みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

「ここはどこだ?サッカー場か?:フェデリコ・フェリーニ『オーケストラ・リハーサル』

わたしは審判か?音が強すぎる、去勢するぞ!」
いきなりすいません。今のは、映画の中で、独り真面目に音楽を仕上げようとする指揮者があまりにバラバラなオーケストラに向けてついにぶちっとキレた時の台詞です。
フェリーニニーノ・ロータと組んで仕上げた短編。やっとこさ観ました。
のだめカンタービレ」を最近まとめ読みしたためか、映画にすんなり入り込めました。
導入部こそ、テレビの取材の目を通した形のオーケストラの群集劇としていい感じの出だし、と思ったものの、当然フェリーニがそれで終わるわけもなく、指揮者の圧制にオーケストラは「指揮者なんていらねえ!指揮するなら逆立ちしろ!メトロノームで十分だ!」と、密閉されたリハーサル場をカーニバル的な混沌状態に叩き込んでしまう。
本作は1979年作。当時のイタリアの世相へのアイロニーもあるんだろうか。
この年、マイケル・ハートと『帝国』を書いたトニ・ネグリは、「赤い旅団」による元イタリア首相モロの誘拐暗殺事件モロ殺害容疑、国家に対する武装蜂起容疑、国家転覆罪容疑で起訴され再逮捕されています。
それはさておき、映画自体はかなり無理な急展開なのに演出は超細かいのですんごい密度。フェリーニ映画特有の目が回るようなカーニバル的プロットも、尺がコンパクトなので冗長に感じることはないでしょう。
最後に練習場の壁を突き崩す巨大な謎の鉄球は、「甘い生活」での怪魚のセルフパロディの如く「おまえらえ〜かげんにせ〜よ〜」と突っ込みをいれているかのよう。