ロンドン➂Vortex Jazz Club2・3日・滞在後半
ロンドン旅行の後半をまとめました。長いです。
【19日(日)】
7時半起床。ホテル飯。クリーニング出し(日曜だったので月曜渡しになるとのこと)。
ニュースによると今日も雨降らず快晴とのこと。朝からHydeParkを散歩。次の日から曇りになったので結果的にこの贅沢な朝の散歩もこの日が最後になった。
この日は鞄にR09も入れて出てきたので、朝のHydeParkの音をREC。樹々の梢のざわめき、そして豊富な鳥たちの鳴き声。
HydeParkの池にはこれだけの種類の鳥がいる。
寝てます。
寝てますね。
ロンドン市内のレンタサイクル。市内にこういうスポットが一杯設けてあって、好きなスポットで自転車を借りて他のスポットで自転車を返す事ができます。僕は利用しませんでしたが。
*
Hyde Parkを出たら、Oxford St.からRegent St.へ。今日はお土産類を買い物するつもり。10時前なのでどこもオープンしていないのでただの散歩になった。Piccadilly CircusからShaftesbury Avenueでガイドブックに載っていた昼飯を食べる店を探すが中々見当たらない。疲れてチェーン店のカフェ「COSTA」に入るが、トイレのロックが自動的に二重になっていて自分で開け方がわからず、店員に出してもらう騒ぎに。旅の恥はかきすてでございます。
インターネットカフェで午後に行くつもりだったHonestJonsRecordをGoogleMapで調べる。ロンドンのネットカフェは、受付に言ってPCを一台立ち上げてもらってから使う。日本のネットカフェに比べたら、本当にネットだけという感じ。
11時までネットカフェで過ごしてShaftesbury Avenueの中華街に戻り、ガイドブックおすすめの大衆中華に入る。日本人向けの味と書いてあったがどうも誰向けでもない気がしてしょうがない内容だったので落胆。
この後、SOHO〜Covent Garden辺をウロウロする。
SOHOSquareで辻説法。紋切型の「悔い改めねば、この世は終わるぞ」的な事を叫んでいる。そばで卓球をやってるカップルがいたが、上半身裸の男の方がこの説教にいちいち腹をたてて「本当の神なら滅ぼしたりしねえ」的な事を大声で野次っていた。女の方はさして気にしてもいない風だった。説法と野次というのは別に特異な事でなく日常の風景である様子だった。
予報に裏切られて雨(ニュースでは雨を「Showers」と言っていた。爽やかでいい)に降られる。予報が間違った事は次の日の新聞にのっていた。
傘を買いに走り込んだトルコ系の人の店でWIREの最新号を買う。市内にはロンドン道案内をするおばさん達がいる。ちゃんと制服を着ているので給料が出ているらしい。市内の地図がいたるところにあるので便利だが、そのひとつの前に数分立っていると間違いなくおばさんの一人に「どこ行くの」と声をかけられる。「トワイニングに行きたいんだけど」「こう行ってこうだけど、今日は日曜だから休みかもよ」「でもガイドブックには日曜もやってるって書いてありますよ」「あ、そう」。
濡れた街路。道案内おばさんが「店の近くにとても美しい教会があるわよ」と教えてくれた教会。
「トワイニング」本店をやっと見つけた。お土産用に紅茶をたくさん買うと、Teaバッグを大量にオマケしてもらえた。
謎の集団。
またもピカデリー周辺。
朝通過したリージェントSt.に戻り、CAMPERで自分用に靴を購入。
暑くて汗だくのうえ、荷物が増えたので、一旦ホテルに取って返して荷物を部屋に置き、シャワーを浴びる。
ところで、U2の歌で「Where the streets have no name」というのがあった。
とてもいい曲で、プロデュースしたBrian Enoらしいオープニングから立ち上がってくるエッジのギターカッティング、それからボノの歌まで全てが雄大で、今でも脳内反芻すれば思わずメロディーを口ずさんでいる曲だけれども、これまで一度も歌詞にピンときたことがなかった。
日本には名前のついてない路地なんて山ほどあるからそう思うのだけれど、こっちに来てみてガイドブックの通りだとわかったのは、ロンドン市内ではどんな細い路地にも名前が付いている。便利だけれどどこも歴史があるというのは、それが反転すれば疎外感というか圧迫感にもなるのかもしれない。息苦しさというか。「路地に名前がついていない場処へ行きたい」という告白は、もしかしたらそんな土地を知っているからこそ出てきたのかもしれないなあ、とシャワーを浴びながら思った(ま、違うかもしれませんけど)。
*
昼からは自分の趣味。音盤探しに。
ホテルからすると市内方向とは反対のノッティングヒルに向い、有名なPortbello Marketへ。古地図なんか露店が並ぶ中、タルボットロードにあるのが、ラフ・トレード・ショップ。
地下がVintageのVinylコーナーになっていて、充実していた。盤は一枚大体3000円〜4000円。たしかに日本に比べて安くは決してない。
ハリー・バーチの録音や、オリジナルDADAの実演もの、Fred Frithも参加したLindsay Cooperの『RAGS』は、後に映画『Orlando』を監督したSally Potterも参加している盤。
フリージャズではトロンボーン奏者のAlbert Mangelsdorffの盤(Don Cherry,Elvin Jones,Lee KonitzなどとのDUO演奏が収録)。極めつけは、ずっと探していたAlvin Lucierの『I am Sitting in the Room』。
レジに持っていくと、お兄さんに「クールなアルバムを選んだねえ、特にこれ(と Lucier盤を指す)、昨日中古で入荷したばっかりなんだよ。あんたはラッキー!」。
盗難が多いのか、棚にあるのはジャケットだけで、レジに持っていくと後ろの倉庫から盤を出してきて客にジャケットと相違ないか確認をさせる方式。さすがに高い買い物をしている気分になる。あとはラフトレードトートバッグ。買うつもりなかったが、この日の午前中にCovent Gardenで東洋系の女の子が持ってるのを見てやっぱり欲しくなってしまったのだった。
もう一軒、同じくポートベロー・マーケットのどん突き辺まで行ったところにあるHonest Jons Record。
http://www.honestjons.com/shop.php
店内はラフトレードより雑然としていた。黒人の店員が僕が入るなり音楽をかけはじめて「Woo,I like This!」とかいってノリ始めたのがおかしかった。

