みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

台北2日目:故宮から劉さんタクシーと学生街の本屋、緑色の小籠包を経て九份から戻ると市内は豪雨

二日目です。今日の夕方は念願の九份バスツアーなので、お昼までにどれだけまわれるかがんばってみようと。
朝6時に起きて目が覚めるくらい冷えたホテルのバイキングをもそもそ食べたら、とりあえずMRTに乗って行けるところに行こうと思ったら、故宮博物館が9時から開館しているようなので行ってみることに。
前夜のタクシー料金の安さで味をしめてしまったので、MRT士林駅に着いてからは迷いなくタクる。朝とはいえものすごい暑さで窓の外はギラギラしてる。台北は通勤に原付使うひとがかなり多くて、信号待ちのとき、まず一番前に原付が待つスペースがあって、普通の車両はその後になってました。信号が青になると同時に原チャが一斉に走り出す。

故宮博物館はとにかくでかかったです。多分、長い夏場はタクシーでなくてバスでいくべき。バスなら本館の下で降ろしてくれるみたいですが、僕のようにタクシーで乗りつけると、巨大な広場を本館までミミズの日干しになるような覚悟で歩いていかなければなりません。そんでまた階段が長いんですわ…。

博物館のなかは、例によって冷房効きまくりで、用心のため長袖シャツ着てきてよかったと心底思いました。展示物は、個人的には殷周時代の美術がいちばん印象深かったです。あとは、すいません、とにかく広すぎて焦点絞れず、はっきりいって、ようわかりませんでした。故宮博物館を出たあと、やっぱりタクシーで市内に戻ろうと思って乗り込んだら、陽に灼けた初老の痩せた顔のタクの運ちゃんが流暢な日本語で話しかけてくる。
どこいくの?士林駅前は今混雑してて車入れないよー、と割と見え透いたことを仰るのですが、こちらも安いタクシー料金にほだされていたのと、あとは話したがりそうな運ちゃんの表情に心を許してしまって、ほんじゃあ市内の適当なとこまで頼みますわーとこちらも日本語で返す。乗り込むととりあえず自己紹介。運ちゃんは「劉さん」というお名前で、数年前まで日本の台湾法人で働いていたんだとか。どおりで日本語ペラペラ。劉さんはさすがに博物館の開館時間が9時であることを知っているようで、10時前に出てきた僕に「全部観てないでしょー観れるわけない」と開口一番そう切り出してきた。たしかに、途中であっくりして出てきたと正直に告白。劉さんは笑っていた。よくあることなんでしょう。
とりあえずお土産買ったのかと訊かれたので免税店でパイナップルケーキは買ったと答えると、からすみは買ったか、牛肉麺食べたか、台北101行ったか、九分いくのか機関銃のように訊かれるので、台北101は興味なくて、からすみは買いたい、あとウーロン茶もと答えると、市内に戻る道の中山北路の安くて品の良い店まで乗せていく、と提案してくるので、劉さんにお任せすることに。
劉さんが良い「からすみ」の見分け方を知ってるかと訊いてくるので知らん教えてというと、とにかく分厚くて房の筋がくっきりしているやつが美味いんだというのでホホーと言ってたら、俺が店で選んでやるから、と積極的。九份行かんのか?とも訊いてくるので、我が意を得たりと今日の夕方ツアーバスで行くよ、というと、えー!高いでしょ?自分で高速バス乗っていったらええやん?と、至極まっとうなことを仰るので、そのつもりだったんだけど楽そうだからさあとぼやいてみたり。九分にはね、台北の人間は観光よりも、たんにのんびりお茶を飲みにいくのよ、と結構ローカルなことを教えてくれたり。今は台北市内はもうじきある花博で工事ばっかりしているのだとか。そういえば台北駅前は工事していた。
ついでに、昨日iPhoneで撮影しておいた『九番坑』の看板の写真を見せてみて、このお店ってやっぱり今日もお休みなのかなあ?と信号待ちのときに訊いてみたら、やっぱりお休みとのこと、それよりもiPhoneの画面が奇麗だねー!としきりに感心して、去年劉さんが日本の秋葉原に行ったときに買ってきた携帯が台北では使えないとかさかんに携帯話をし始める。こちらはあんまり詳しくないので気押され気味で生返事。そうこうしているうちに松江路の劉さんお勧めお茶っ葉店にタクシーを横づけ。ここでさきほどのからすみも売っているのだとか。劉さんが店内に突入し、からすみを選び始める。これがいい!と言い放ったあとはさっそうとタクシーで去っていきました。
店内に残された僕は店のおばちゃんに烏龍茶を試飲させてもらいながらたぶん30分くらいかけてお土産用の烏龍茶を選んだ。茶館のかわりはここでとばかりに試飲のお茶をぐいぐい飲んでみせたので、かなりの量を売りつけられそうになりましたが、そのへんは予算がないのよ残念ねー!とはっきり申し上げてお断り。それでも家人用に、台中の山頂で採っていて新芽ばかり使用していてカフェインが含まれないという凍頂烏龍茶の茶葉八〇〇〇円相当を購入。
店を出てMRT民権西路駅までは結構距離があるみたいだったけれどやはり歩くことに。道すがら、台北がまだまだそこかしこで大きな工事をしていて、MRT駅も増えていくような感じにちょっと興奮する。
前日も気になっていたけれど、台北市内の看板には時折日本語表記が混じっているんですが、その日本語がどこかおかしい。

