みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

ローランド・カークの『笛吹き男がやって来た』

今年のメインイベントである、本格的なシステム移行が始まった。
予想は十分していたことながら、着信数はセンターのキャパを遙かに超えていて、こちらとしては人員を増やすなど、できるかぎりの処置はしているのだけれど、平素をかなり下回る応答率になってしまった。
しかし、自分が着任した当時のパフォーマンスからいえば遥かにマシなのは確実で、ここまでのパフォーマンスが継続的に上がり調子だっただけに、これからは及ばないところで今後は本筋ではない方面への説明努力が増えそうだ。しかし、見通しは、ある。
無傷で済むなどとは誰も思ってはいないのだから。


溢れ出る涙(+1)

溢れ出る涙(+1)

カークの演奏、というか、割と楽曲自体はオーソドックスななかでのカークの「breathing 」(息遣い)を聴くことは実はそのたびに音楽を超えつつあるという特別な体験なのだ、と思う。
強面な印象からして、意外なほど繊細な音への配慮と、情念的かつ開放的(祝祭的)なカークのブローが確認できる、ということで、本作はどこを切ってもいい曲、いい演奏で、ある意味ソツがありませんが、なにはともあれ一曲目。「The Black and Crazy Blues」。第一声で癒される。
各種吹きものを同時に演奏してしまう盲目のカークの超人的な豪放さと、ひしゃげ切ったフレージングのどれもが、決して飛び道具的なものではなくて、楽曲の中でしっくりきている繊細な様子の終わりない対比については、いまさら何も言うことがありませんが、ここ数年個人的なカークへのフォーカスは、むしろこのライブ盤のタイトル・チューンに収斂してきている感じです。

Here Comes the Whistleman

Here Comes the Whistleman

ベースラインから始まって、本物の「口笛」でのテーマへ、そしてクァルテットでの演奏、最後は客席も交えての文字通り「ホイッスル」の大合唱(「どうぞ、お配りしたお手元の笛で合唱してください」とのMC)で締めくくる、カークの音楽をわかりやすすぎる程に表出し切った構成と、切れまくりの演奏。これはほとんどジャズマナーの「Smells Like Teen Spirit」でさえある、のかと。
俺の中の「ジャズ」って、まさにこの曲の、こういう演奏のことなのです。

カークとハーメルンの笛吹き男を重ね合わせるという妄想上贅沢もあり得ます。

ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)

ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)