みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

雪がふるふる:SECLUSION『YUKIGAFURU』

nomrakenta2007-01-07


今日は眠気がなくなるまで寝てやると思ったら10時に起きてしまいました。
窓の外をみると、雪が降っている。この冬箕面では初雪ではないか。
隣家の屋根瓦が真っ白に。
雪が降る時間というのは、いつもとは確実に別の時間の流れになっているような気がします。雪が積もってしまったら色んな生活音がミュートされるので当然な気もしますが、積もる前の時間もそうです。
雪の情景に幻想性を感じるのはきっと万国共通なのでしょう。
掌の上で融けてしまう結晶が、一体どの時点で一面銀世界になるのかいつも不思議でなりません。などとのんきな事をいうと雪国の方に怒られそうではありますが、例えばこういう感覚をまざまざと再生してくれる音楽はというと、ありそうでなかなかないような気がしていました。最近この作品に出会うまでは。
SECLUSION『YUKIGAFURU』SOME FINE LEGACY SFL-001
SECLUISONは、Jack or Jive http://www.jackorjive.com/ というユニットのCHAKOとmakoto hattori(光文社新書アウトサイダー・アート』の著者・服部正氏の実兄とのこと)が、1992年に、ドイツを訪問した際、クリストフ・ヒーマン(Christoph Heemann:H.N.A.Sのメンバー、現Mirrorドローン系音楽の重鎮)と出会い結成されたバンドで、帰国直前に録音したセッションがこの「雪が降る」となったようです。トータル30分で「YUKIGAFURU」1〜4の全4パートのドローン即興演奏をまとめたものになっています。

アウトサイダー・アート (光文社新書)

アウトサイダー・アート (光文社新書)

「ドローン」というと、無調の通奏低音が延々と続く冷酷無比な音楽、という印象をお持ちの方がもしかしたら多いのかかもしれません(確かにそういうのものもありますが、決して冷酷無比ではありません)。しかしこの「雪が降る」の印象は、タイトルを全く裏切らず、絵画的といってもよさそうな感性で雪降る夜の幻想的な情景を描いたサウンドトラックとなっていまして、手法的にはまぎれもなくドローンものなんですが、ステロタイプの硬直した印象からは、最も遠いところにあります。
電子音らしきドローンが、聴く者の頭の中に情景を描くための領野を、じんわりと押し広げていき、次にキラキラとした音が、雪の結晶のようにちらほらと聴こえてくると、まさしく雪の降り始めから、しんしんと降り積もっていく夜の情景を、ゆったりとしながら早送りで観ているような気分になります。
Chakoさんの声が絡んでくるとこの幻想的な情景も総仕上げとなり、別の時間が別の空間にチルアウトしていくようです。
「まさしく、これだ」と思いました。
たとえば、ブライアン・イーノの「Music For Airport」のあの感じをそのまま雪国に移し変えることができたような、音響アンビエントのじんわりとくる良作です。