みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

音楽にひたる

nomrakenta2009-09-23

シルヴァーウィーク最終日は、家でひたすら享楽的に読書しながら音楽ばかり聴いていました。
なんだろう。酷暑が去って、部屋で音楽をまったり聴いているのがとても馴染むようになってきた。
ありがたい。
テレビでは鳩山首相が25%をぶちあげて、巨人がリーグ優勝。八ッ場ダムの交渉はいきなり難しい局面のようす。朝青龍が見事な投げで日馬富士を負かして無敗も守ったのには興奮しました。




Contemporary Sound Series 1

Contemporary Sound Series 1

自身も実験音楽ニューヨーク・スクールの作曲家だった(2002年没)、アール・ブラウンの監修により、60年代に18枚組のLPでリリースされていた現代音楽・実験音楽のアーカイヴ『A Life In Music』が、WergoレーベルからCDで装いも新たにリイシューが開始されました。初CD化の貴重な音源にたまげてしまいます。
CD3枚組を6セットリリースする予定のようで、2011年に完結するという息の長い企画のようですが、現在、ボリューム1が店頭に並んでいます。
中身はCD1が打楽器作品のコンサート録音で、ジョン・ケージ、ヘンリー・カウエル、ルー・ハリソン、アマデオ・ロルダン、ウィリアム・ラッセルの作品を収録。ウィリアム・ラッセルの「Three Cuban Pieces」とケージ、ハリソン共作の「Double Music」はケージによる指揮。アメリ実験音楽の系譜の特色でもある打楽器の重視がリアルタイムな録音で聴くことができます。今の耳からすると訥々としたビートの持続が、ビートの音色が、丹念に散種されていく様子が、とても禁欲的で理知的な雰囲気でもあります。
CD2は、シュトックハウゼンの「Zyklus」「Refrain」と、マウリチオ・カーゲルの「Transicion2」のカップリング。
CD3は、「ライブ・エレクトロニクスと即興」特集として、ローマのMEVの「Spacecraft」とロンドンのAMMによる即興演奏を収録。電気ノイズの歓喜の中で増殖していくようなMEVと、音楽の物語的な高揚に背を向けたAMMという、自分の浅はかな先入観を両者とも覆す演奏。とくに秘教的なAMMの演奏はヤバいです。数年前、オーストラリアの老舗ノイズバンド「Dead C」がリリースした「Future Artisits」というアルバムには「AMM of Punk Rock」という自らの立ち位置を表明するようなタイトルがありましたが、むしろMEVの演奏のほうが親近性がありそうな感じを受けました。
リイシューが完結する2011年まで、楽しみが続きそうです。


マナフォン

マナフォン

デヴィッド・シルヴィアンの新作「Manafon」には、AMMのキース・ロウも参加。それだけでなく、ジョン・ティルベリー、エヴァン・パーカー、クリスチャン・フェネス、大友良英、中村としまるなどのフリー・ミュージック勢が総力的に参加していた。故デレク・ベイリーとのデュオを収めて新境地に達した静謐な「Blemish」を引き継いでいる印象もあるけれど、それよりも、シルヴィアンのヴォーカルが、元スワンズ(現Angel of Light?)のマイケル・ジラであるかのように太く深く沈み込むように存在感を増しているようなのが気になりました。これは良いヘッドフォンで味わいたい作品。

ザ・ヴィジター

ザ・ヴィジター

ジム・オルークの新作「the visitor」も聴きました。現代の「チューブラーベルズ」と惹句されてもいる、40分の全編インストゥルメンタル一曲のみ収録の作品。全楽器をオルークが演奏。「バッド・タイミング」のミラーボールがついに椅子の上に落っこちちゃった感じのジャケにもグッときますが、中身もアコギを基調として、様々な音楽が出入りして、さほど難解な曲想とは感じられないし、ゆるやかで切断面を意識できないような音のパッチーワークを聴かされているような気がするのだけれど、背後にはしっかりと映像が流れているような音楽に仕上がっているのかと。気になって何度も聴いてしまいそう。全然関係無いけれど、個人的にタイトルからは、Robert Ashleyのセンテンスのモノローグ・リフレイン作品「She Was a Visitor」を想起してしまいます。

