みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

<棚面>の方面へ:『ブンブン堂のグレちゃん』を読む

nomrakenta2007-08-31

近場ネタのマンガが時々目に付いて、マンガ自体読むことが少なくっても、そういう作品ならこそばゆい思いをしたくてつい購ってしまいます。やはり地域愛が刺激されてもいるのでしょう。
小池田マヤの『バーバーハーバー』もそうだった。

個人的には梅田や天神橋を何箇所も廻るほどではないけれど、それでも一ヶ月に一回は無性に古本屋さんに入りたくなって、阪急河童横丁の古書のまちに彷徨いこむ。ここなら一箇所で済む。

今回は、大阪在住で「せどり」といわないまでも、古本屋巡りが好き人なら、鼻の脇がかゆくなるような本が出ていました。


ブンブン堂のグレちゃん―大阪古本屋バイト日記

ブンブン堂のグレちゃん―大阪古本屋バイト日記

大阪の古本屋で「天牛書店」など有名なところは全部出てます。巻末の古本屋MAPも便利。
見返しに印刷された古書店の本棚の写真(そんな古書店個別の個性を著者は「棚面(ほうめん)と名づけておられる」)のコラージュをみていると、今さらだけれど、本というものは一旦流通から外れて、あるべき文脈に再編成されたとき、より情報価を高くするのだと当たり前のことを思う。してみると大型書店の方が、本たちの自生的なネットワークからすれば異常な事態なのであり、すぐには利益に直結しないにせよそんな再文脈化作業にもっとも特化しているのが全国の古本屋さんであるわけだ(これはブック○フではできない)。
通常の書店は、情報の価値に対して受動的になるが、古書店に赴くときの個人は、自分の中に必ずしも明瞭でないにしても価値観と文脈化の欲求をすでに持っている。それを互いに持ち寄れる場が古本屋さんなのだと思う。
「近頃は文科系女子など、女性の古書好きも多いのよ」という言葉を受けての、「地味で不機嫌そうなおっさんでも、探していた本を見つけたときは乙女心」という返事が良い。生暖かく、良い。
著者のグレさんがバイトしていたというのは、これは自分にはどう考えても阪急古書のまちの「加藤京文堂」さんだとしか思えない。生田耕作が通っていたというような古書店といったら「加藤京文堂」さんしかないんじゃないか。
「加藤京文堂」さんの本の品揃えは、この漫画で描かれている通り、筋が通っていて、中井英夫とか澁澤龍彦種村季弘なんかが気になる人なら絶対気に入るでしょう。版画関係も充実していたように思う。
一冊一冊が丁寧にリューサン紙で包まれていて、ひとつひとつに書名やコンディションを手書きした帯が書棚に整然と並ぶ様が「文化」を感じさせてくれ「古書を買う」という感慨を倍増させてくれる。してみるとあの帯書をしておられた方がグレさんなのだろうか・・・。
80年代終わりに買い逃していたARペンクの画集を見つけたときはうれしかった。写真は、「加藤京文堂」さんで購った種村季弘版「パラノイア創造史」特濃バージョンといった感じの『愚者の機械学』。ニジンスキー、アドルフ・ヴェルフリ、ゾンネンシュターン・・・内容は書かなくともよさそうなもんです。はい。

『バーバーハーバー』は、北摂近辺の理容師さんの話で、地元ネタ満載(というか全てだった)。