ミシェル・ウエルベック『素粒子』
1998年に出版されたフランス文学の「衝撃作」。つい最近、ちくま文庫から出たものを読了。
この作品、実はSFなんである。なんでSFなのかはどにかく読んでみて頂ければと思うんですが、ネット上に結構解説はあるので、大体の見当はつけていただけるかもしれない。この作品のミソは、主人公である異父兄弟ミシェルとブリュノの親に見離された生い立ちやブリュノの、時代の刻印を受けた(あるいは刻印が時代するのか)荒涼とした性遍歴が延々と続き(その記述自体も密度があっておもしろいんですが)、その末のそれぞれの恋人との悲痛な別れがあり、そういった物語として終わるのかな?と思っていたら、驚愕のエピローグで一気に物語は別の次元(まさしく別の次元)に以降し、二人の破壊され尽くした人生も、何か意味のあったものとして、その高みから一気に鎮魂されていく点にあると思います。
もともと、ドゥルーズやフーコー、デリダなど68年世代がばっさりと断罪されているという評価で興味をもって手に取ったんですが、それはこの作品にとってはあまりに小さい要素だった。*168年世代の思想を無効なものとして捉えるのなら、この作品の結末のような立場が必要になる、ということを言いたいのだろうか。
なんだか、コリン・ウィルソンの「賢者の石」を思い出しました。なんと最近映画化されたようだが、ラストは変えられているらしい。
本作の続編にあたるという最新作も早く読んでみたい。
*画像は単行本のもの