- アーティスト: Various Artists
- 出版社/メーカー: Astralwerks
- 発売日: 2003/01/28
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Kelan Philip Cohran & the Hypnotic Brass Ensemble
- アーティスト: Kelan Philip Cohran & The Hypnotic Brass Ensemble
- 出版社/メーカー: Honest Jon's
- 発売日: 2012/06/05
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Give Me Love: Songs of the Brokenhearted - Baghdad
- アーティスト: Various Artists
- 出版社/メーカー: Honest Jon's
- 発売日: 2008/08/05
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- アーティスト: Moritz Von Oswald Trio
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- 発売日: 2012/06/18
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Honest Jon'sの紙袋。
成果はあったという感じで、早くもパブに入ってホワイトペールエール。

ジャンク・ロンドン。右下のフラスコのようなものに、カラフルな液体がボコボコ泡立っているのが「バブルティー」らしい。いらないなあ…。
18時頃、再び荷物を置きにホテルに戻る途中、前日に閉店と断られたホテルの下のスパゲティハウスで早めの夕飯。
king prawns(エビ), white wine, garlic, chilli & wild rocket(ルッコラ)のパスタと、赤ワイン、スパークリングウォーターとチーズガーリックトーストで3000円くらい。味はそこそこだと思うが、夕べ食べられなかったのと昼があれだったもんでかなり美味しく頂いた。
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夕方になるがまだまだキツイ陽射しは衰えない。ロンドンでは大体19時半くらいまで明るかった。
今夜もVortexJazzClubへ。
この日から3夜連続でイギリス即興音楽の重鎮ギタリスト、John Russellが開催する即興セッションで、その1夜目。
Fete Quaqua 2012@Vortex Jazz Club
奏者の面子は以下の通り。
- CHRIS BURN (piano, electronics, trumpets) UK,
- LAWRENCE CASSERLEY (electronics, sound processing) UK,
- NINA DE HENEY (bass) SWEDEN,
- HANNAH MARSHALL (cello ) UK,
- ADRIAN NORTHOVER (alto and soprano saxophones) UK,
- THOMAS ROHRER (rabeca) BRAZIL,
- JOHN RUSSELL (guitar) UK,
- SABU TOYOZUMI (drums, percussion, erhu) JAPAN,
- LISA ULLEN (piano) SWEDEN,
- UTE WASSERMANN (voice) GERMANY.
豊住さんがいる!
この面子で最初は10人で一斉に即興。それから10人の中から2・3人ずつの組み合わせで15分程度の即興セッションを4つくらいやって、最後にまた10人で、という構成。
やはり前夜とは客層がはっきりと異なっていた。
Vortex Jazz Clubの下の店の音が結構響く。完全な防音ができるような作りではないから、二人くらいの静かで親密な即興になると結構気になってしまう。それでも前日土曜の夜ほどの騒ぎではなかったので、そういう夜は特に電化バンドを入れる店の方針なのかな?と思った。たった3日でわかるはずもないのだけれど。
John Russellと豊住さん。
これは2日間続けて観た感想ですが、John Russellは、Derek Baileyの単純な追従者ではない(当たり前だ。こんなことを書いたのは、自分自身が乏しい情報からそんな風に先入観を抱いていたからに違いない)。
ベイリーが、徹底的な切断のヴァリエーションで神業を展開するのに対してラッセルは、切断に聴こえようと、一つのセットの中でそのセット内でのタッチの展開がある。通常のJAZZ奏法の欠片も出てくる。
ある種の柔和な丸みのようなものがそこからきているのかもしれない。しかしそれは中途半端なものではない。ラッセルの音盤だけに接して、ベイリー程のギリギリ感が無い、中途半端と感じる人がいるのはそこかもしれない。是非生を聴いて下さい。
それから、豊住サブさんの繊細な表現力。一つ一つの音が際立っていた。
特にブラシでのシンバルへの一刷毛一刷毛の繊細さ。それだけで、何も衒わない、音によってこそ表現されるニュアンスをたっぷりと含んでいた。
Vortex Jazz Club店内。
Vortexの壁の至る所に、アーティスト、GINA SOUTHGATEが演奏するミュージシャンを描いた作品が飾ってある。
*
帰り、バスでまたWaterlooまで。そこからタクシーを拾う。
夕べ行先を「Kensington Courtまで」と言ったら運ちゃんの反応が鈍かったので「RoyalGardenHotelまで!」と言ってみたら、さすがに運ちゃんの反応がヴィヴィッドで、しかもこちらが金を持っている事もわかって安心するらしかった。でも手前で降ろしてもらうんだけどね。
ホテルに帰って夜中すぎにテレビを見ていると、昔のバットマンが。キャットウーマンか、これ。
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【20日(月)】4日目。泊まりは最期の日。
新聞を見ると、昨日キャスターのお天気予報が外れたことが出ている。
あと、『トップガン』の映画監督トニー・スコットが飛び降り自殺したとのニュースも流れた。脳腫瘍があったらしい。『トゥルー・ロマンス True Romance (1993)』は何度も観た思い出のある映画だ。正直その後の作品は適当に観ていた。
めし、最後のクリーニングをお願いして、午前中にKensingtonからChelsea方面に散歩。街並みが落ち着いていて良い。
これはホテル裏のKensingtonの町並み。
その昔、エルヴィス・コステロは「チェルシーになんて行きたくない」と歌った。
たしかにギザギザしたこの歌はこの界隈の雰囲気には似合わない。
チェルシー・スクエア。
LOVEな家。
リバーサイドはロンドンではエンバンクメントというのでした。川沿い好きにとっての発見。
オスカー・ワイルドの家。
Kings Road。パンクスがこの通りに溢れていた時代があった。そんな面影はひとつもない普通の街角。
無理せずにチューブに乗って再度サイズワース駅へ。
モンドリアンよりも、モネよりも、マルガリータ、とはTateModern周辺らしい、のか。
TateModern近辺の「LEON」というカフェで朝飯食い直し、ソーセージサンドウィッチとカフェラテ。TateModernで、2日目に買わなかった書籍類をまとめ買い(一番下にまとめてあります)。日本に送って貰う。
一旦ホテルに戻って荷物を置き、ついでに明日のチェックアウトに向けて荷物のまとめ。
ピカデリーサーカスに出て見るがやはりここの雰囲気は好きでないと再確認。インターネットカフェが多いのは助かるけども。