たとえばこれは「ゴルフセンター」なんだろうけども「ゴルフーセンタ」って。今まで誰も指摘してくれんのかね…というより日本語で書かれていながら日本人に読ませたいわけじゃない、よね。

これは見かけて思わずデジカメを構えてしまった微妙な看板。頼もしいね。
昼飯までにもうひとつ訪れておきたかったのが、台湾大学付近の書店の台湾的店(タイワン・ダ・ディェン )。台湾の歴史文化の書籍に強いという本屋さん。MRT公館駅で降りて台湾大学前までくると、京都の、たとえば同志社前なんかに通じる雰囲気で一挙に親しみが湧いている。なんとか狭い路地をうろついて書店を探しあてると、大きくはないけれど完全に自分の好きな雰囲気の書店でした。書籍が70%くらいで古い地図なんかも置いてあって台湾の歴史文化のかなり深いところの書籍がぎっしり詰まっている感じはさすがに学生街だなあと思いましたが、こっちは漢文が読めないので本には手が出ない。目当ては店内の一部を占める音楽コーナー。台湾原住民の音楽のCDやアナログ盤を豊富に置いてあると「地球の歩き方」で読んでいて、私的お土産は是非ここで、と決めていたのでした。ぱっと棚をみるだけでも、演歌っぽいものやニューミュージックやロックっぽいものから始まって、伝統的な原住民音楽、その原住民音楽のなかでもポップスアレンジを加えたものからハードな民俗資料的な音源まで豊富な音源が揃っている。興奮しながら(日本にいるのとなにも変わらない…)数枚のCD・LPを購入(このあたりはまた後日のエントリーで)。

本やCDだけじゃなくTシャツ雑貨も豊富にあった。またいつか立ち寄りたいお店。
公館の書店をあとにすると、すでに12時半を過ぎていたので、お腹も減ってきていた。まず頭に浮かんだのは前日美味い小籠包を食べた『京県小館』のこと。そしたらもう、『京県小館』でお昼を食べることしか頭になくなってしまった。しかもお店のお昼の部は10:30〜14:00とのことで、きわどい時間になっていた。
急いでMRTを乗り継いでまた敦化北路の『京県小館』へ。1時半に入店できてお昼にありつけました。店に入ると前日見覚えのある店員さんが数人。あの「ふくよかな矢田亜希子」もいて、先方も前日のピンの日本男を憶えていてくれたみたいで、前日とまったく同じ席に誘導してくれました。台湾ビールをまず一本頼んでから、まだ台北で食べてなかった牛肉麺と、小籠包は前日の失敗を踏まえ、通常1種10個ずつなのを5つずつ欲しいのよーと身振り・手振りで交渉し矢田亜希子の快諾を得、小海老の小籠包と、お茶を混ぜて緑色の小籠包を半分ずつオーダー。

