みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

MinohVa2012 Music&Art Festival@箕面市各所

nomrakenta2012-09-30

例年なら緑地公園で開催されるレインボーヒルに行こうかどうしようかという日なわけですが、今年は地元の箕面数箇所の会場を使って音楽フェスがあると知って、そこに自作パイプオルガンの藤田陽介さんと「ばきりノす」が観れるというのを、otoutaさんのTwitterから事前に知っていたので、地元だし、このふた組だけは見に行こうと思っていました。
朝起きたらすでに12時を回っていて外は台風。

スポーツウェアにビニール傘を持って、まず花屋さんの「木花」での「ばきりノす」を観に。
僕の自宅から公園通り沿いの「木花」まではメイプルホールから警察署に抜けて行けますが、この時点ですでに暴風でビニール傘は裏返って深海の透明なイカかタコみたいな形になっていました。



「ばきりノす」は女性二人のアカペラ・デュオ。
このブログを始めたのが2006年の正月からですが、そのときにファーストアルバム『色なき空と、あをい月』の事(古い記事)を書いたきりだったのですが、最近セカンドアルバムがリリースされたようです(ばきりノすHP)。

今日の会場のお花屋さん「木花」はいつも何気なく通りかかって店前の花を眺めたりしていただけでしたが、今日は店内が片付けられてライブスペースに。
といってもPAがあるわけではなくて、「ばきりノす」のお二人は生の声でアカペラでパフォーマンスしてくれました。最初外の雨風の音がかなり気になったけれど、お二人ともよく通る声でだんだんと引き込まれていった。聴いた事のない人に説明するのは難しいですが、童謡とメレディス・モンクが混じったようなピュアな歌といったらいいのか(どうなのか)。

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「ばきりノす」が終わったので、雨風がさらに激しさを増す駅前商店街から瀧道の「橋本亭」へ向かう。
瀧道の名店「橋本亭」も、瀧道歩きで毎回通り過ぎてきたものの、お客として入るのは今日が初めて、という私は変な箕面原住民です。
店に入ったら、藤田陽介さんの前のアコーディオンコントラバスの女性デュオ「kiripee」の演奏の途中でした。

席に着いたのとほぼ同時に曲は「ナーダム」!でも「おおっ」とか声が出ていたのは僕だけでしたが…。ポルカやオー・シャンゼリゼや、良い選曲でした。
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次は藤田陽介さん。
僕はこれまで藤田さんのライブを二回観ているみたいです。

冬のコモンカフェでの冷たく張詰めた空気の中で鳴る自作パイプオルガン「くだなり」とそれを演奏する藤田さんの姿に目と耳を奪われました。でその年を越してすぐに阪急十三の銭湯の広い脱衣場で鳴る「くだなり」のまた違った鳴りに感動したりした。
今日は地元の瀧道の名カフェ「橋本亭」で藤田さんの演奏を見れるというのが、なんとも幸せ。店の外の雨風はさらに強くなっていましたし、橋本亭の下を流れる箕面川の水音も次第に意識にのぼりそうな気配でしたが、「くだなり」の密やかなドローン、そして藤田さんの歌唱はそういう外の要因と混じり合って、雨風の音の音楽のようにして聴こえてきた。結果的に場処も天候も自分としては最高のロケーションだと思えてしまった。


藤田陽介さんが夢に見たそのままに作り上げたという「くだ鳴り」は、もはやパイプオルガンと原理は同じでも様相は全く違うんじゃないかと思う。藤田陽介さんの演奏を全ては知らないのだけれど、これまで観た三回とも、PAシステムには頼らない、会場の音の「鳴り」を活かした生演奏だった。楽器も手作りかつ自分でデザインしたものだし、ふいごのハンドルを押しながら、声明というかトゥパ風というのか瞑想的な歌も歌う。この歌のあるフレーズが、こうやってエントリーを書きながらも、上等なキューバ葉巻の残香みたいに容易に去らずに頭のなかでリフレインしている。既存の音楽や音楽の制度(「楽器」や「電気」を含む)に殆ど頼らずに自分の身体から発せられる/責任を持てる範囲で最大限に深い事をしている。
「くだなり」の音は自分にはそのように聴こえる。

ふいご。ふいごの上に、いつも平たい形の石がいくつか置いてある。重石だと思うんですが、この石の形も含めて徹底しているなあと勝手に考えています。

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「Mnohva」で観たのは最初に決めていた通りこれだけ。それでも自分には、普段の地元の光景を変えて見せてくれる有意義なイベントでした。主催者さん来年も是非開催してください!
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藤田陽介さんのパフォーマンスも終わったので、止む気配のまったくない雨風のなか、頭にタオルを巻いて自宅まで徒歩。隣の祖父母宅の雨樋から水が踊っていた。