みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

レイ・ブラッドベリ

nomrakenta2012-06-07

レイ・ブラッドベリ死去のニュース。
http://jp.techcrunch.com/archives/20120606goodbye-ray-bradbury/

ブラッドベリの小説を全て読んできたわけではない。
小学生から中学生になるまでの間に、短篇集と『火星年代記』を読んだ。もうひとつの代表作『華氏451度』は読んですらいなくてトリュフォーの映画を深夜テレビを録画してやっと観たというレベル。
SFというものはブラッドベリの短編かオールディスの『地球の長い午後』、別枠でヴォネガット、日本人なら安倍公房の『第四間氷期』か星新一ショートショートだと思っていたから、他のSFを読むようになってから、みんなずいぶん理屈っぽくてイメージが伝わってこないものだなと困惑した憶えがある。
学校で英語の授業が始まった頃、初めて手にとったブラッドベリの短篇集「ウは宇宙船のウ」の原題ってどんなだろうと思ったら、原題は「R is for Rocket」という簡単な表現だった。「ウは宇宙船のイニシャル」という日本語での意味から遡及すれば「for」という単語に実に様々な意味が派生するんだなあと思ったし、その幅広さを3文字で担う「for」やそれが普通な英語というのはシンプルで機能的で綺麗な言葉だなと思って、それから少し日本語訳と英語の文章を照らし合わせてみるのが楽しくなったのかもしれない。そんなわけでブラッドベリの小説は僕の英語を読む体験の基礎の中に少し含まれてくれている。

火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)

火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)

子供にも「アメリカ」自体の暗喩だと感じ取れた『火星年代記』最後の数行。『火星年代記』にはドラマ版があるらしくて10年くらい前に紀伊国屋でDVDボックスがあるのを見つけて随分迷ったけれど結局観ていない。
紙が自然発火する温度をタイトルにした『華氏451度』。
華氏451度 (ハヤカワ文庫 NV 106)

華氏451度 (ハヤカワ文庫 NV 106)

書物を読むことも所有することすらも禁じられた世界でレジスタンスが人里離れた土地で古典を記憶し暗唱しひとりひとりが一冊の書物になる…このイメージの鮮烈さは一生ものだった。『図書館戦争』というのがどういう話か知らないが、ブラッドベリのこの作品ほどものだろうか(関係無いか…)。

晩年は猛烈なインターネット嫌いだったブラッドベリ
予算削減で閉館の危機に瀕した図書館を擁護する2009年のインタビュー↓。
http://www.nytimes.com/2009/06/20/us/20ventura.html?_r=1

図書館が私を育てたんだ。私は大学なんて信じていない。私は図書館を信じている。なぜならほとんどの学生はお金を持っていないのだから。私が高校を卒業した時は大恐慌の時期で、私たちはみんなお金なんて持ってはいなかった。私は大学に行けなかった。だから私は週に3日図書館に通ったんだ。10年間ね。

インターネットは巨大な狂気だよ。Yahooが8週間前私に電話してきた。私の本をYahooに載せたいって言うんだ。何て言ってやったかわかるかい?くそったれ!Yahooもインターネットもくっそたれ、さ。インターネットはただの気晴らしに過ぎない。無意味だよ。現実じゃないし空中か何かに漂っているのさ。

しかし、その著書「華氏451」も電子書籍化、という記事がこれ↓。
http://jp.techcrunch.com/archives/techcrunch-com20111130ray-bradbury-finally-oks-digital-version-of-fahrenheit-451/
これには何の意味があるんだろう?

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

冒頭の『こびと』が印象に残っている。サーカスのガラスの迷宮で起こる夢のようで悲痛な出来事が少女の目を通して書かれた秀作短編。
ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)

ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)

『霧笛』はクラシック怪獣映画の原作になった(違う短篇集だったかな?)。
『長雨』は降り止むことのない雨の惑星に降り立った軍隊の顛末で、ものすごく映像的に感じた。



華氏451 [DVD]

華氏451 [DVD]