John Butcher & Eddie Prévost Japan Tour 2010@中崎町コモンカフェ
サックス奏者ジョン・ブッチャーとあの「AMM」のエディ・プレヴォーのデュオを、梅田で観ることができるとはなあ、と一日そんな感慨でした。
ショーは2部構成で、プレヴォーはシンバル、ゴング、ドラム(といってもドラムらしい打突はナシ)、ブッチャーはテナー⇒ソプラノ⇒テナーとサックスを持ちかえていました。
最初、腰痛からきているのであるらしき不快感が自分のなかに溜まっていて、演奏が始まっても、完全にアコースティックな演奏なので空調も切られて、しばらくはしんどさがつきまとっていた。1部の真ん中あたりでブッチャーが大きな身体を振り絞るようにして鳥の鳴き声のような音を出したときから、耳が演奏と親和していくようになり、気分も良くなっていった。
それでも1部の間はずっと、ブッチャーのサックスに対して、「鳥のような」とか「通風口から漏れる機械音のような」とか、直喩的な発想で演奏をとらえようとしていたのですが、だんだんとこれはそういう演奏ではないのだなあと見当がつくようになってきた。それ・その・そのままの音=声の持続とバリエーション、それがブッチャーさんの音楽との関わり方なのだな、と。エヴァン・パーカーの演奏を語れるほど聴いていないので、うまく書けないのだけれど、昔、京都で聴いたスティーヴ・レイシーのソプラノサックスの演奏より遙かにアブストラクトなのに肉体的だといえるような。
プレヴォーは、はじめシンバルやゴングを弓で擦って微かなドローンを出し、中盤はスネアドラムを叩くのかな、と思ってみていたら、裏返して小さなシンバルと組み合わせておもしろい振動を出してたりしていた。
プレヴォーの演奏は、よくジョン・ケージ関連の文献で引用されている映像作家オスカー・フィッシンガーの「あらゆるものに触れて、その命(音)を呼び起こせばいい」という打楽器に関する言葉をそのまま実行しているように思えました。プレヴォーは豊富な引き出しから、一貫してふわりとした振動の膜を空中に重ねていくようでした。
一方、ブッチャーは、自分の呼吸を金属管に託して吹上げるたびに、世界に貫入していくという、管楽器の特性自体を強く感じさせてくれるものでした。この二つの楽器環世界が互いに音を混じり合わせながら、決して最後までは混じり切らない、そんなおもしろい演奏だったと思う。
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