みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

あけましてお耳でとうございます:トミ・レブレロ@月眠ギャラリー

nomrakenta2011-01-01


あけましておめでとうございます。
本年も、よろしくお願いいたします。

昨年はわたしのように呑気な人間でさえ、お国が危ういと思うことが多かったですが、まずは自分の周りから。精進したいとおもいます。
今年も、接することができた音楽、本や映画や生活のことなど、変わらずに書いていければよいな、と思っています。


元旦とはいえ、朝は変わらず個人に訪れるわけで、今朝は、あまりの寒さに起床できず、毎年恒例の箕面山山頂・勝生寺詣でには行く気にならず。
のそのそ10時に起きだして、おせちをつつき、おとそをすすり、テレビの新春お笑いの漫才を見る。
笑い飯よりもスリムクラブが観たいと思うのはなぜなのか?

ホットワインを作って、これもズルズルすすって、おめでたい気分に。
初昼寝を一時間くらいしてから、2時くらいになって箕面から徒歩で千里中央へ。

我が家から千里中央までの道のりというのは、元旦らしい風情というのは皆無。しかし、ほどよくほぐれた寒さが心地好い。
ゆるやかな丘陵みちを白い湯気吐きながらてくてく歩いてゆきました。

Glasses Cracked Concrete.

せんちゅう(千里中央)から地下鉄・御堂筋線に乗ると、新年早々、路線に降り立ってしまった目出度いひとがいたようで、東三国あたりで地下鉄は10分ほど、急停止。めでたいんだかなんだか、という表情が乗客一同に。
車内で、30日のエントリーを書くときに手にとったヘルツォークの『氷上旅日記』を読んでいました。ヴェルナー・ヘルツォークは、一九七四年の冬、ニュージャーマンシネマの保護者ともいえた映画ジャーナリストがパリの病院で危険な状態にあると知らされ、自分がミュンヘンからパリまで歩いていけば、彼は助かる、死ぬなんておかしい、と信じて歩き始めた。日記は、歩きながら、また休憩に立ち寄ったレストランなど、時折どきっとするような心象も含めて、目的と並行して目に入ってくるものについても語らずおれない「歩くひと」の心内語そのものになっている。

 レッヒ川からシュヴァープミュンヘンまで、猛烈な風と雨に見舞われる。雨と風のほか、何も気づかず、何も感じなかった。肉屋のなかで延々とねばっていた(多くの肉屋では、店内で、たいていは立ったまま、簡単な食事・喫茶もできるようになっている)。そして人を殺すことを考えていた。レストランのウェイトレスは、一目見ただけで何もかもわかってくれた。それでぼくの気持ちはやわらいだ。今はだいぶいい気分になっている。外に無線パトカーと警官がいる。ここを出たら、ぐるっと遠まわりすることにしよう。銀行で高額の札をくずしたとき、カウンターの女性が今にも警報ベルのボタンを押そうとしているような気がしたが、もし押したら、すぐさま逃げ出しただろう。午前中ずっと、牛乳が飲みたくてたまらなかった。ここからはもう地図がない。とくに至急必要なのが、小型海中電灯と絆創膏だ。
---ヴェルナー・ヘルツォーク『氷上旅日記 ミュンヘン―パリを歩いて』p.29-30


北浜の月眠ギャラリーに到着。今日はKさんにお誘いいただけて、アルゼンチンから来日しているトミ・レブレロの素晴らしい歌と演奏。

とにかく、すばらしい歌声。一曲歌い終わるごとにみせるはにかんだような笑いもチャーミング。


ギターとバンドネオン(100年くらい経ている名器。バンドネオンアコーディオンの違いをトミにライブ後教えてもらいまいた)を取り換えながら歌うトミの「歌」は、フォルクローレをベースにしながら、フォークもロックも(おそらくは実験的な音楽も)含みこんだようなところで唄われる普遍的なものでした。
東京・名古屋と演奏したあと福井の禅寺も訪れたという日本好きのトミは、「松尾芭蕉」についての自作曲も歌ってくれました。歌詞がわかればな〜!と思ってしまった。
ルー・リードが好き、といって唄った曲は、なるほどな曲調ではありましたが、何よりも、トミの歌声が、もっとも美しい声をしていた頃(Velvetsの「Ⅲ」「Loaded」〜ソロ2作目あたりか)のルー・リードの声を彷彿させるものでもありました。

1部2部と終わって、みんな最高に好い気分になっているところで、またトミがバンドネオンを持って歌いだしてくれました。間近でみるバンドネオンの動きって、何か大きな生き物の呼吸器官のよう。バンドネオンの蛇腹の呼吸とトミの生声に震えてしまい、おもわず「You Got Double Bleath!」と感嘆してしまいました。

トミは、今年10月くらいにまた来日する予定とのこと。かならず行きますよ〜!

贅沢な元旦を、トミ、そしてKさん、ありがとうございました!