みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

みみのまばたきの2007年を振り返ってみる。または怒って振り返らないでね(Don't Look Back in Anger)

nomrakenta2007-12-31


別に怒っていない(笑)(オアシスの曲名です)。
結論からいうと、僭越ながら、ブログというものは、一人で書かなければならない、しかし一人では書けない。そんなことを思い知らされもした、2007年でした。


部屋の片付けも、窓拭きも、ブックオフへお返しする本たちとの別れも、最期の買い物も済んだ済んだ。

近所を歩いていると冬の木枯らし風情が良くって、デジカメをパシパシ。ナンテンの赤がキレイで撮りまくってしまいました。



月並みにアルバムベスト10からいってみると(といっても10枚には絞れませんでしたが)、

  1. John Cage:『The Number Piece1-Four3,One5,Two6』(MODE,1995)*1
  2. John Cage:『Solo fot Voice 58: 18 Microtonal Ragas Ameria Cuni』(Other Minds,2007)
    Solo for Voice 58: 18 Microtonal Ragas

    Solo for Voice 58: 18 Microtonal Ragas

  3. The Dead C:『Future Artists』(BaDaBing,2007) *2
    Future Artists

    Future Artists

  4. 藤井貞和:『パンダ来るな』(水牛,2001)*3
  5. 鈴木昭男:『k7 box』(Alm,2007) *4
    K7box (カセットボックス)

    K7box (カセットボックス)

  6. ノンバンド:『NonBandin’ Live』、『NON baNd+5Tracks』(SS,SkyStation,2007
  7. Karlheinz Stockhausen,Paul Hillier-Theatre of Voices:『Stimmung』(harmonia mundi,2007)
    Stimmung (Hybr)

    Stimmung (Hybr)

  8. Lou Reed,Zeitkratzer:『Metal Machine Music』(asphodel,2007)
    Metal Machine Music (W/Dvd)

    Metal Machine Music (W/Dvd)

  9. Tal Wilkenfeld:『Transformation』(TAL,2007)
  10. Thurston Moore:『Trees outside the academy』(Ecstatic Piece!,2007)*5
    Trees Outside the Academy

    Trees Outside the Academy

  11. John Luther Adams:『red arc/blueveil』(Cold Blue,2007)*6
    Red Arc

    Red Arc

  12. 半野田拓&OORUTAICHI:『ベレー帽』(achion/okimi,2005)*7

こんな感じか。
できるだけ本年に出たものを、と思いはしたけれど、統一はやはり無理。
本年手に入れて、感銘を受けた→よく聴いたもの、というチョイスになりました。


年明けは、鈴木志郎康さんの映画をお借りして続けて観る事が出来た、その締めくくりがあって、『内面の話』など、意外な方向に考えがドライブすることがありました。
普通に映画を観る、というのとは全く質の異なる体験でした。撮る人の視線を感じつつ観る、というのは。

4月には、カート・ヴォネガットが死んでしまった。引用の多いエントリーをあげてしまったけれでも、読んでくれた方もいるみたい。そしてシュトックハウゼンも逝ってしまった。

5月は、京都で見た「さかな」のライブで長年聴きたかった「ロッキングチェアー」をやっと生で聴けた

光線

光線

藤枝静男『田紳有楽』に愉しんだ

『コヨーテ語り』という自分でもよくわからないエントリーを書いてしまい。今になってよくよく考えると、このあたりから藤井貞和の本を読み始めていたのだと腑に落ちる。

夏の終わりに、自分の夢の話を書きはじめてしまったときは、さすがに危ないと思った。書いてみると面白いものだった。美大惑星」、つづきが書けたらいいが。


11月に、大谷能生さんの評論集『貧しい音楽』が出版された。「ジョン・ケージは関係ない」という言葉の意味を考えてながら『音の夢をなぜみないか』というエントリーを書いた。そうしたら、大谷さんがリンクは張ってくださっていて、「みみのまばたき」では過去最高のページ訪問者数になった。すごい。

貧しい音楽

貧しい音楽

音楽を聴くのに、音楽を聴くだけでどうするのだ、ということ(ミュージシャンにならねば、ということではない)。
このあたりから、何か今までやってこなかったことをやってみたくなったのだと思う。生まれて初めて楽譜を取り寄せて、ケージの『Branches』をこそこそやってみようと思い立った。これは来年に持ち越し。ケージの書いた指示を原文から読んでいくところから始めていこうかと。

12月には、藤井貞和さんの詩の朗読をきく機会があって、そのことをつい昨日、長々とまとめてみた。

ライブは、とにかくこの一年、「ふちがみとふなと」を多く観た気がしていて、数えてみたら5回観てました。阿倍野の「ロック食堂」には「ふちふな」を観に2回通ってしまった。
それから決して忘れられないのは、新世界BRIDGEがなくなってしまったこと。2006年に知っていきなり終わり、だった。残念でならない。7月の最期のフェスティバル・ビヨンドイノンセンスが大盛り上がりだったので、とてつもない欠落感がやっぱり拭えない。
カール・ストーン、半野田拓、などのパフォーマンスが強い印象を残している。

読書のほうも今年からエントリーが増え始めた。

  1. 藤枝静男:『田紳有楽』
    田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)

    田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)

  2. 火野葦平:『河童曼荼羅
    糞尿譚・河童曼陀羅(抄) (講談社文芸文庫)

    糞尿譚・河童曼陀羅(抄) (講談社文芸文庫)

