みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

このエントリーにタイトルをつけられない。

正確な時間は憶えていない。3月11日午後、職場の難波のビル2階で、オペレーターが一斉にこちらの管理者席をみているのに気付いた。しかし、すぐに視線が全部自分の身体を突き抜けて背後の全面ガラス窓に注がれているのに気付いた。ブラインドが大きく揺れている、と思ったら足元がふらふらした。インターネットで地震情報を見たら、震源は東北らしい。しばらく時間をあけて、また揺れた。サーバーが落ちないか心配になったが、大丈夫だった。タクシー乗り場をみてもいたって平穏でいつもと変わらず運ちゃんが屯っている。ツイッターで先ず仙台駅の屋内看板が壊れているのを見た。そのあとすぐにとんでもない津波の話しが聞こえてきた。ほどなく、フリーダイヤルへの入電が激減。フリーダイヤルはいったん東京を経由するから当然だった。

Twitterにさまざまな情報があふれはじめる。中にはサーバールームに閉じ込められて負傷していると嘯くツイートまであった(後に誰かは判明>削除&謝罪)。
アルジャジーラ津波の映像を見た。言葉がなかった。何もかもなぎ倒されて流されていく。言葉までのみこまれる。それをジオラマでもみているかのような上空からの視線。その晩、老婆は水の壁が迫ってきた、と語るのを見た。
夜中に、気仙沼の地獄のような映像を見て何も考えられなくなる。
それに伴って、言葉にならない絶句する、という言葉を吐いている不快感。

土曜日、昼近くに山に登って汗を流す。いつもiPodで音楽を聴いていたがそれもなし。珍しく降りには瀧の前までいって10分くらい落ち続ける飛沫を見ていた。原発のニュース。
日曜、突然思い立って、梅田までカセットテープを買いに行く。10分のテープを2セットくらい買って帰って、一本ずつ中のテープを引っ張り出して、カットし、セロテープで最短につなぎ合わせて片面30秒くらいしか録音できないテープを何個かこしらえる。原発のニュース。ネットで調べたカセットテープの解体作業の手順には、ケースハーフをあけて作業するようになっていて、そのやりかたに固執したばかりに、3本こしらえるまでに、8本くらいのカセットテープを駄目にした。今の市販のカセットテープには全種類ねじ穴などはないのできれいに開けるのはよほど幸運でないと出来ない。そのことに気づくのが遅かった。片面30秒くらいのテープにハピドラムの音や山の音や自分の声を録音してループをつくってミックスして聴いてみた。自分の声、というのは、阪神淡路大震災の年に仲間でグループ展を北野坂のスペースでやったときにつくった英文のフレーズをただいくつかペースやトーンを変えて読みあげてみただけのものだった。その音源を聴いていると、自分でも驚くくらい気が安まるのを感じた。計画停電の話が次第に具体的になってきていて、大阪も節電を、という呼び掛けをTLでみかけたように思うから、かなり後ろめたい時間でもあった。

自分にできることしかできないのは、美徳でもなんでもないが、少なくとも本人にとってはそれを粛々とおこなうことは一種の治療行為だろう。

到底休んだような気がしない週末が明けて月曜日。地震保険の中途付帯に関する入電が激増していた。すでに被災してしまった未加入の建物が補償されるわけではもちろんないのだから、契約者の危機感を急激に煽っている面があるように思う。

関東での計画停電がついに実施された。海水を注入してしまっているのだから廃炉は前提だし、代替の電力をどうするのかという話なんて、どう考えても長期的な話にしかならない。

今日は火曜日で、被災地近くの代理店から電話があった。被災した契約者の元に行って帰ってくるだけで一日が終わる。営業店も十分に稼働していない、どうしたらいいんだ。内線で営業店に連絡して、代理店に連絡を試みてもらうように依頼することはできる。でも、現地の状況からいって営業店から代理店に電話が通じるのかどうか。何も確約できない自分たちの仕事ができることは少ない、というより極めて限定されている。それでも、なんとか中継業務をやるしかない。

大友良英さんのブログの記事「少しでも状況がよくなりますように」を読む。
ライブやコンサートなど、自粛ムードが蔓延しているようなツイートをみる。自主的な判断なのであれば納得はできるが、ライブが唯一の収入源のミュージシャンだっているのだ。
FMNの石橋さんのブログ記事「理由と「たかが音楽」について」