みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

大本雅彦『星の舞台から見てる』を読み始める。David Tudor『Bandneon!』

「人類は、今だって、麺類。」という、かつての安藤百福さんの言葉をリニューアルした日清食品のCMが、小売・店舗に限らず麺商品全体の売上を底上げしている。オアシスの「Don't Look Back in Anger」をバックに、若きハリソン・フォードが、今度は刑事に邪魔されることもなく屋台でラーメンを心おきなく啜りついに汁まで飲み干すという歓喜あふれる映像の最後に、さきほどのコピーがかぶさる趣向なのだが、それが人々の麺類全体への食欲をいたく高ぶらせ・募らせ・あるいは思い出させるのだ。
とはいえ、デッカードブレードランナーのなかでありつこうとしていたのはラーメンではなくてウドンだったよな(4玉も)とつぶやきつつ、立ち食いソバのスタンドを出ると、酸性雨の向こうで宇宙旅行の広告が天空に流れていた、というレトロな妄想が、通勤準急30分で寝ぼけ混線頭に去来していました。
現実に戻ると、さすがに/すでに「そして、人類は麺類になった。」 というコピーがあったのだった。

残るは「麺類だって、人類。」だな。


木村カエラ堀北真希の携帯であるというdocomoのCMや広告をみていると、頭のなかで読み始めた大本雅彦『星の舞台から見てる』のエージェントの世界がダブりはじめた。ふと思うことは「アバター」というアイデアより「エージェント」というアイデアのほうが個人的には好きだなということ(同じ俎上にのせれる用語ではないのだろうけれど)。とはいえ、この種のアイデアの究極は、すでに岩明均の描いたミギーである、と結論したい自分がいて困ります。

『星の舞台から見てる』は最初、なんかライトノベルみたいなトーンだな不安、などと不遜にも思ってしまいましたが、エージェントがサールを引きあいにセマンティクスについて語りはじめたところで、完全に巻き込まれている読者としての自分を認識。。

星の舞台からみてる (ハヤカワ文庫 JA キ 7-1) (ハヤカワ文庫JA)

星の舞台からみてる (ハヤカワ文庫 JA キ 7-1) (ハヤカワ文庫JA)

あとが愉しみ

2月頃に買ったDVDをやっと観る。

David Tudor Bandoneon [DVD] [Import]

David Tudor Bandoneon [DVD] [Import]

1966年にジョン・ケージをはじめ、ロバート・ラウシェンバーグやデヴィッド・チュードアなど10人のアーティストが参加したE.A.T.(Experiments in Art and Technology)というイベントをアーティスト毎に一枚ずつ切り出したDVDで、これはデヴィッド・チュードアがバンドネオンの演奏を映像や音響などのマルチメディア環境に拡張してみせたもの。チュードアが、といっても彼と同じくらい大がかりな装置を組み・メンテナンスするエンジニアたちもフォーカスされている。音のほうは案の定、もはやバンドネオンのバの字もない電子音響の怒涛と化していますが、この時代の技術への恍惚というのは知的な歓びに充ちている。また演奏の映像と同じくらいのボリュームで、当時を振り返る人々のコメンタリーが収録されていて、皆がその音の現場にあった「エネルギー」について、口を同じくして言及してもいる。現代音楽(のある一部)が、この時点で、小難しい理論のタコつぼにではなく、テクノロジーへの純粋な恍惚に力点を置いていたこと。これを無邪気、と形容することは少なくとも自分には到底出来ないなという感慨がわく。当時チュードアとコラボレーションしていたゴードン・ムンマの清々しくも誇らしげな表情。これも、また感銘を呼ぶ。
当時チュードアがバンドネオンという楽器に夢中になっていて、アルゼンチン・タンゴを現地で聴き漁っていた、というエピソードも。オマケというよりは核心であるようで、好いです。