  3. 岡田充:『中国と台湾』基礎知識の欠如を補うため。
  4. 青井哲人:『彰化1906年-市区改正が都市を動かす』*8
  5. 原宏之:『言語態分析』
    言語態分析―コミュニケーション的思考の転換

    言語態分析―コミュニケーション的思考の転換

  6. 冷泉彰彦:『「関係の空気」「場の空気」』
  7. 内田樹:『私家版・ユダヤ人論』『寝ながら学べる構造主義
  8. モーリス・ブランショ:『書物の不在』『明かしえぬ共同体』
    明かしえぬ共同体 (ちくま学芸文庫)

    明かしえぬ共同体 (ちくま学芸文庫)

  9. 島田裕己:『公明党VS.創価学会』『中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて』
  10. 斉藤環:『メディアは存在しない』『生き延びるためのラカン
    生き延びるためのラカン (木星叢書)

    生き延びるためのラカン (木星叢書)

  11. ジル・ドゥルーズ:『フーコー*9
  12. 内田和成:『仮説思考』
  13. マルク・レビンソン:『コンテナ物語』
    コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

    コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

  14. ユクスキュル、クリサート:『生物から見た世界』
    生物から見た世界 (岩波文庫)

    生物から見た世界 (岩波文庫)

  15. 東浩紀桜坂洋:『キャラクターズ』(「新潮」10月号)
  16. 伊藤比呂美:『コヨーテ・ソング』『伊藤ふきげん製作所』
  17. 藤井貞和:『詩的分析』『源氏物語入門』『物語の方法』『物語の起源』『物語理論講義』『藤井貞和詩集』『続・藤井貞和詩集』『ピューリファイ!』『ピューリファイ、ピューリファイ!』『言葉と戦争』『湾岸戦争論』『人間のシンポジウム』『大切なものを収める家』昨日のエントリーに一年の感想を、まとめました(というか放ちました)。
    人間のシンポジウム

    人間のシンポジウム

あたりが収穫でした。
その他・積ん読状態はまだまだつづく。。

「みみのまばたき」としては時々エントリーが滞る部分もあったにせよ、けっこう充実した一年だったように思います。
さて来年は、まずケージの『木のこども〜Branches』の宅録バージョン(笑)にまず取り組んでいきたいです。はい。


それでは皆さん、よいお年を。

*1:John Cage:『The Number Piece1-Four3,One5,Two6』:ケージ最晩年の「ナンバーピース」をけっこうまとめて聴いた年でした。「タイムブラケット」は、考えようによっては、「4分33秒」よりも、ケージにとっての「自由」を徹底的に追求している手法なのかも。このCDに入っている『Four3』は、レインスティックの音にかすかにピアノと弦が絡む、究極の出来だと思いました。

*2:★The Dead C:『Future Artists』:オーストラリアのノイズ番長の気合の入った新作。「AMM of PunkRock」というそのまんまな曲名に気概を感じました(音もね)。

*3:藤井貞和:『パンダ来るな』:詩の朗読のCDがベストに入ってくるなど、昨年は考えられなかった。

*4:鈴木昭男:『k7 box』:心地よい。いいのかこんなに気持ち良くて、と思うくらい。

*5:Thurston Moore:『Trees outside the academy』:サーストンという人の資質が、これ以上ないくらい美味しく詰まっているソロだと思います。逆にソニックユースの新作が心配になってきた。今年はソニックユースは『デイドリームネイション』のデラックス盤も嬉しかったです。

*6:★John Luther Adams:『red arc/blueveil』:新作。この人は「北」を作曲する。

*7:★半野田拓&OORUTAICHI:『ベレー帽』:ビヨンドイノセンスでの個人的収穫だった若手天才フリー・ミュージック・パフォーマー2人による即興音楽集。こういう音楽の表われ方を受け付けられないような人間には、なりたくないと思いますです。

*8:青井哲人:『彰化1906年-市区改正が都市を動かす』:台湾の地方都市・彰化の日本統治時代から現在にいたる都市整備のうごめきを捉えた小冊子。建築家の方が、昔の地図から綿密な過程分析を行っていて、読んでいるとほんとうに都市がいきもののように自分の身体を整えていくような気がした。「超芸術トマソン」みたいなところも、隠し味。

*9:月曜社さんのサイト『ウラゲツ☆ブログ』によるとhttp://urag.exblog.jp/6626228/1月に『ドゥルーズガタリの現在』という国内の研究者によるD+G論文集が出るそうな。ウラゲツ☆ブログでは、まだまだドゥルーズ偏重な評価(ガタリを忌避するような)に疑問、というか若干の危惧とこれからの期待を寄せておられる。僕はガタリの読者としては、数年しか数えないし、ソーカル事件なんかを知って、やはりちょっと「引いて」しまったところがあったけれど、ガタリの「わからなさ」論理の乱反射せざる得ないところは何故かわかるような気がする。単に『カオスモーズ』あたりが「美しい」とかいって、『知の欺瞞』でのボコボコ具合を無視したいわけじゃなく(そういう整合性の無さはガタリにはやはり色濃くあるのであって)、やはりネグリのアイデアの源泉のしてのガタリというのが絶対にあるのだと思う。そのガタリは、例えばグローバリゼーションを予見して「資本主義の全体主義機械」として「資本主義の全体主義機械はファシズムとちがって、労働者の欲望のエネルギーをキャッチしながら、労働者を分割し特殊化し分子化しようというものです」(『分子革命』法政大学出版局p.41)と1974年の段階で軽く形容してしまったガタリの圧縮された思考だ。