みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

『何も癒えなくて…貝』@中崎町コモンカフェ

東京から「HOSE」、「ふいご」のトロンボーン奏者・古池寿浩さんとテープレコーダーやメトロノームなどを使用する河野円さんのお二人によるデュオ「kokonuts」を招いた「貝つぶ」さん企画の二日目で、初日は、貝つぶさんのご自宅で二階から下階の聴衆にむけて演奏するというかたちだったそうですが、今日イベントを知ったのでそれには行けず。
今日しごとを早めにあがれて、ふと、最近コモンカフェに行ってないなー、今日なにかやってるかなあと思い立って足を向けたら、大当たりのライブでした。
そういう個人的な事情とは無関係に、今夜のライブは、とても新鮮な感触でした。特に、テープレコーダーをトバグチに演奏する河野円さんのパフォーマンスは、感動というより想像力を刺激されるものでした。

会場で、HOSE、POPOの江崎さんが、「小石」を売っておられて、中にはお気に入りのため「非売品」となってしまったものまであるというのが面白かった。
会場でSさんの奥さんに会う。コモンカフェで知り合いに会うのは数年前のTさん以来ですが、S夫人は演者さんたちとお知り合いの様子だったので、むしろこちらがふと来た異物。


一番手の矢田伊織さんは、ドラムスティック、ドラム用のブラシ、丸椅子の脚を外したもの、などを使った演奏。それは、演奏に向かう距離を確かめる作業、のように感じました。

森山ふとし×河野円。これは素晴らしいデュオでした!河野さんの空のテープレコーダーの回る音から、だんだんとハウリングや干渉ノイズを増幅させながら、手元のミキサーや、テープレコーダーやスピーカーの位置などを微妙にコントロールして、繊細でなだらかな波を作っていくのが先ず新鮮な驚きでした。それに加えて、森山ふとしさんのサンプラー2台の演奏も、多彩かつ細やかなもので、お二人で静かなのだけれど隙がないバランスで、音が連なって膨らんでは減衰するというものでした。
空のテープレコーダーの音のなかの小さなコトコト音が、きわめて静かであるけれども切迫した意識下のビートのように聴こえて、後半からテープレコーダーの前に置かれた2つのメトロノームの音がまた、演奏のなかでしっくりと溶け込んだ時間の刻み方をするのが不思議でした。

続いて、貝つぶさんは、ギターソロに、石売りの江崎さんをフロントにしての面白い時間。演奏中に石が売れたり。

最後は、古池寿浩さんと河野円さんのkokonuts。これもハイライトに相応しい演奏。古池さんのトロンボーンに向けられたマイクは、単独でアンプにいくのではなくて、河野さんのテープレコーダー複数台がつながっているミキサーに送られて同じ小さなスピーカーから出音されていた。演奏が進んでいき、河野さんのハウリング演奏が豊かな低音の方向に膨らんでいってるなと思っていたら、やけにふくよかなで、それはいつのまにか古池さんの吹くトロンボーンだった。高音のハウリングに対しても同様。ハウリングにハモるトロンボーンなんてはじめて聴いた。森山さんと河野さんのデュオが雑な言い方かもしれませんがバランスの面白さだったのに対して、ココナッツの演奏は、バランスではなくて、二人の出音がひとつに溶け合わさっていたり、擬態し合っていくような繊細のやりとりが襞をつくっていくような面白さがあった。
純粋にアーティキュレーションだけによる音楽。今夜の音楽は、あるいはそういうものだったのかも知れません。

来て良かったと噛みしめつつの帰り道。