知ってる?」といって教えてもらったのがロバート・アルドリッチの『カリフォルニア・ドールズ』だった。衝撃的な傑作だったのだけれど、その後の本作はDVD化もされず、観るのはあの夜ぶり。
優しくて喧嘩っ早くて助平な女子プロレスのマネージャーを演じたこの映画のピーター・フォークは大好きだ。

Cue

Cue

Andrew Pekler『CUE』
一曲目はFaustの『I'ts a Rainyday, Sunshine Girl』への最高級のオマージュだと思う。
So Far

So Far

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2月10日(日)
 連休中日。I田さん宅でチゲの会。
TomTomClubの『DownTown Rokers』やPatti Smithの『After The Gold Rush』などかけた憶えが。
映画『スモーク』の話になって、そのあとThe Sea & CakeやGastr Del Solの話になって興奮。結局終電に間に合わず始発で帰ることに。まだまだ寒かった。ダウンジャケット着て寝てたなあ。

SMOKE [DVD]

SMOKE [DVD]

ブルー・イン・ザ・フェイス [DVD]

ブルー・イン・ザ・フェイス [DVD]

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2月13日(水)Sounders vol.18@木屋町アバンギルド
 Peter Knight
 Christopher Fryman (trumpet, computer)
 須田宣人  
 Tribal Beat Box by ミウラ1号
 
 通販サイトのArt into Lifeで購入したNobuto Sudaさんというアーティストの『Blurred』というCDRが、素晴らしい感触でこんな人がいるのかと思っていたら京都でライブがあったので観てきました。
 須田さんは最初に演奏でした。演奏後に柔らかい音色が良かったですと須田さんに感想をお伝えすると、僕も持っているソニーのハンディテープレコーダー(速度コントロール出来るやつです)の蓋をとっぱらってしまってテープは装着せず録音ヘッドを押したままに固定した「コンプレッサー」を見せてくれた。

Nobuto Suda 『Blurred』
カセット、テープループ、変則チューニングギター、フィールドレコーディング素材などを素に、隙がなく、しかしたっぷりと余白のある音作り。

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2月15日(金)友川カズキ バースディ前夜ライヴin大阪@ジャニス
 I田さんやK池さん企画の友川カズキライブ!ジャニスで見るのは2回目。
前来た時ジャニスのはいっているビルはテナントガラ空きだったような気がしたがもう満杯になっていた。
この夜の友川カズキライブはゲストが特濃多彩なゲストと即興演奏を繰り広げたアルバム『序破急』をリリースしたギャスパー・クラウス、そして永畑雅人、石塚俊明という豪華なものでした。

[LP] ギャスパー・クラウス「序破急」(アナログ/日本盤オリジナルジャケット仕様)

[LP] ギャスパー・クラウス「序破急」(アナログ/日本盤オリジナルジャケット仕様)

この夜のギャスパーのチェロ独奏が鳥肌立つほど素晴らしかった。
 ギャスパーのチェロは、

Kazuki Tomokawa / 友川カズキ(2/3)- A Take Away Show #98 [Part 2]
こちらでも聴くことができます。
そして、友川の曲なら、『ひとりぼっちは絵描きになる』が、好きでたまらないと再確認。この「好き」は他のどんな曲がどんな風に好き、というのにまったくあてはまらない。
 もしかしたら恐くて懐かしいという感情なのかもしれない。

 終演後、打ち上げに参加したかったが、なかなか会場がはけず、終電が危ぶまれる時間に。I佐さんとS藤さんと相談して抜けて近所の居酒屋で飲むことに。話はなぜか、音楽を聴いているとジャンルを問わず誰でも必ずあるという「アイドル萌え論」になった。

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2月21日(木)ロジャー・ターナー&内橋和久@中崎町モンカフェ

 即興ドラマー、ロジャー・ターナーの日本ツアー。結局行けたのはこの日だけ。しかし、得難いライブでした。
 ロジャー・ターナーと内橋さん、一定の速度と質、の混成物のようなものが唯一の約束事で、あとはどんな音も自由。そのもとに、どんどん拡げられつつ織り込まれて紡がれる。隙間という概念はないが、ものすごい集中力と開放感が聴く者にもたらされる。ロジャー・ターナーさんのドラムは、多彩で、クリアで、エッジがはっきりとたっている。スパッスパッと細かい一打一打が重く切れ味最高の小鉈。
 ロジャーターナーさんも凄かったんですが内橋さんのギターとダクソフォンをスイッチする様と音が最高でした!
 実は、ハンス・ライヒェルが考案したダクソフォンという楽器をを初めて見て聴いたのでしたが、マルセル・デュシャンの波打った定規みたいな形(停止原基という)の木片からどんだけの音を引き出すねんという…。
この夜、内橋さんは関空で日本に着いたばかりと仰っていた。今はベルリンにいらっしゃるということで、バス・フルートの天田透さんとも一度共演された事があるとも。

