みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

Luo Chao Yun & 豊住芳三郎 Japan Tour@中崎町コモンカフェ

今夜は10分くらいのセットを3つやって一部が終了(そのあと二部があったそうです)。そのあいだ、時間の流れが立ちすくんでいるような美しい瞬間が何度もあった。二つの音の重なりがまばらになることはあっても、そこにおろそかな音はひとつもなかった。


実際は、おふたりの演奏は、高い純度で自律しながらもお互いの音を必要とし合いながら、しっとり(極私的な感触)とスペースに浸みこんでいくようなものだったので、ひとつずつ感想を書くというのは、ちょっと間違っているような気もするのですが、まずPipa(中国琵琶)奏者Luo Chao Yun。
昨年の11月に塩屋の旧グッゲンハイム邸でミン・シャオフェンが弾くのを聴いた/観たのがPipa(中国琵琶)の初体験でしたが、そのときの激しめの演奏と比べると。今夜の印象は若干違っていて、コリコリと爪弾いたりブリッジの部分で弦に圧力をかけるだけで音を出したり、奏法というよりも日常的な動作の延長のような弾き方も交えつつ、美しい「きりもみ」とでもいえそうな響きからは、たしかに中国琵琶ならではの気品が終始たちのぼってくるようでした。

パールのドラムセットに向かう豊住芳三郎は、絶えず変化しながら緊張を維持する伸縮パルスを打ち出しつづけて、掌や拳で各パーツを鳴らすのもあり、コップや背後の壁を叩いたりして「音色」を変化させていました。
その繊細な手つきは、ジョン・ケージが打楽器音楽を書くきっかけになったと語った、映像作家オスカー・フィシンガーの「この世界にあるものひとつひとつに宿っている精霊を解き放つには、ものに軽く触れ、ものから音を引き出すだけで充分だ」という言葉さえ脳裏で反芻させてくれるものでしたが、たとえば、そのへんにある紙を絶妙にこすり合わせる音と、ドラムのキック一発が等価であるような瞬間、その瞬間が10数分継続する快感を想像してみて頂きたいのです。

つわものおふたりの高レベルの即興を会社帰りに観れるとはしあわせです。…フリージャズ好きですと公言しておきながら、SABU初見でした。


二部では、豊住さんが二胡を弾いたりしたそうです。