ザ・フォール『魔女裁判でライブ』
春のせいか(?)初期ワイヤーに引き続きポストパンクなバンドがあらためて気になります。
買ったのは2004年にCastleからリイシューされたものです(このリンクはちょっと違う)。ザ・フォールを初めて知ったのは、たしか90年代に「クロスビート」かなんかでニック・ケイヴとシェーン・マクゴーワンの三人での対談の翻訳を読んで、その口の悪さにビビッときたときかと思いますが、その頃聴いたはずの『キュアリアスオレンジ』とかなんとかいうアルバムとか『マイネーションセイビング』なんたらいうアルバム(・・・全部タイトル違うかも)の記憶と、この1978年のデビューアルバムの音楽性には隔たりというものが全くない。初めて聴いた音源は、昔輸入盤屋のパンクコーナーに必ずあったサージェントペパーのジャケットをパロッたジャケットのパンクのオムニバスに収録されてた『Bingo Master's Break-Out!』だった(ワイヤーは『1,2、XU』、バズコックスは『Boredom』が収録されていて、この3曲とデッド・ケネディーズの『カンボジアの休日』だけが異常に好きでしたっけ)。結構ブリティッシュバンドらしい皮肉っぽいマナーだなあという根拠のない印象があった。
その音楽性というか態度を一言でいえば「間違えてマンチェスターに転生してしまって常に周囲の無教養に腹を立てている気の短そうなCAN」(長い)だが、3曲目の『Rebelious Jukebox』を聴けば、その後20年近くのバンドの音楽が、実は最初から全て含有されていたかのよーな錯覚すら。
あらかじめ変化する遺伝子が省かれているかのようなバンドがザ・フォールなのか。
「ポストパンク」とつい書いてしまうわけですが、もちろんパンクロックの「後」に出てきたわけじゃない、ことは言うまでもない。
マーク・E・スミスの場合は、むしろガレージパンクとCANとキャプテン・ビーフハートの後の意味の「ポスト」なんである、とでも書いておかんと後生が悪い。
それにしても折に触れてマーク・E・スミスの歌というか悪態を切実に聴きたくなるのは一体なぜなのか?今もって大いなる疑問ではある。
「殴るぞこのガキ」という取り付くシマの気配すら一切感じさせない態度が、逆にすがすがしいのか。
マーク・E・スミスのダミゴエは、ほかのどんなダミゴエ歌手とも違って、オノレに耽溺してしまうこといっさいなく別の方向を向いているように思える。
多分、音楽することへの距離感が最初から微動だにしていないからだろうと思うが、ともかくこんなダミゴエに伴奏つけれるバンドがいるとしたら、それはザ・フォールしかおるまい。
豪華2Disc。あの『Bingo Master's Break-Out!』もボーナストラックとしてしっかり収録がうれしい。
- アーティスト: Fall
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