- アーティスト: Bonzo Dog Doo-Dah Band
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遅い昼飯を、ピカデリー周辺、チャイナタウン前のスコティッシュステーキハウスで、フィレ肉を。しかし、ジューシーの対極にあるステーキだった。
それからチューブを乗り継いで、この数日の日課になったダルストンキングストン。
しかし、まだVortexには早いので、そのままオーバーグラウンドを市内方面に数駅をWhitechapelで降りる。



駅前の通りは移民社会。
WhitechapelはJack the Ripperで有名になった町だが、Alan Mooreの『From Hell』のアーバナイン刑事みたいにここでビールが飲みたかったのである。

- 作者: Alan Moore
- 出版社/メーカー: Knockabout Comics
- 発売日: 2000/08/12
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そのお店「Blind Beggar」はロンドンでも有名なパブらしい。トイレが殆どストーンズの「ベガーズバンケット」のジャケだったのも良かった。

2駅ほどオーバーグラウンドで戻りHoxtonから徒歩でKingsland Rd.をDalstonまで徒歩で遡る。
途中、カフェOTOを探すがまったく見つからずウロウロ。どうも頼りにしていたガイドブックが古かったらしい。途方に暮れて住宅地にへたり込む。あとから調べたら数本上の通り、Ashwin St.にあるようだった。

