みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ロイヤルハンチングス@谷町6丁目cafebarポコペン

nomrakenta2010-02-14


女子モーグル上村愛子は頑張った。使い古されたことばしか思いつかないけれども、勝ち負けじゃない、ってことが伝わってきた。
涙で頬を濡らしながらコメントする上村選手は、清々しくて格好良かった。きっと4位は1位で、メダルは目に見えない色をしていたのだ。


9時過ぎに起きると、身体がだるくて「あ、きてる」と思った。風邪気味らしい。

先週、難波のタワレコで、クラリネットコントラバスの二人組『ロイヤルハンチングス』のファーストアルバムを見つけて、いろんな国の古いダンス音楽、ジャズやジプシー音楽、バルカン音楽などをやっている、この二人組が、ツアー中で、14日(つまり今日)大阪の谷町のカフェで演奏する、ということを知ったので、出かけてみました。

谷町6丁目で地下鉄を降りて、昔高校の美術部の恩師が何度か個展を催されていたので来たことがあった「楓ギャラリー」を、チラシ記載の地図に従って、脇の小道へ入ると、すぐ行き止まりのように壁が見えましたが、そこから左に折れるとまた小さな路地があって、その奥の民家の並びに、会場である「cafe bar ポコペンhttp://www.poco-pen.net/pictures/index.htmlがありました。

何に入ると、大正モダンというのかレトロシック(?)で落ち着く店内で、深い椅子に腰かけると、とても落ち着いた感じがしました。なんだかこの感じは、新世界ブリッジの、あの感じにも通じるなあと嬉しくなった。
ロイヤルハンチングスは、クラリネットの瀬戸信行さんと、コントラバスの熊坂義人さんお二人によるユニットで、古いジャズやダンス曲、クレズマーやジプシー音楽のなかから、ロイヤルハンチングスらしいチョイスで、ちょっと寂しく、けっこうユーモラスで、なつかしい「すき間サロン音楽」を演奏する。もちろんオリジナルも演奏する。瀬戸さんは大阪にお住まいで、「ちんどん通信社」でも演奏しておられるのだとか。
コントラバスという楽器が大好きで、できるだけ近くで聴けるなら足を伸ばしたいし、やっている音楽も、ご本人たちは地味地味というけれども、エミール・クストリッツァアンダーグラウンド」のサントラ盤を、ちょっと親密でポータブルなものにした感じがよかったです。地味というより滋味、か。

http://www.myspace.com/royalhuntings
お二人ともハンチング帽がよくお似合いで、小さな店内で、午後の日差しを背に受けながら、CD収録の第一部、休憩をはさんで新しめのレパートリーでの第二部、とゆったりと親密なムードのなかで、うれしい時間が過ぎていきました。

第二部にやった『イスタンブール・マンボ』という曲が、とても良くて、この曲はシナトラも歌った、いにしえのエキゾムード曲のようで、アマゾンで調べてみたらムーンライダーズのアルバムに同名のものがあるみたいでびっくりした。日本では、江利チエミが歌っていたみたい。

KING RE-JAZZ SWING: CHIEMI SINGS

KING RE-JAZZ SWING: CHIEMI SINGS

伝説のジャズのコルネット奏者ビックス・バイダーベック(「ジャズ・ミー・ブルース」という伝記映画があったかと)が書いたというピアノ曲をロイヤルハンチングス用に編曲したという曲も、良かった。コントラバスのうねりと、クラリネットが歌ううたう。クラリネットの音は、笛としての音だけじゃない、楽音になる前の(または後の)奏者の息遣いそのものが管を通って激しく聴こえてくる。CDなんかで聴けるクラリネットの「音」は、その呼吸のぜんたいのほんの一部なのだということ。それは、コントラバスも同じで、指がビシビシと弦を弾き絞ったりすることで耳を震わせる音響がかなり好きだったりする。

最後はシャンソンの『セ・シボン』を、はじめて発せられたお二人のあたたかい歌声で、締め。来てよかった。日曜日だからこの時間に終わってくれたのも良かった。
次は、すでになんどか出ておられる、とお聞きした阿倍野の『ロック食堂』で聴いてみたい。ロック食堂で「ふちふな」と共演というのも、とてもはまりそうな…。
ロイヤルハンチングス『シンガポールの小径で』

asin:B002YI2UHW
このCDには、附録のCDがあって、神戸のビッグアップルでのライブ「ロイヤルハンチングスと仲間たち」というタイトルで、こっちは「たゆたう」のイガキアキコさんなどヴァイオリン、ドラム、アコーディオントロンボーンなどが入って、さらに色彩豊か。


行き帰りは、いつもの阪急電車を使わずに、バスと北急+地下鉄にしてせめて休日気分を味わおうと努力。車内で、最近にわかに読もうと思ってきている宮澤賢治ちくま文庫の全集で読む。パッと開けたら『ポラーノの広場』だったのでこの中編から読みはじめる。こんな話だったのか、というか賢治にかんしては、僕は殆ど「こんな話だったのか」です。帰りに、ふと、ポラーノの広場で演奏されていたのは、もしかしたらロイヤルハンチングスのような音楽であったかもしれない、と思ったりした。