みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

陽ひの降る谷間を登っていったら、太陽を追い越した。

nomrakenta2010-02-13


という言葉を、なぜかひるまに瀧道を登っているときに、あたまのなかで反芻していました。
歩いているときに、ふいにやってくる言葉というのがあって、それは、自分の姑息な意図からはとりあえず離れているような気がするのが気持ちよい。

今日は太陽がよく照っていて、谷間はキラキラしていた。冷たい空気にも湿気がなくて吸い込むごとに気持ちが良い。
登る途中の昆虫館に、巨大な蜂の巣が飾られているのを、子どもたちが見ていました。

降りかえりでは、一匹の猿が、女の子の持っていたお菓子が入っているのらしいビニール袋を、無駄のない動作で奪取して中味を漁るのを目撃。長く箕面人だけれども、噂の光景を目の当たりにするのは初めて。
行儀よくせんかい。


ヘッドフォンからは、スティーヴ・レイシーがプレスティッジに吹き込んだセロニアス・モンク集である『Refrections』と、ジャー・シャカのダブが交互に流れていました。

Reflections: Plays Thelonious Monk

Reflections: Plays Thelonious Monk

『Refrections』は、おそらくモンク以外でほとんど初のモンク・オンリー曲集だった、というのをどこかで読んだ記憶があります。
ここでのレイシーのワン・ホーンはあらためて聴いていると、若々しいツヤと弾力があって、とくに冒頭の「Four in One」などでレイシーのソプラノが切り込んでくるところは、ぞくぞくとするし、晴れ晴れともします。ブエル・ネイドリンガーのベースも不穏な漏洩線を描くようで、レイシーのうたう高い線と好対照になっている。結構、聴きどころのある盤だったのだ。
In the Ghetto (With the Fasimbas)

In the Ghetto (With the Fasimbas)

ジャー・シャカは、レンタルで借りたCDで、またぞろお勉強聴きの一環ですが、馴染むというか、はまっていきそうな予感がしています。

朝登山のかたが置いていったとおぼしき杖数本がきれいにまとめて置いてあった。



夜に、NHKでヴァンクーバー・オリンピックの開会式を観ていました。
いきなりグルジアリュージュ選手の不幸に見舞われて雲行き怪しいとも感じましたが(日本の誰かの服装がどうのでどうの、というのはくだらなすぎ・レベル低過ぎな話であって)、冒頭の山頂からスノーボードで滑り降りてきた選手が、あたかもそのまま滑って会場に現れた(と見てほしいという)演出が、自分でも意外なほど高揚しました。
先住民(ファースト・ネイションズ)の4部族が、とりわけヴァンクーバー先住のひとびとなのか、それともホストとして率先して名乗りをあげたひとびとであるのか、自分にはよくわからないのですが、ドームの真ん中に聳え立ったトーテム・ポールは青白く巨大で、オリンピックが彼らに大きな経済効果を与えるのでなければならないだろう、と思ってみていました。それにしても、伝統衣装で登場してきた彼らは、選手団の一時間くらいに及ぶ入場のあいだずっと踊っていたようで、こりゃすごいと思ったり。

ファースト・ネイションズに限らず、オリンピック会場の建設のおかげを蒙ったホームレスのひとびとがヴァンクーバーでは問題になっているらしいです。ファースト・ネイションズの若者たちの、他人種の数倍と計上される自殺率も、問題の根が深く、歴史的・構造的であることを物語っていると思う。

ヴァンクーバーや北西海岸の先住民文化のことを考えると、昨年は「みんぱく」の企画展がとてもおもしろくて、自分として興味がぶり返しましたが、昨年のあらたな発見は、画家であり文筆家だったエミリー・カーでしたが、このことはまた後日。

ジェブ・ロイ・ニコルズが聴きたくなって買ってみました。

Strange Faith & Practice

Strange Faith & Practice

ニューアルバムのようです。ジャケットがここ数年に自分が買ったCDのなかでも最高にいい感じ、と思いました。手の温かみのあるレタリングを、たぶんジェブ・ロイ自身がやっている。どぅーいっちゃやせるふな人のようである。タワレコでは便宜上、フォーク&カントリーの棚に置いてあったりするわけですが、音は意外にダビーなマナーさえある親密な拡がりと風通しの良いもので、それに、大人な感傷を「べったり」とは程遠い感覚でつぶやくジェブ・ロイの歌。
NICHOLS, JEB LOY

NICHOLS, JEB LOY

こっちはよりダビーな感じも強く、上の『Strange Faith and Practice』を「内省的」といっていいなら、この『Parish Bar』はいくらか外向きな感じは、します。冒頭一曲目が『Countrymusicdisco45 』というタイトルでおもしろい。