Dalston Kingslandの映画館。「パルプ・フィクション」と「バーバレラ」の併映なんていい感じだと思った。
Vortexの開場までの時間潰しに、Dalston Kingslandのバブでまたギネス。これで最後のパブビールだなあと思いつつ、三十分くらい時間かけて飲み干した。
そのあとターキッシュ料理屋でケバブをひとつ、トマトと一緒に包んでもらう。Vortexまで食べて歩くが、まちがいなく生涯食べた1番美味いケバブ。肉の薫りが口に溢れる。
バブの前に覗いたネクストロケーションだかなんだかという小さなレコード屋。通りの雰囲気にあったくだけた雰囲気でありながら、少しずつ選び抜かれた棚作り。ThisHeatのメンバーだったGareth WilliamsのFlaming Tunesのアナログ、Codainのリイシュー、Dolphines into the Futureのカントアーキベラゴ、数枚のPulse Emitter…全部欲しかったが、Tate Modernで画集に使った金額を思い出して、打ち止めに。ロンドンのレコード屋では盤は抜いてあるのはラフトレードだけではないと知った。店員さんにサンキューと声かけして店外へ。
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Fete Quaqua 2012@Vortex Jazz Club2夜目
店の前で談笑するミュージシャン達。
ADRIAN NORTHOVER (alto saxophone) とNINA DE HENEY (bass) 。
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まとめ:Vortex Jazz Clubとその周辺について
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心配だったが、あっけなくすぐ見つかった。本当の駅近だった。ただし店の前は広場になっており、そこが黒人たちの溜まり場となっていて、ゴツイ人たちが酒を飲みながらゾヨゾヨしているので最初ちょっと怖いなと思っていた。
結局、ロンドン滞在のかなりの部分をこのVortex付近で過ごしたことになるけれど、ロンドンのこの辺りが、1番馴染んだ。
この周辺、ユニセックス・サロン、と謳ったオープン床屋が多数存在している。初日にVortexの側のそれで、もろにごついくろいオカマさん達が屯って大声で話しているのを見てそういう文化か、と納得していたら、最後の日、普通の男の子が散髪してもらってたので男女両方という事なのかなーと考え直した。
1日目のマネージャーと2日目、3日目のマネージャーが違う人だった。1日目の人は初老でキッチリした見なりの英国紳士で、この人はなるほど、ストーンズのCharlie Wattsと知り合いでもおかしくないなあと思った(Vortex Jazz Barは2004年頃にいったん閉店しかけたが、Charlie Wattsたちの尽力で移転して再開された、というような事が「地球の歩き方」に書いてあったんですが…本当なのかな)。そして、Russellのイベントはスキンヘッドの大男だけど優しい人だった。
最後のRussellのイベント、生演奏で録音しているので演奏中はエアコンを切っていて、これが客もミュージシャンも辛そうだった。僕も、1日目の途中で意識が朦朧とした時があった。
中には、日本人の僕が見ても場違いなカップルやふたり連れの女の子たちが来ていたけど、案の定、1セット聴いて帰っていった。名だたるVortexに来て見たもののやってる音楽の意味がわからなかったんたろうか。大阪でも時々みるが、何処にでもあるんだな、こういう事。
2日目の最期、Russellがお約束のメンバー紹介を赤い顔でしたあと、いつもマナーなのか自分の名前は言わないのだけれど、この日の最後は、一通り紹介を受け終わったミュージシャンたちが一斉にラッセルの方に手を挙げて、「ア〜ンド、ジョージ・ラッセル!」とお客の拍手を誘い、和やかに終演していた。地元のミュージシャンたちの仲の良さに加えてRussellへの敬意も窺えて、とても良かった。
Vortexで買ったCD、2枚。
