「りとぅるねろ・りとぅるねろ」 :F.ガタリ、小山彰太・登敬三・横沢道治@北堀江Futuro、Thurston Moore『12 String Meditations For Jack Rose』
家の前の桜坂。年々桜の枝がまばらになっていくのが長年住まう人間からするとはっきりと感じられてしまうのですが、その桜のつぼみがもう大きく漲っていた。もうじき吹きこぼれるように咲くのだろうな。まだまだ寒いのに。
そして人間たちの不安はよそに、樹々のカレンダーの進行は遮られはしないようだ。
(上下の2枚の写真のあいだには、1週間ほどの間隔がある)
(下は、一番上の桜のつぼみを撮った日に瀧の上まで歩いていった帰りに何気に足元に枝が、これ以外ありえないという様子で落ちていたので撮った)
(こうしてみるとやはりただの折れた枝だが、そのときは日射しをうけたアスファルトが白いスクリーンのように波打っているようで、枝はそこに不動なまま浮かんでいるように見えたのだった) (・・・)
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impuissanceさんから、フェリックス・ガタリの論文を頼んで送っていただく。以前からimpuissanceさんのブログでカテゴリ名『ガタリ・トレーニング』として、試行されていたものがおもしろかったから(ガタリに限定されずに出てくる考察が興味深いです)、論文が提出されたというのを知ってだめもとで読みたい旨お伝えしたら、快く冊子の形になったものをお送りいただけてしまいました(ありがとうございます)。
本論は、3部作のうちの最初の1部であり、ガタリの著作でいうと、『分子革命』を主に取り上げて、精神分析の理論の土台となってもいた記号論をガタリがどう拡張したか、その展開を筋道立てて整理しておられる。
- 作者: フェリックスガタリ,杉村昌昭
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 1988/03/01
- メディア: 単行本
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ここ数年で『ドゥルーズとガタリの交差的評伝』やガタリの『カフカの夢分析』『アンチ・オイディプス草稿』やステファヌ・ナドーの仕事が訳出されるようになって、ガタリ自身をきちんと読む土壌は整ってきているのにも関わらず、肝心のガタリの著書というのは、まず夥しい造語による密林のようなものに見えて論旨がつかみにくい印象になってしまってそこでまず怯んでしまう。少なくとも自分としては長年そうだったのだけれど、impuissanceさんの論文はそのあたりの葛藤に対して、丹念に再構築しているように思えて、ざっと通して読み置いている状態のガタリの著作にあらためて戻れそうな気がする。
ガタリにとって言語のなかに閉じこもったままの精神分析ではいかにも不十分だった。だから記号を独自のダイヤグラムの上に放り投げて分析の対象を拡張する必要があった、ということか。ひとまずはこの記号論をバネにした大きな屈伸へのガタリの「溜め」。それが眼前にあらわれてきた様子。
- 作者: フェリックス・ガタリ,ステファン・ナドー,國分功一郎,千葉雅也
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2010/01/26
- メディア: 単行本
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- 作者: フェリックスガタリ,ステファヌナドー,F´elix Guattari,St´ephane Nadaud,杉村昌昭
- 出版社/メーカー: 水声社
- 発売日: 2008/09/01
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時間を作りつつ、impuissanceさんの論文を読みながら、先週の金曜の夜は、退社後すぐに北堀江のFuturoに向かって、小山彰太(dr)・登敬三(ts)・横沢道治(djembe)の即興ライブ。
トリオの鼻先でがっぷりとエネルギーを浴びることになりましたが、小山彰太さんのドラム、凄かった。一音一音のクリアーさ。軽いのに重い/重いのに軽い。そしてジャンべの横沢道治さん、以前ムジカで演奏を聴いた筈だったのだけれどおそらくそのときの僕は呆けていたか二日酔いだったに違いない。ジャンべを乱打からメロディーが聴こえてくるのである。気づくと横沢さんご自身も唸るように歌っている。でもその声ではないメロディーがたしかにジャンべから聴こえてくる。トリオの爆風のような演奏をしなやかに蝶番しているのは横沢さんのジャンべであるように感じた。登さんのテナーのブローにはもはやいうことがない。論文から目を離して缶ビールを飲んで演奏の開始を待つわずかな時間、4月からガラガラ変わる仕事の人事のことが否応なく気持ちを占領してきたのだけれど、凄い演奏を聴いてしばし完全に忘却の彼方。しかし、なんという楽器編成ななのか!ライブ後は、お腹が減って「萊萊」に駆け込んで焼きそば食べながらまた論文読み。
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Thurston Moore / 12 String Meditations For Jack Rose [LP]
Thurston Mooreのソロアルバムがたしかもうリリースの筈なのだけれど、これはそれとは違うソロ。
USの「Vin Du Select Qualitite」というレーベルのアコースティックギターのシリーズの一作として吹きこまれたもので、先頃物故してしまったJack Roseへ捧げられた12弦ギターの演奏集。簡素なジャケットにとても若いころのサーストン?とキム?の写真が、ソニック・ユースとある程度時間を共にしてきた人間にとては感じるものがあるかと。
演奏は、単にソニック・ユースやソロでの長尺のインプロをエフェクターやアンプのひずみ/ゆがみ無しでクリアーに置き換えた感じ、とだけ書いて終われるものではない。フォーキーに和み廃ることなく、時をガシガシと刻むだけでもない、速度へと押しやられなだれ込んでいくなかに絶えずどこかけなげなところがある。
サーストンのギターはやはりサーストンの「うた」であって、それ以上でもそれ以下でもない。こんな得難いと感じたのは初めてかもしれない。
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言葉にならないことを言葉にしたいのではない。
言葉にならないことは言葉にならないままに。
(勘定に入れないのではなく)
「りとぅるねろ・りとぅるねろ」と誰かが唱えた。
その反響をかすかに聴いた。