みみのまばたき

2006-2013 箕面の音楽・文学好きの記録です。

さかな『Sunday Cloths』

「さかな」は、その変化と変化しない部分が、リリースのたびに揺れつづけて魅力を増していく数少ないバンド。うれしい新作のリリースです。
期待を下回らない安定した仕上がりはいつもどおりですが、今回はそれプラス、予想をちょっと裏切ってくれるような部分があるように思えます。それもちょっと見にはよくわからないような形で。
たとえばそれこそ「水」まで遡れるようなアブストラクトで不安定な感覚なんですが、10数年のキャリアで丁寧にコーティングされてはいるけれど復活してきているような気がします。
ジャケットもかわいくて一見、センスの良い初心者向けに作られているような素振りですが、そうそう簡単には割り切れない感覚もあるのかと。
特に本作、最初の数曲がとてもボサノバちっくで、「その気になれば」という歌詞が頻出するように、保留と遅延ムードの日曜の午前中向けですが、「Havana Moon」を過ぎるあたりから、ちょっと変わった感じの曲ももぐりこみはじめて、個人的にはまるでセカンド「水」の一筆書きのような世界とも共振しているような、そんな錯覚を味わえました。
前作以上に音のない隙間に「さかな」を感じれるような、かなり昔からの「さかな」ファンにもなつかしい感覚かもしれない。
基本はギターとヴォーカルのアコースティックライブの感覚。数年前に京都のカフェで観た「ロコモーション」時のミニライブと同じ感じ、空気を感じれてうれしいです。
数曲エレピとスティールパンとペーパードラムが入っていて、特にバッファロードーター」の大野由美子さんによるスティールパンは新鮮な音色なのに完璧に「さかな」の音楽に溶け込んでいる。
ポコペンさんの歌はいつも少年のよう、とか心地よいイメージだけで済まされることが多いような気がしますが、そのじつ非常に不安定なものを基本的に含んでいて、単なる癒しだけにとどまらないある種軽い緊張も与えるものだと思います。それが物語のような歌詞とやりすぎないギターアンサンブルに中和されて独特な「さかな」のアトモスフィアが生まれてくるんだと最近は思っています。
僕だけですかね。
歌唱方法も本作と「ロコモーション」あるいは「ウェルカム」なんかを比べると相当変わってきているというかレンジが広くなってきているように感じます。



もう一つ、待ちに待ってたソニック・ユースの新作
日本盤は6月7日発売ですが、こちらで全曲試聴できるようです。
ジム・オルークは抜けちゃいましたが、楽しみ楽しみ。
Rather Ripped