会場で購入したロジャー・ターナー参加アルバム2枚。
特に、ロル・コクスヒルとの盤の4曲目15分くらいのデュオ演奏は、教会で録音されたもので、開始時数分、教会内部のナチュラルリヴァーヴの中、ロルのソプラノサックスが柔らかに切り込んでいく。ミュージシャンの中で何かが弾けて即自的に音になっていく様子を聴くことができる。即興だから良い音楽だというこはない。そもそも即興とは作曲された作品を演奏することの反対語なのか、未だ書きとめられていない作曲なのかはっきりとはしない。ただここには音の満ちる場所ともうひとりの男(ドラム奏者)に激しく反応して目映く発火する人間がいるということなのだと思う。


ケヴィン・エアーズの訃報。

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3月5日(火)KIM & YOSHIMI LIVE! in OSAKA@鰻谷コンパス
 WATER FAI
 CROSSBRED
 EYE ( BOREDOMS )
 KIM & YOSHIMI
  G&Vo: KIM GORDON ( SONIC YOUTH )
  Ds:   YOSHIMI ( BOREDOMS / OOIOO )

 ソニック・ユースが停止してから初めて観るキム・ゴードン。良かった。


フェンダーアンプ二発が気持ち良く唸って、ヨシミさんのドラムで空を飛んでいた。目の前の背の高いお客がよく見えずで少し腹たったがSonicYouthのTシャツを着ていたので許してしまう。
WATER FAIははじめてライブ観た。想像よりもラウドなバンドだった。
発見だったのは、CROSSBREDでした。美女二人による電子ノイズ・デュオで、出だしにからAreaの曲からのサンプリングが鳴り響いた。コンパスでデメトリオの声聴けるとは思わなんだ。じわじわ盛り上がっていく電子カオスが◎でした。またライブ観たいと思っていたら、今度のノイズメーデー@難波ベアーズにも出演するらしい。

Chelsea Light Moving

Chelsea Light Moving

ちょうどこの頃に国内盤が出た、キムの元ハズ、サーストンの新バンド『Chelsea Light Moving』。
バンドのファーストアルバムということなのか、一回限りのプロジェクトということなのかは不明。
不思議な感触のバンド名は、70年代にミニマル・ミュージックの始祖フィリップ・グラスとステーブ・ライヒが運営していた引っ越し業者の名前らしい。さすがなセンスで、モノクロ画像を上手くコラージュしたジャケットデザインも「時間の往復運動=移動」を感じさせてくれて良い出来。音楽は、ハードコアやノーウェイブに逆戻りしたような風合いがありながら、今のサーストンの気分をヒリヒリと感じさせてくれる。無理なくバンドを楽しんでいるのかなあと感じる。サーストンの歌は、NYのフォークになりつつあるんだろう、そんな風に思う。
Between the Times & the Tides

Between the Times & the Tides

こちらは、出て半年以上経過してしまったSYのもうひとりのギター、リー師匠のソロ。完全まるごとウタモノということで話題になった。なぜか、ビートルズを強烈に感じる。



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3月9日(土)アキビンオオケストラ@Float
 最後まで複眼ギャラリーのジョン・ダンカンとどちらにするか迷ったが、こちらへ。

I佐さんと合流し途中から福島駅近辺の居酒屋さんで呑み。I佐さんから嬉しいニュース。

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3月27日(水)
 この週、市役所の裏手にトランクルームを借り始める。

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3月29日(金)半野田拓(g)高岡大祐(tuba)@堀江FUTURO
 FUTUROはレトロモダンで音楽フリークでカレーも美味しくて最高のカフェです。最高のカフェで最高の二人でした。
 新世界BRIDGEがあったころからそれそれ大ファンだった高岡さんと半野田さんというお二人をデュオで。2倍嬉しい夜ですが、このお二人のデュオ初めて観る!と思ってたら実際初めて、とのことでした。
半野田さんのサンプラーから出る音は宇宙から降ってくる光線のかけらのよう。ギターもまた同じく。しかしどこかに根っこがある。遊走する根っこが。高岡さんのチューバからも今まで聴いたことのない音が溢れだしていた。何か凄い事が起こった夜でした。


