みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

Urbanguildで、レコード市とTim Olive。

nomrakenta2010-01-10


昨年末にはじめていった京都「Urbanguild」で、今日はレコード・フェア兼ライブという、ありそうでなさそうなイベント『 Jun Kroom Records presents the "Outsider Record Fair" 』があったので、行ってきました。レコード好きが集まってレコード箱を掘って世間話をしてお酒飲んでご飯食べてライブを観る、という天国のようにユルユル(ゆらゆら、でも良い)としたイベントでした。
4時頃に、Urbanguild店内で、Iさんと合流。フリー・ジャズ実験音楽、ダブ、プログレ、普通ロックに強いレコ屋さんが出店されていて、そこで自分としてかなり満足なお買いもの(下リスト)。
そのあと、ライブまで時間があるので、Iさんに京都のおすすめスポットに連れて行ってもらう。三条通りを越えて『WorkShop Record』。以前からIさんから、とても良いレコ屋さんなので一度は行くべき、とおききしていて、やっと来れました。ビルの4Fの広くはないけれど、ぎっしりと思い入れたっぷりに良いレコードが並んでいて、居心地が良いお店でした。そこで、「ふちがみとふなと」の船戸博史さんがレコードをぱらぱらめくっておられるのに遭遇してしまい、おもわず「こんにちわ〜…ファンです〜…」とごあいさつしてしまいました。嬉しい。お店の常連さんみたいでした。そりゃ、京都にお住まいなんだからね…。今年はまた阿倍野の『ロック食堂』で演奏する予定があるとのこと。『ロック食堂』で聴く/観る「ふちふな」は最強、なのです(店自体が音響装置と化します)。アヴァンギャルド棚も充実していて、先に「Urbanguild」でお金を使っていたので、泣く泣く自制。あと、最近聴きたいなあと思い始めているダブのジャケットなどをしげしげと眺めていました。「なにやらDUB」、「DUBBING まるまる」とかダブって曲名がとにかくDUBだから、でおもしろいと思う。
そのあと連れていってもらったのは、『三月書房』。新刊書の本屋さんなのに、人文系とサブカル系を合わせた古本屋さんのような充実の品揃えの本屋さん。京都の懐は深い。
寄り道最後は「100000t」レコード、CD、古本を売っているショップ。大阪だと、もはやこんな密度で自分が楽しいスポットは存在していません。アメリカ村にはそんな雰囲気はまったく残っていない。その点京都はふんばっている感じがする。嬉しいです。
そのあたりで、「Urbanguild」に引き返す。
Hakobune (Takahiro Yorifuji)
Tim Olive & Katsura Mouri (Busratch)
Anthony Guerra & Mark Sadgrove
Naked Mozart!
ショーが始まったのが7時半だったのと、大阪に帰らなきゃで、観れたのはこの4組だけでした。
Tim Olive & Katsura Mouri (Busratch)
EMレコードから出た初めてのソロアルバム「The Scientist」も最高だったティム・オリーヴさんと、Busratchのモウリカツラさんのノイズ・デュオ。



Tim Oliveさんは大阪に住んでおられるそうですが、観るのは初めて。たぶん新世界Bridgeでよく演奏していたのだろうけれど、生憎そのころ僕はあの場所を知らなかった。EMレコードから出た西川文章さんとのデュオ『SUPERNATURAL HOT RUG AND NOT USED』をジャケだけみて購入してから、なんとなく気になっていたのですが、「The Scientist」を聴いて、是非是非ライブが観たい聴きたい、と思うようになったのでした。