【左】John Russellのギター・ソロ集『HYSTE』。【右】John Russell,Mats Gustafsson,Raymond Stridの『Birds』。ミュージシャンが3人もいるのに『Birds』の方がソロの『Hyste』より音が小さい。
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【21日(火)〜22日(水)】
これで最後のビル裏。薄ぼんやりと曇った朝だった。
帰国日、朝、ホテルの朝食は酷いので付近のカフェを探す。Kensington Gardenを反対側まで歩き、Notting Hillを廻って散歩終了。曇っていてひんやりしていて、長袖シャツで調度いい。20°くらいか。
カフェで、エスプレッソダブルと、卵チーズベーコン入りの茶色いクレープ。これが馬鹿みたいに美味い。支払で50ボンド札しかないというと、お釣りがないといって、ウェイターが他のお客に崩して貰って無事支払い。50ボンドって一万円くらい?だがお釣りがないって凄いな〜…。
13:30Heathlow発のBritish Airwaysに乗って英国ともお別れ。
空港のラウンジで食べたほうれん草のペンネと白ワインがまた美味しい。
機内で3時間程眠れたらしい。8時間のフライトで成田に着いたら次の日の朝だ。
成田エクスプレスで新宿まで出て、まずは寿司屋に入った。それからDisk Union巡り。また買い込んだのでこれも郵送してもらう。
東京は35°ということだったが、暑すぎる。いや熱い。日向は光線が強すぎて被爆しそうな気がする。喫茶店(カフェではなく)の店員さんと話をしていると、姉さんは男が何故日傘をささないのか理解できないと本気で言う。そういえば、いとうせいこうもTwitterか何かで日傘をさすのは日陰を連れて歩くのと同じだから滅法暑さに効くのだと書いておられた憶えが。脱原発とともに男の日傘をも推進しなければなるまい。
この喫茶店で、Twitterを見ていると、今夜大阪の北堀江で高岡大祐さんのトリオ、BrightMomentsのライブがあると知る。急いで「のぞみ」の指定席を新宿で購入して東京駅に向かうが、何故か山手線に乗ってしまって指定の「のぞみ」に間に合わなくなってしまった。後続の「のぞみ」の自由席に座れたからいいようなものの。
新大阪のロッカーに荷物を放り込んで堀江のFuturoへ。
何とか1セット目の真ん中あたりから観ることができた高岡さんの大阪での目下のメインバンド「BrightMoments」。
チューバの高岡さんに有本羅人さんのトランペットと橋本達哉さんのドラムのトリオ。僕はこのトリオを観るのが初めてでした。高岡さんによると、「五線譜を使わない作曲と即興」の混交。
新曲で「それぞれの楽器の音が重ならない出音」の曲というのがありました。といっても難解なところはひとつもない。高岡さんは、音楽を生け捕る方法を見つけた/見つけつつあるのだなと感じました(「ちゃうわ!」と言われるかもしれない)。奢らず媚びず安住せず、良い音楽を真剣に求めていく高岡さんのようなミュージシャンを僕は他に知らない。
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というふうに、帰国日まで音楽を目いっぱい自分なりに楽しんだロンドン旅行になりました。
心残りがあるとすれば、カフェOTOだけど、今回は、Royal Alber tHallでのケージを目標に、先に旅行日程を決めてしまったからしょうがない。今回はこうなったけど、来年あたり今度はカフェOTOを目掛けてロンドンに来たい。出来れば。
それまでに音楽が面白くなくなっている、なんていう可能性は極めて少ないんだから。
最後の日の朝の散歩で拾った木の実。
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まとめ:ロンドン雑感
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イギリスは涼しいなど、誰が言ったのか大うそだと思った。少なくともロンドンは暑かった。
宿のある、Tube(地下鉄)District線のHigh Street Kensington駅を降りた瞬間に後悔した。着いた途端に、大阪でも殆ど味わった事のないような強い日射し、すでに西陽に近いものが、顔を容赦なく灼いて痛かった。