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3月30日(土)
 梅田でレコード市。これは…という掘り出しもの多数。

3月31日(日)
 I田さん宅での高岡さんH田くんの呑み会に誘っていただく。
半野田拓さんの新しいテープがかかって、みんな黙って聴き込んでしまった。自然に。

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4月1日〜7日
 トランクルームにごっそごっそと書籍を移転。
整理のときに出てきたWIRE誌の多さは我ながら圧巻でした。大阪府でこれだけ買い続け読み続けたのは自分だけでありましょう。
手話ハンドブックが出てきた。地下鉄で口論してるなーそれにしては静か、っていうか音出てない!とおもったら聾者の方々だった。とてつもなく表現が豊かに見えて、そのまま紀伊国屋で購入したのだった。自己紹介だけはできるようになった。また読んでみよ。

 棚の奥から顔を出したJazz雑誌『OutThere』を読み返していると、1969年リリースというくくりでアルバムを聴き連ねる事に。
オーネット・コールマンの『Crisis』の後に、ムーディーブルース、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの『Spiritual』、ストーンズのLET IT BLEED、セシル・テイラーの『2nd act of A』、THE BAND、そしてクリムゾン王宮殿。これら全て1969年の作。豊作ぶりに今さら驚く。

無縁のメディア 映画も政治も風俗も (ele-king books)

無縁のメディア 映画も政治も風俗も (ele-king books)

 粉川哲夫の映画レビューが大好きだ。あるいは映画以上にその映画を語る文脈が興味深い時がある。

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4月13日(水)

 フォノイコライザー購入。実は今までアナログLPはUSBターンテーブルでPC経由で聴くしかないという体たらくでしたが、これでコンポで聴けるようになった。
で、ここから足を負傷するまで、怒涛のドーナツ盤買いラッシュが始まります。

 ヴェルヴェッツのドラマー、モーリン・タッカーのシングル。雑誌の写真でしか見たことなかったブツ。ヴェルヴェッツ時代の曲『I'm Sticking with You』を吹き込んでいるが、コーラスにはジョナサン・リッチマンが参加。裏面は別の女性歌手の曲。

ヴェルヴェッツのシングルも見つけてしまった。6分近い『Foggy Notion』。
まだまだ演歌やポップスでも300円くらいなので安くてバンバン買ってしまう。まずい、まずい。
詳細はまた次のエントリで…(自宅デスクトップPCの電源が入らなくなってしまったので少し時間がかかりそうです)。


 モーリン・タッカーの話が出たので。
最近ひっそりリリースされていたモーリン・タッカーソロ作のアンソロジー。タイトルが『はるか昔に思えるわ』ときたもんだ。
このアンソロジー、途中経過報告ではなく、あくまでソロアーティスト、モー・タッカーの完了した「全キャリア俯瞰」という意図が強く出ているように思う。
ルー・リードや、ジャド・フェア、それからソニック・ユース等の地下ロックの名士たちが大量合流したモーリン・タッカーの初めてのソロアルバム『Life in Exile After Abdication』がリリースされた1989年は、僕が高校生の頃だった。それから『I Spent a Week There the Other Night(1991)』とライブ盤『Oh No, They're Recording This Show(1992)』(←このタイトル、ライブ盤のタイトルとしては最高だと思う)を出して最後の『Dogs Under Stress (1994)』からもう20年近くになる。本人としては音楽活動はすでにとっくに過去の出来事で、まあ、たしかに遥か昔にはなるのかもしれないが、少しさみしいなあと思ってしまう。
モーの声が好きだし、ヴェルヴェッツに加入する前に、ロックバンドに入りたくて自室でボ・ディドリーのレコードに合わせてドラムを叩きまくっていた、その話をきいてルー・リードがヴェルヴェッツのドラマーは彼女しかいないと決めた、というエピソード、大好きだった。
そんなモー・タッカーの、ソロ音楽活動の(おそらくは)すべてが入っている盤なので、おすすめです。

伊東乾『なぜ猫は鏡を見ないか? 音楽と心の進化誌』を読む。

なぜ猫は鏡を見ないか? 音楽と心の進化史 (NHKブックス)

なぜ猫は鏡を見ないか? 音楽と心の進化史 (NHKブックス)