The Specialist

The Specialist

S/T

S/T

今夜の演奏は、モウリカツラさんはターンテーブル、Tim Oliveさんは卓上に置いた改造ギターに、鉄板や紐、音叉、錐のようなものでエフェクターを使用せずにコリコリコツコツした音を掘り出しておられた。Tim Oliveさんの音はCDで聴くように、間欠的なところがあって(そこが好き)、モウリさんのターンテーブルはサンプリングとしてではなくて完全にノイズ発生機として使用されていて、魅惑的なドローンが聴こえてくる瞬間があった。
ほとんどのミュージシャンが、「積み重ねる」ように、つまり1分前の自分の音と今この瞬間の自分の音が、同じ音楽に属していることに疑いを挟まない演奏をするのに対して、Tim Oliveの即興演奏は、エリック・ドルフィーが呟いたところの「音楽は残らない。空気の中に消え去って、もう二度と同じ瞬間は来ない(…ちょっと違う?from"Last Date")」という言葉を忘れさせない地平で、鳴らされているように思えるし、エフェクトかけないアンプリファイしただけの「変な音たち」のおもしろさ、というのも強烈なものとして、ある。
Anthony Guerra & Mark Sadgroveは、ギター・デュオで、幽玄よりも淡さに傾いたローレン・マツァケーン・コナーズが二人いるような(?)アトモスフィアな演奏で思わず聴き入ってしまう。

前の席に座っていたのが24歳というドイツ人の青年で、独りで来ていたみたいで、なんとなく互いに片言の英語で話すようになった。宗教学を専攻していて、日本には、京都のインスティチュートに半年留学にきていて、日本の神道や仏教、僕が知らないような新興宗教についても勉強しているようだった。オウムのテロはドイツでも有名だそうな。学者になりたいのかと訊いてみると、「高校の教師になる」という。好きなバンドは?と訊くと「オアシスがベストなバンドで、次がビートルズ」というので、なんでまたこの「Urbanguild」に誰を観に来たの?と訊くと、趣味でギターをやっていて、日本に来てからは三味線を習っているんだとか(吉田兄弟は知っていたけれど高橋竹山は知らなかった)、で、ドイツでは小さなライブハウスで一回だけ、グラス・ハープとギターで共演したことがあるんだとか。そのあと、ドンドコ踊らされるようなテクノは嫌いだけど、エクスペリメンタルなエレクトロニカは好き、と言っていたので、なるほどー、と思った。ちょっとナイーヴな感じのする音楽好きのあんちゃんだった(モテそうだったが)。

購入リスト。
@三月書房
【本】市村弘正『読むという生き方』(平凡社2003)

読むという生き方

読むという生き方

@100000t
【本】吉本隆明『書物の解体学』(中公文庫)、伊東勉 訳『ラインケ狐』(岩波文庫)ルターもゲーテも驚いて愛読した、のだとか。ドイツ青年にこの本知ってる?って訊いてみるべきだった。
【CD】Derek Bailey,Pat Thomas,Steve Noble『AND』(Rectangle)
@"Outsider Record Fair"
【CD】Tim Olive & Fritz Welch『Sun Reverse The Footpedal』(Revolving Ear)
【カセット】『SUPERNATURAL HOT RUG AND NOT USED』
ライブ前に、席の前でTimご本人がせっせと値札付けていたのを、ご本人から購入。気さくな人でした。
【アナログ】
『Extended Voices-New Pieces For Chorus & For Voices Altered Electronically by Sound Synthesizers & Vocoder』アルヴィン・ルシエ監修の現代/実験音楽の「声樂」のコンピ。ロバート・アシュレー、ジョン・ケージモートン・フェルドマン、一柳 慧、アルヴィン・ルシエ、ポーリン・オリヴェロス。面子だけで、買い。
『New Sounds in Electronic Music』上の「声樂集」と同じOdysseyというレーベルの「Music of Our TIme」シリーズ。これはデヴィッド・バーマンが監修。面子は、リチャード・マックスフィールドスティーヴ・ライヒ(カム・アウト!)、ポーリン・オリヴェロス。
『David Cunningham / Grey Scale』15年くらいは探していた、フライング・リザースのデヴィット・カニンガムのファースト・ソロ。
『Complete Studies for Player Piano:The Music of Conlon Nancarrow Volume Two』
『Jimmy Lyons / other afternoons』(BYG)
『Karin Krog & Archie Shepp / Hi-Fly』
『Folk Music and Songs of Sicily / Work Songs vol.1』
アナログはもはや買うまい、5年ほど前に自分内封印をしたというにもかかわらず…あまりの豊漁さに手が出てしまいました。そしてそして…帰宅後ショックだったのですが…何年も使っていなかった自分のターンテーブルが「動かない」ことに気付いたのでした。意地でも直すぞ。