みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

テリンガ・春の京都〜湯浅湾〜琵琶湖疏水のながれ〜ロルフ・ユリウス

nomrakenta2012-04-12

テリンガ
3月の末日。
一か月ほど悩んだ末、「テリンガ」というパラボラ集音マイクを入手しました。スウェーデン製のマイク。→メーカーのサイト
雨の日の土曜日にベッドで眠り込んでいると、携帯電話が鳴って怒り気味の宅配業者に叩き起こされて荷物受取。
さっそく雨の音を録音してみました。

データをノーマライズする時、音量をちょっと上げ過ぎたみたいなんですが・・・。
特に、雨音と同時に通奏低音のようにも聴こえる、低い唸りのような住宅地の音(7:30過ぎあたりから薄ら聴こえてくる。生活音が水分でミュートされている、と勝手に考えている)が前から好きだったのですがR09ではほとんど録れなかったのだけれど、テリンガではきちんと録れているのは感動。
モニターしながら録れば、R09も結構思い通りに録れるもんだと最近思っていましたが、さすがにテリンガは、細かい音粒を拾っている。外部マイク無しでのR09録音とは根本的に異なっていて、マイクを振り向けた一帯に蓋をかぶせて音を吸収してしまうような感じがします。それだけにR09のように置いておけば勝手に環境音を万遍なく録っておいてくれるというお手軽感は無く、常に方向を示しておく・能動的に録音する必要があるみたいです(それがパラボラじゃん、という話なんですが)。

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6日〜8日日録
湯浅湾@アバンギルド
6日(金)は退社後京阪に乗って京都の三条まで。アバンギルドで湯浅湾を見る。

よく考えると、難波ベアーズで突然段ボールオシリペンペンズの対バンではじめて湯浅湾を見て、そのあと『湯浅湾LIVE』を聴いてから10年以上経過している。バンドはよりきびきびした曲を演奏するようになっている。その時間を埋めてくれるかのように、セット最後の曲は『みみず』だった。干からびてしまったミミズはその後どうなってしまったのかというと、粉になって空中に舞ってしまったのかも知れない。新しい4曲入りミニアルバム『砂潮(さごしお)』に収まっている新曲『粉化』や『なりそこないの幽霊』を聴きながらふとそう思ったりした。イギー・ポップはお前の犬になりたい、と悶えガナりたてたが、その後の生活がどうなったかを教えてくれる歌は、僕が知る限り湯浅湾の『ただの犬』だけだ。

7日(土)の昼に京都国立近代美術館で開催されるロルフ・ユリウスのシンポジウムに参加したかったし、ちょうど今まで行ったことがなかった南禅寺方面にも朝のうちに寄れるなあと思い、金曜の夜は京都に泊まることにした。
ライブ後、あてにしていたカプセルホテルが潰れていて、代わりに見つけた地下鉄四条駅近くのカプセルホテルは一番高い部屋しか残っていなかったからか、個人的な「カプセルホテル体験」を塗り替える豪勢さだった。
朝、早起きするつもりだったのが、部屋に備え付けの見放題の大画面テレビで『キャプテン・アメリカ』を見てしまって寝坊。チェックアウトの一時間前に起きて出発。

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南禅寺付近・琵琶湖疏水
烏丸から蹴上まで歩ける距離ではあるけれど、朝は楽をしようと、地下鉄で蹴上まで。地上にあがると、南禅寺付近は桜が咲きほこっていた。
学生時代を京都で過ごした筈なのに、このあたりの事は全く知らない。
今、さそうあきらの漫画で『ミュジコフィリア』という漫画があって単行本もいま第3巻まで出ている。これが京都芸術大学を舞台にした現代音楽・青春漫画で、『神童』や『マエストロ』などの音楽ものをものしてきたさそうさきらとしても「よくぞ」という気持ちで読んでいるんですが、この作品で素晴らしいのが、随所に京都の実際の場所やそこの「音」の風景を織り込んでいるところ。
第一巻で先輩に連れられた主人公がはじめて南禅寺境内の水路閣で頭上でトプトプいう流水の音を聴くシーンがあるんですが、これが聴きたくなって南禅寺まで来てみた。
行く前に琵琶湖疏水のことをネットでいろいろ予備知識収集していたら、明治期に衰退し始めた京都のための事業として(エジプトのピラミッドみたいだ)琵琶湖から京都への高低差を利用した疏水の建造・水力発電所の建設ということがあったらしい。明治期は淀川河岸の「湾処」のように、いわゆる「お雇い外国人」による建設工事主導が数多くみられるけれども、この琵琶湖疏水は彼らの手を借りていないらしい(実地調査して図面を書いたのは外国人だったようですが)。

この日の写真は全部とび気味。

正直、人が多いためか、上記のトプトプは聴けず。

ただ、水路閣からダムのほうまで伸びていく疏水はかなりいい感じで流れの音が聴けた。
水音に混じってお寺の太鼓の音(間欠的に聴こえてくる「どうん・・・」という音)が聴こえてくるところが割と特有なサウンドスケープなのかも。



