みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ブギーとドローンのみちすじ:秀作コンピ2枚

DR. BOOGIE Bear Traces: Nuggets From Bob's Barn CD

Bear Traces: Nuggets from Bob's Barn

Bear Traces: Nuggets from Bob's Barn

キャンド・ヒートのBob Hite(通称Bear…見たまんま)が遺した究極のブギー(ブギーそのものやブギー以前の)音盤(SP盤ドーナツ盤)のコレクションを開帳したコンピで、すでに続編が出ているらしいのだけれど、これが贅沢すぎる内容。
曇った音質のなかで野性と洒脱がほとばしる各種音源のいちいちが素晴らしいのはもちろんですが、Bob Hiteがこれらを聞き狂っていたことを想像すると、Canned Heatの音楽がより立体的に捉えられてくるわけで、名曲「On The Road Again」の背後の豊穣な音楽的ルーツを聴き取れるような気もします。

Bob Hiteはこの映像ではドラムの後ろで巨体を揺らしてノスノス踊っているだけなんですが…。
On the Road Again-Best of

On the Road Again-Best of

最初は、ぶっといブルースを演っているドアーズ(ライブ盤のボ・ディドリー「Who Do You Love」のカヴァーとか)が好きだったけれど、Canned Heatを知ってしまうとやはりこちら、になりました(二十歳くらいの話…)。
Houndog

Houndog

同じくCanned HeatのメンバーだったMike HalbyとLos LobosのDavid Hidalgoが組んだ一枚。


VA Roots Of Drone 2CD

Roots of Drone

Roots of Drone

たまにはドローン耳をテストしましょう。
ジャケのイーディ・セジウィックの写真は何故に?という違和感が残るのは確かだとしても(Velvets不在だし)、これも秀作コンピかと。
「ドローン」というと、通奏低音であって、ミニマルドローンといわれるものはその用法の一部を限定拡大したものなのだけれど、反射的に出てくるのはPauline Oliveros、Tony ConladやEliane Radigueなんかの豊穣だけれどもある意味ハードコアなドローン音楽じゃないだろうか。それほど音楽においてドローンという言葉はある種代表的なの音像イメージを確立されているような気がする。本番を手にとった時、まずそんなことを感じていました。聴いてみると、この2枚組コンピは「ドローン音楽集」というだけではありませんでした。
自分の念頭にあっったような末端肥大症(懐かしい響き)を和らげてくれるだけでなくて、ドローンを切り口/より糸にして(縦糸なのか横糸なのかは問わないとして)豊富な音源に触れさせてくれる出来。
ワーグナーからブルース、ラ・モンテ・ヤングはもちろん、ジャチント・シェルシ、チベット僧の歌唱、ラヴィ・シャンカールサム・クック…。ボ・ディドリーが両ディスクに一曲ずつ入っているのは納得。VelvetsやTony Conladが入っていないのはやはり気になるが、これはラ・モンテが入っているからいいでしょ、といったところなのかと。
こういった中に、ハイドン交響曲が収められていると、たしかに耳はそれまで気が向かなかった導入部の通奏低音にフォーカスされ、そこからハイドンの建築が立ち上がってくるのは確かに興奮を覚えてしまう体験。ハードコアなドローン音楽集ということではなく、ドローン耳から音楽の世界を拡げていくという編集意図は成功していると思えます。
ここに集約されたクラシックや伝統的な歌唱やポップソングをドローンという切り口で聴いていると、およそ音楽でドローンの効用を使用していない音楽を見出すのは難しいだろうな、という教科書的な認識(それとて興味深い)とドローンの根源、と謳っているのはいささか不明瞭でもしかしたら「Root」というより「Route(道筋)」と言いたかったのかもしれないなと思ったりも。
上に挙げたBob HiteのDR. BOOGIEコンピと合わせて聴くともっと面白いと思います。実際、ここ1週間くらいはこの2コンピの間を常にウロウロしながら聴き飽きが来ない日々です。