トゥー・サンセッツ

トゥー・サンセッツ

ずいぶんと久しぶりな気のするグラスゴーパステルズの新作は、日本のテニスコーツとドッキング。名前だけ並べても想像できるように、この組み合わせには何の違和感もありません。じわじわとポカポカする演奏は、この季節にぴったりかも。ジーザス&メーリーチェインのセカンド「Darklands」からの流石なセレクト「About You」に、じんわりときてしまいます。

ここまで、3枚ともP-Vineだった。

ソー・ロング・アイ・スクリームド

ソー・ロング・アイ・スクリームド

ホリー・ゴースト・テント・リヴァイヴァルの「So Long I Screamed」は、ちょっと前から店頭で気になっていたCDですが、ブルーグラスやカントリー調の曲をパンクロック的なスピード感で演奏する、と書いてしまうと、そんなバンド、過去にいくらでも存在していたじゃないかという突っ込みがきそうですが、このバンドはちょっと趣が違う。まっとうなルーツミュージックのバンドであるのも確かなんですが、これはだいぶ違うのかもしれないですが昔のCamper Van BeethovenやCrackerを彷彿とさせる捩じれた感覚がはっきりと匂うのですが、それが凝固せずに明るいスピード感の中で上手く解消できている感じです。ライブが観たいバンドです。

バルトーク:初期ピアノ作品集

バルトーク:初期ピアノ作品集

フォンテックからリリースされている高橋悠治が演奏するバルトークの初期ピアノ曲集。一般的なバルトークの印象を裏切る沈鬱なムードの中で、時折ヘンリー・カウエルのような(?)クラスターが鳴っているように聴こえました。これは、もっとよく聴かないといけない感じです…。


Irish Drinking Songs

Irish Drinking Songs

これも、何年も前から店頭で手にとっては逡巡しつつ棚に戻していたアイリッシュミュージックのコンピ。1000円になっていたので購入。まず、ジャケの怪しいおっさんの口髭についたビールの泡が素晴らしい。冒頭のダブリナーズの「The Wild Rover」は、10年くらい前にスタジオ録音のものを聴いていたけれど、ここでの「The Wild Rover」はライブ録音。ボーカルも力強くて音楽の力が漲っている。サビでは当然観衆も大合唱と手拍子で、えらい盛り上がり。いやがおうにもお酒が…。

パリ、愛の歌 第2楽章~永遠のシャンソン名曲集~

パリ、愛の歌 第2楽章~永遠のシャンソン名曲集~

まっすぐすぎる歌唱がとても新鮮なシャンソン歌手クレールさん。ジュリエット・グレコに「歌はこうじゃないと!」と絶賛されたのだとか。このメジャーでのセカンド「上を向いて歩こう」歌ってくれちゃっています。クレールさんは過去、ピエール・バルーのサラヴァにいたらしいが…このまっとうさからは想像が難しいのですが…。


Rainbow Takeaway

Rainbow Takeaway

この夏にお邪魔したIさんの新居で、起き抜けに聴いた「Yes We Have No Mananas」から始まったケヴィン・エアーズ・マイブーム。この「Rainbow Takeaway」も素晴らしいです。ゆったりしたレゲエっぽいリズムを色づけするアレンジに、力まないエアーズの抒情が極上です。アルバムリリースの1978年というと、プロデューサーのアンソニー・ムーアは同時に「This Heat」も手掛けていたことになる?…凄いひとである。

There to Here

There to Here

ハードコアパンクバンド「フガジ」のベーシストがこれまでにソロアルバムを2枚出していることを、最近知りました。これはファースト。
フガジのベースラインそのままに、ドラムが少々加わってあとは本人の歌だけの編成ですが、これが淡々として滋味深いという感じ。気負いや無理矢理や衒いといった空気がないのが貴重で、Dischordのプレイヤーもリスナーも、ちゃんと大人になっているんだ、ということかと穿ってみたり。マーク・サンドマンのモーフィンのあと、「低いロック」(Low Rock)は途絶えたかと思ってましたが、この人が、いる。