みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

桜のつぼみとシェシズ@梅田ムジカ・ジャポニカ

nomrakenta2010-03-21



週末から気になっていた近所の桜坂のサクラにつぼみがきっちりとついていた。
もう3月も終わり近くなのだし、ちっとも不思議なことではないんですが、今年はなんだかとても長い冬のようでもうこのままずっと冬なんじゃないかとさえ思っていたところに、忘れたころにサクラのつぼみさんがポコポコ出てきたので、やはり否応もなく季節は巡るなあ、などといまさら感慨してしまいました。

瀧道から山に登ると、いつものスーツとハットとサングラスをビシッと着こなした、瀧道的にはひじょうに有名なドッグトレーナーさんに出くわす。
今日みたいに洋服でビシッのときもあるし、和服でビシッのときもある超スタイリッシュな長身の異人さんが、だいたい毛ふさふさで堂々とした血統書付的な方々が3匹くらいの立派なお犬さまたちを連れて颯爽と歩く様子は、いつもとても立派であり、タオルを首に巻いた田吾作風体のこちらは気恥ずかしいのですが、挨拶できる間合いになってこちらが頭を下げると、ハットを優雅に上にかざしてなんか英語で挨拶をしてくれる。ちゃんと挨拶するようになったのは昨年暮れぐらいからであるのです。そのへんの日本人がやるとただのバカであるが、とにかくビシッ、なので格好良いひとである。

風がとても強くて、下りなどでは、下から吹き上げてくる向かい風に身体が浮きそうな気がしましたが、やはりもう春。やわらかい何かが風の中に充満しているのを、身体はちゃんと感じていて、嬉しかった。

帰りにもパシャ。

夜。梅田のムジカ・ジャポニカへ。最近、大友良英さんがブログでムジカのことを書いていて、たしか居心地良い、とか書いておられたげでしたが、別に常連ではないけれどちょっと嬉しいこの心理。
今夜は初めて観る『シェシズ』のライブ。
実は、シェシズはアルバムさえ聴いたことがないという…。向井知恵さんの胡弓と工藤冬里さんでなにやら即興的なソレ、という以上、昔アルケミーレコードのCD棚を掘りながら何枚かのジャケを眺めながら得た浅い印象のままここまで生きてきました。
そういうわけで、ものすごい即興的なソレに向かって心はチューニングされていたわけですが、始まったシェシズの演奏は、ソング・オリエンテッドとまで言わないまでも、きっちりとした感じでした。

胡弓に導かれて短めの曲を3曲くらいやったあとに、向井さんがピアノにスイッチして、たしか「タンゴ」と紹介されていた曲があった。そこで、いくらか胡弓に奪われていた耳が、シェシズのアンサンブルの独特さのほうに開かれていくのを感じた。わかりやすくちゃんとタンゴなんですが、とても深い海の中から、しゅわしゅわした泡の水流が立ちのぼってくるような錯覚があった。揮発性のタンゴ。

第一部の最後には少なめのコードに乗せて、即興を交えた演奏があった。これは自分の勝手なイメージ通りのシェシズだったわけですが、深くてゆったりした中に、たとえば工藤冬里さん(思えば工藤冬里さんだって、自分は観るの初めてだったり)の、コードを抑えながら、右手は弦を不安定で気まぐれな感じではじく奏法が、意外にもしっくりと泳ぎまわっている感じで、しばし恍惚の時間が過ぎて行きました。

用事があって、泣く泣く第二部の4曲目くらいでムジカを出てしまいましたが、またしっかり聴きたい、という気になっていたのでした。