緑の小籠包はそれほどお茶の味はしなかったんですが、とにかく完食するまで食欲そそられっぱなしのルックスと癖になる後味でした。海老の小籠包もジューシーでたまらない。しかし、やっぱりいろんな小籠包を食べたいなら一人でいくのは不利ですね。なんでも結構量がある。牛肉麺は汁は大阪で友人からきいていたとおり、あっさりした味でしたが肉がごそっと入っていてこれも食いでがありました。美味しかったー!と満面の笑みを浮かべて店員さんとえへへと微笑みかわしつつお勘定して外へ。あとは夕方の九份ツアーまでホテルに戻ってのんびりしようと。

美味な小籠包で満腹、手には公館で購入した音源をたっぷり下げて多幸感に充満しながらホテルまでのMRTを乗り継ぐあいだ、駅の構内の映画告知が気になってきた。

乗継の忠孝復興駅で見かけたこの映画ポスター。ふくろうが主役の『ガフールの伝説』の告知みたいなんですが、ふくろうは「猫頭鷹」か…なるほどなあ。

で、つぎはホテルのある西門駅で『ピラニア3D』の告知。階段の壁面全部を使っていて迫力あった。天井にもピラニア。『ガフール』もそうだけど、異国情緒(?)あふれまくっていてポスター見ているだけでお腹いっぱいになるなあ。
ホテルの部屋に戻って、とりあえずシャワーで汗を流す。この時点で予想以上に着替えいて持ってきたシャツが最後の一枚に。

台湾のテレビをぼんやり見ながら指定された16時までのんびりしていると、だんだん窓の外の雲行きがあやしくなってきた。ついに台風到来か。窓の外にはうっすら虹が。


4時にバスが迎えにくると、外はもう雨が降っていた。市内の各ホテルをまわって九分ツアー参加者を順番にピックアップしていくあいだにも、どんどん雨足は強くなってくる。バスが高速にのった時点で車窓を撃つ雨粒の勢いがかなりのものだったので、これは九分も駄目かなあと半ばあきらめていると、小一時間バスが山道を走って着いてみると、幸運なことに九份では雨は上がったばかりのようだった。

基山街前のバス停に着いたのがたぶん6時過ぎくらいだったので、九份のお土産物屋さんはどんどん閉まっていく時分だった。でも替わりに、有名な赤い提灯が出迎えてくれました。

日本統治時代から1960年代まで浮き沈みはあれど金鉱として栄えた町・九份は、坂と階段の町。

その路地は、5メートルほど先に不意に段差が現れて壁のように見えたり、奈落の底に落ちていくように見えたりで、容易にパースで見透せず、いくつもの角度を折り畳んでいて、それに加えて雨上がりの濡れた真っ暗な石畳を赤い提灯がところどころで照らしてくれるから、ある種、幻想的といってもいいかもしれなかった。「坂の町並み」好きの自分としてはこのうえない豊穣さを感じてしまいます。

基山路のまんなかで交わって九份の町を上から下まで貫く有名な坂「豎崎路」。

右上あたりに侯孝賢監督の映画『非情城市(1989)』の看板が見えます。日本統治からの解放後・国民党政府上陸の激動の時代を描いたこの作品がロケ地に選んだことで、閉山後の九份は脚光を浴びた(いうまでもないことですが)。

でその後は、いわずもがなの宮崎駿千と千尋の神隠し』の湯屋のモデルになった「阿妹茶楼」。お茶セットをいただく。


九份山城。

晩御飯をいただいた「豎崎路」の下のお店の店内にまで仲良く二匹で入り込んできていた白・黒の九份ドッグズ。

みおくりドッグズ。

バスで台北市内に戻ると市内は豪雨だった。
アーバスは臨江街の夜市で止まったので、自分はここから別行動でタクシーでホテルに帰らせていただく。