このあと数日、ロンドンを日中歩いて過ごしたけれど、鼻と唇が灼けてヒリヒリした。着いた日と次の日は三十度以上。2日目は三十二度、雨は降らないとキャスターは言っていたが、コヴェントガーデン付近で見事に降られた。
3日目にやっと曇って、気温は26度くらいまで下がった。途端に人々は厚着になった。ロンドンの人は暑がり寒がりで中間がない。それを初日に用心してジャケット着てきて死にかけた自分が言う資格はないのだが。
ロンドンの雲は途切れ途切れだが、上空に来ると必らずいくらかは降る、そんな感じ。
特にWhitechapelからKingsland Rd.をDulstonまで遡る間は、完全に有色人種が優勢。ロンドンは矢張り世界の中心なのかもしれない。アフリカン、ターキッシュ、インド、白人、アジアンが入り乱れていて、何とも居心地がいい。日本人にロンドンの人々の度量は無いだろう。
ロンドンの交通機関サービスで共通して感じたのは、最小限の制御で、あとは乗客が自分で自分の面倒をみる。
Tubeは、世界一古い地下鉄ということだけあって揺れが酷い。Tubeは大抵クーラー無し(あるいはあったのかもしれないが、少なくとも効いてはいなかった)。Overgroundはクーラーがきいていた。Overgroundで噂には聞いていたが体験するまで信じてなかったのは、駅に着いても、自分でドア開閉ボタンを押さないと最寄りのドアが開かないという事。駅に着いたのにドアが開かないのである。故障かと思う。
バスも最高で、乗る意思表示は派手でないと、まずバス停自体に停車してくれない。
駄目押しのように、横断歩道も「渡る」ボタンを押さないと信号は変わらない。押すのが面倒という人は勝手に渡ればいいがもちろん結果は自己責任。一応、自己責任用というわけではないだろうが、「LOOKLEFT」、「LOOKRIGHT」と路面に書いてある所もある。
何がいいたいのかというと、無干渉自己責任は徹底すれば割と上手くいってるように見えるということ。ロンドンの交通事故件数が、例えば大阪市内と比べて、どの位なのか知らないが、割と上手くロンドン中が機能しているように、短期滞在の日本人には見えたのです。
自由というのがちょっと言いすぎなら「自分勝手」がデフォルトだから、その分、礼儀正しくないと回らないってことかなと思った。
チューブの車内や狭い通路、エレベーターなんかで、ちょっとぶつかりそうになった時や進路を塞いじゃった時など、必らず微笑んでアイムソーリーとかサンキューと皆言う。これはとても気持ちがいい。
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まとめ:お土産の画集/ペーパーバック@Tate Modern
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Tanguy Calder: Between Surrealism and Abstraction
- 作者: L & M Arts,Alexander Calder,Yves Tanguy,Susan Davidson
- 出版社/メーカー: L & M Arts
- 発売日: 2010/07/31
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そういえば、カルダーのモビール彫刻は、Tanguyの絵画の中の、生物とも静物とも腑分けできないバイオモーフィングな形態たちを空間にそのまま引きずり出したように見えないこともない。
もっとも大きな、かつ双方にとって魅力的な違いは、Tanguyがあくまで伝統的な絵画空間の中に独特な形態を配置することで形而上的で超現実的なドラマを発生させたのに対して、カルダーの空気の流れに合わせて動きもする形態達は底抜けに明るく軽く、空間自体を抽象化したという点だろうか。それを欧州とアメリカ大陸との空間性の違い、と言ってしまうのは何とも勿体ない話であり、欧州において内面的なものとして凝集されたシュールリアリスムがアメリカ大陸の風土においては爆発的に外面化・拡張し、イーゼルをほぼ物体として考えるフォルマリスムを要請するようにもなった結果、抽象表現主義と呼ばれることになった、くらいは嘯いていおいたほうが良いだろう。
本書は、二人の芸術家を通して、そうした大きな流れまで示唆してくれる画集になっている。

