みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

トモコ・ソヴァージュ『ombrophilia』


2と7トラック目の「Raindrop Exercise」が、ほんとうの雨のしずくを使っているのかはわからないけれど、水滴が奏でるトーンの連なりは、コンポジションインプロヴィゼーションという程度の差こそあれ「意図」の範疇から抜け出ていて、雨漏りの時間がゆったりと遊んでいる。
水を張った陶器のボウルや、水中マイク、コンデンサー・マイクなどを駆使して、水滴や波立ちなどの水の音で作られた音楽。
パリで活躍するトモコ・ソヴァージュのアルバム。WEBでこういう人がいる、ということだけは知ってはいましたが、やっと聴けた。
実験音楽…という身構えは、最初の一音とそれにつづく数秒のあいだのトーンの豊かさからも、不要かと思います。しかし、もちろん単なる瞑想音楽というほど、無害な感じも個人的にはしないように思える。
もともとはテリー・ライリーとラーガ音楽で使用されていたウォーターボウルから出発しているそうですが、HPにも書いてあるとおり、トモコ・ソヴァージュの関心は、水の音のテクスチャーの豊かさを「聴く」ことに向かったようで、その成果がひとまずはこのCDに収められることになったようです。
水の音であれなんであれ、ここまでクリアに響く音を収めた音源を久しく聴いていなかったように思えます。
とてもパフォーマンスを観てみたいですが、難しいだろうなあ。
水の音楽、いや、水が音楽。むしろ、音楽が水。