放置(展示?)された土管。中に入って足を踏み鳴らしてみると面白い反響があったのですが、やりかたを間違ったのか録音データが残っていませんでした。このあたりに二本の線路跡のようなものあって桜も咲き公園のようになっている。これはインクラインといって、かつて高低段差を船舶が移動するために使用されたレールだったようす。
南禅寺境内にはほとんど立ち止まらず通り過ぎて疏水を離れたあと、円山公園にかけての道の途中にある、庭園「無鄰庵」にも立ち寄ってみた。ここも『ミュジコフィリア』に出てくる。造園家・小川治兵衛が山形有朋のために作庭した庭園で、東山からの傾斜を利用して疎水を流した造り。
しかしさすがに時候の良い休日で、常時20人くらいの入場者がいて騒がしくて、音を楽しめる状況ではなかった。平日に休みを取って訪ってみるくらいの覚悟が必要だろう。
こうやって疏水から水の流れをたどりながら、円山公園のほうまで下がってくると、桜が満開に近い状態で観光客でさらにごった返してきた。

美術館内のレストランで早めの昼食。テラスの席で食事を待っていると、目の前には、東山から流れてくる濃い緑色の水がゆったり静かに流れるお堀。それを彩る満開の桜。時折、観光客を乗せたボートが通り過ぎる。京都も十分「水都」なのだと思えてくる。都をめぐる疏水の水を意識しながらお昼を食べるのはいい気分で面倒くさくて一泊しただけですいぶん儲けさせてもらえたようだ。

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ロルフ・ユリウス メモリアル・シンポジウム@京都国立近代美術館


昨年他界したロルフ・ユリウスというドイツのサウンド・アーティストがどれくらい知名度があるのか知らなかったけれど、1時からのシンポジウムには美術館の講堂が満員というわけではないにしてもそこそこの人数が参加していた。個人的には、ずいぶん以前から輸入盤屋でSmall Musicと題されたユリウスのCDシリーズを見かけてはいたものの手が出なかった時期が長く、中川真さんの著作『サウンドアートのトポス』を読んでからやっと親近感が出た。

Music for a Distance

Music for a Distance

去年聴いたこのユリウスの作品集のジャケットのミニマルな写真についてもシンポジウムで話がきけた。ユリウスが写真表現をしていた頃のものらしい。丘(下半分)と空(上半分)を連続して撮影した連作で、横に並んだ写真の中の丘の稜線が微妙に上下にずれているのがポイントらしく、そこにユリウスがノイズ音響を流して完成するインスタレーションだった、という話だった(と思う)。シンポジウムは前半、ユリウスの娘さんのキュレーター、マイヤ・ユリウスさんがユリウスのアートの全貌についてレクチャーを行った。恐らくユリウスの経歴がこれほど一貫して紹介されたのははじめてなのではないかと。そのあとの鼎談では、ユリウスと友人で平成19年の『ノイズレス』展でも共同作業を行った鈴木昭男さんや、フィールドレコーダーでユリウスとの共同作業にも携わっていた、かわさきよしひろさんの具体的なエピソードが面白かった。
以下は鼎談を聞きながら書き留めたこと。
最初は映像作品に取り込んできたユリウスは音楽的なアプローチを始めることで表現の欠落感を埋めることができた。
キャリアのはじめから複合的なトータルアート的な美意識があった。
不在や欠如や静寂は、決してヴェイカントではないという姿勢。故郷の環境をまもるところからはじまったキャリア。削ぎ落していく。
ユリウスは自分の音楽を「small music」(すべて小文字で表記)と書いた。
中川さんが最後に話したエピソード。日本人よりも日本人らしいといわれたユリウスだが、龍安寺石庭など余りに日本的に完成した様式については駄目出しした。欠落というか、不意の隙がないものには食指が動かなかったという事かと受け止めた。足すのではなく空間からそれ自体の音をひきだすためのアクセントになる音、だからこそ、それは小さくなくてはいけなかった?静寂の隣、静寂との際にある小文字の音の場。4扮33秒のあとの、4扮33秒から出た音楽いや耳、その試み。
ソニックユースがユリウスへ共演のオファーをしたことがあった、との話し。実現したのだろうか?

シンポジウムのあと、ギャラリー虹の展示をみようかと思ったけれど、シンポジウムのあとだからお客が多くなって、小さな音が聴こえないかもしれないし、次の週にも京都に来る予定があったので、そちらはキャンセル。三条に戻って、久しぶりにパララックスレコードへ。ここも、さそうあきらの『ミュジコフィリア』第三巻に出てくるのだった。
ミュジコフィリア(3) (アクションコミックス)

ミュジコフィリア(3) (アクションコミックス)

Steve Roden関連のCDを2枚と現代音楽、クラブ音楽それぞれ1枚。アナログでジョン・チカイのものを見つけて購入。ほくほくいそいそとして帰箕。
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8日(日)は、Iさんにepokでの虹釜太郎さんのイベント『音楽レーベルとは何だったのか〜第一回』に誘ってもらい参加。大学生のInくんとで三人で参加。