そうかジョン・ケージの未完の遺作「オーシャン」を再現したのが伊東乾氏だったのか…。
現代音楽の可能性を、人間も含めた動物にとっての音響がなんなのか、動物はなぜ鏡を人間のようには認識しないのか(それでは人間は音楽に対して鏡像関係を結んでいるのか?)という根本的なところに手繰り寄せて思索実践が章ごとに積み重なっていく。各章が、思索・実践と著者の個人的体験をセットにして語られていて読みやすい。
パスカルキニャールも『音楽への憎しみ』で危惧したような音楽の強制力についても、ナチス、またオウムの音楽を使用したマインドコントロールにつついても触れられている(著者には、オウム事件に関する著書もある)。
最近ありがちな書名を棚で見かけたときは気持ちが萎えたが、読んでみると、ハードコアな現代音楽と聴覚、記憶、感情をがっぷりと取り組んだ力作だった。

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4月20日(土)GW直前に骨をヤる。
 南田辺の「スタンドアサヒ」で、I田さんと呑み。そのあとご機嫌でI田さん宅でも呑むが、この帰り際に、階段の最後の数段を踏み外してしまう。右足から落ちたらしくすぐに激痛が走った。「やった!」と思ったがこの時は、ただの打ち身だと思っていた。実は、足甲の骨に幅1ミリのヒビが5ミリ程の長さではいっていた。人生初めて骨をヤッてしまいこれも人生初の松葉杖生活決定…あまりに不覚。
本格厄年決定。
痛みのため、会社と家を往復する以外はまったく動けず。
このため、楽しみにしていた4月27日ムジカジャポニカでの「さかな」と「くじら」のライブ、また28日の芦屋での山村サロンにも行けず。最悪の気分に沈む日々。
世間ではゴールデン・ウィークというものになっていたらしいのですが私は…。

部屋のベランダから、茫然と。
数日、部屋に閉じこもりながら、昔のデンザツ(ノイズ専門誌『電子雑音』)を何冊か読み直す。
最終号のControlled Bleedingのインタビューを熱中して読む。

電子雑音9号

電子雑音9号

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ギブスに松葉杖の週末、公園へ行ってから、近くのスーパーで肉を買ってかえるというのが「大旅行」になってしまった。
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5月3日(金)チャールズ・ヘイワード@木屋町アバンギルド
 負傷のGWとなったが、これだけは、と松葉杖をついて観に行った。同じ日に梅田クアトロでマーク・リボーのセラミック・ドッグのライブだったが、リーボーさんは数年前に偽キューバ人で満足させてもらったし、ヘイワードは今度いつ日本に来るかわかならい、ということでこちらに。
これが、最高でした。これほど満員のアバンギルドもはじめての体験でした。


一部は、ビアノ弾き語りと鳴り物
 レナード・コーエンみたい、という声が客席からあがったが、そうかな?ヘイワードの歌声は、濁声といってもいい声だが、この声が時折美しく聴こえる瞬間がある。
二部で、ドラムとエレクトリック
 ドラムが叩かれた瞬間から、この時を長く待っていたなあという感慨に包まれてしまった。そして、ヘイワードの歌声。ドラムと歌と少しの楽器で、ヘイワードは世界と対峙している。曲は、直近のアルバム『ワン・ビッグ・アトム』とその前の『アブラカダブラ・インフォメーション』からがメインのようだった。
 ドラムで強烈なビートをしならせながら、即興的に言葉で遊んでいく姿が印象的だった。たとえば、「マシンガンドラムマシンガンドラムマシン。」とループさせて意味をずらしていったり、最後のアンコールでは、「イヤードラム(大声で) マイクロフォン(普通に) ラウドスビーカー(ささやくように)」というふうに。
お客が満員過ぎて、ドラムまわりの電機機材は何を使っているのか見たかったがまったく見られず。
ゲストのギタリスト、アキラトヨナガ氏もプレイも印象深かった。
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5月6日(月)春一番服部緑地公園
 GW最終日。例年の「春一番」。
 坂田明F1トリオ(高岡大祐tuba 本田珠也ds)+JOJO広重g,JUNKO vo(from非常階段)
最終日のコレ↑が見たくて。
坂田明トリオに非常階段!という予想できない組み合わせで、正直どうなるのかと思っていたら、「春がきた→ステラ・バイ・ザ・ムーンライト→ロンリーウーマン→春がきた」というスタンダードカバーというこれまた驚きの展開。
爽快だった。松葉杖振り上げて興奮してたら凄く目立ってたらしい。