- 作者: Eric Banks,Ann Goldstein,Richard Hell,Jim Lewis,Hans Werner Holzwarth
- 出版社/メーカー: Taschen America Llc
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迫力ある大冊で、これが未だ自室で居場所が見つからないでいる。いつかはWoolの作品集が欲しかったし何種類かあるのは知っていたが、この充実ぶりを見て本書しかないと思い切った。Woolのこれまでの創作の全貌が見えてくる。初期から一貫した画業がハイクオリティの印刷で一望できるのもちろんだが、Woolの撮る写真について、Richard Hellが寄稿していたりするのも面白い点。

Bridges: 34 Crossings on the Thames
- 作者: Nigel Peake
- 出版社/メーカー: Nigel Peake
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上空からロンドンの陸を二つに分かつテムズ河を見ると、34本の橋によって二つの陸地は縫い合わされているように見える。
という鮮烈なイメージを叩きつけながら、手に取って可愛い感触の小冊子が、Nigel Peakeの新しいドローイング集『Bridges』。
テムズ河に架けられた34本の橋のストラクチャー(構造)を元にした簡潔な線によるドローイングが慎ましい色彩で彩られていてページを繰るだけで楽しい。こうして見ると、一本一本の橋がまったく異なった特徴的な姿をしているのが面白い。ロンドンのお土産に最適。

- 作者: Roger Cardinal,Gwendolen Webster
- 出版社/メーカー: Hatje Cantz Pub
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Robert Rauschenbergの正式な展覧会が英国で最後に開催されてから30年後の2011年に、エジンバラのRoyal Botanic Gardenで開かられた展覧会の画集。緑に囲まれた白く明るい一軒家の中に置かれた作品たちは、堂々としながら同時に存在の慎ましさを持っていなければ美しくはない、ということを示している。

Jimmie Durham: A Matter of Life and Death and Singing
- 作者: Guy Brett,Bart De Baere,Richard William Hill,Jimmie Durham,Anders Kreuger
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Introduction to Antiphilosophy
- 作者: Boris Groys
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- 作者: Patti Smith
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Sinister Resonance: The Mediumship of the Listener
- 作者: David Toop
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Wanderlust: A History of Walking
- 作者: Rebecca Solnit
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- 作者: Rebecca Solnit
- 出版社/メーカー: Verso
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『Wanderlust: A History of Walking』は「歩く事」の本。それは80歳の老婆のUSA徒歩横断であったり、ルソーの『孤独な散歩者の夢想』であったりもする。『A Book of Migrations: Some Passages in Ireland』は、Solnitの遠い祖先が暮らしたアイルランドを訪れたもの。
*
下の二冊は、TateModernのそばの美術関係古書店アートブックスで。

『With Hidden Noise』。表紙写真のデュシャンの同名のレディメイド作品『秘めたる音に』にオマージュを捧げた企画展の図録。『秘めたる音に』は、ネジ留めされた二枚の鉄板で毛糸玉を挟んだだけのレディメイドだ(レディメイドとオブジェの境に位置するのかもしれない)が、この毛糸玉にはパトロンに頼んでモノを入れてある。何かが入っているのかはデュシャン自身も知らない。ただ、毛糸玉を振るとカトコト音がしたためにこのタイトルになったそうだ。 1ポンドくらい

ポール・マッカートニー&ウイングスの『レッド・ローズ・スピードウェイ』のジャケットを手掛けたEduardo Paolozziのコラージュ小冊子 これも1ボンドだった。
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